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【赤裸々に語る】『全てを彼から学んだ』元検事正からの性加害を訴える女性検事が激白「正直言って憤り」検察庁の対応に「職員を守る気がない」(単独インタビュー全文掲載=前編=)

2025年1月4日 10:00
【赤裸々に語る】『全てを彼から学んだ』元検事正からの性加害を訴える女性検事が激白「正直言って憤り」検察庁の対応に「職員を守る気がない」(単独インタビュー全文掲載=前編=)
インタビュー取材に応じる女性検事

 大阪地検の元検事正が、酒に酔った部下の女性検事に性的暴行を加えた罪に問われている裁判。女性検事が読売テレビの単独インタビュー取材に応じました。“検事のイロハ”を教えてくれたという元検事正と対峙する心境、謝罪から一転して無罪主張に転じた被告、検察庁に対する率直な思い…約2時間にわたるインタビューで女性検事が語った言葉を、2回にわたって、全文で掲載します。(取材・報告:丸井雄生・田淵菊子)

■“関西検察のエース”主張が二転三転…謝罪から一転「同意があると思っていた」

 大阪地検のトップを務め、法曹界で“関西検察のエース”とも呼ばれた北川健太郎被告(65)は、検事正在任中だった2018年9月、大阪市内にある官舎で、酒に酔って抵抗が難しい状態だった女性検事に対して性的暴行を加えた罪に問われ、2024年10月の初公判で「公訴事実を認め、争うことはしない」として謝罪しました。

 女性検事は初公判後、大阪市内で記者会見を開き、事件当日、北川被告から性行為に及んでいる間に、「これでお前も俺の女だ」と言われたことや、その後、「大阪地検は組織として立ち行かない。私の命に代えてやめてほしい」などと“口封じ”ともとれる言動があったことを明かしました。

 さらに、女性検事は、事件関係者である女性副検事が被告側に捜査情報を漏洩し、検察庁職員やOBに対して、「事件当時、酩酊状態ではなかったので行為に同意があったと思う。PTSDの症状も詐病ではないか。金目当ての虚偽告訴ではないか」などと誹謗中傷し、虚偽の内容を故意に吹聴したとして、刑事告訴・告発をしています。

 第2回公判は12月の予定でしたが、北川被告の弁護人が、「同意があったと思っていた」などとして、一転無罪を主張する方針を明らかにしました。このため、次回の裁判期日は未定のままです。

 女性検事は記者会見で、「絶句して泣き崩れた。今の率直な気持ちを申し上げると、被害申告なんてしなければよかった」と涙を流し、「検察のトップにいた元検事正が主張を二転三転させて被害者を翻弄し、世にまん延する『同意があったと思っていた』などという姑息な主張をすることが、私だけでなく、今まさに性犯罪被害で苦しんでいる方々をどれほどの恐怖や絶望に陥れ、被害申告をすることを恐れさせているか」と訴えていました。

■女性検事が語る「私だけでなく本当にたくさんの方が苦しんでる」「性犯罪は人に言えない被害」

Q(記者) 報道機関の取材に応じ声を上げる、発信しようというエネルギーはどういったお気持ちから?

A(女性検事) 性犯罪被害というのは、人に言えない被害ですので、私だけでなく本当にたくさん苦しんでいる方々がいらっしゃると思う。誰にも言えずに、一人で傷を抱えて苦しみ続けている人がたくさんいることを知っているので、私の話をこうやって発信させていただくことで、「苦しんでいるのは自分だけじゃない」「あなたは一人じゃない」ということをお伝えしたいという気持ちがまずあります。

 そしてこの度、私の事件で北川被告が「同意があったと思っていた」というような主張をして否認に転じていますけれども、こういう主張というのは、こういう性犯罪事件において加害者がよく使う主張ですが、こういう主張自体がまかり通ってはならないと思っていて、そういう意味では性犯罪の法律の解釈などを正しく皆さんに知っていただくことによって、性犯罪を撲滅していきたいという思いもあるし、正しい理解をしてもらうことによって性犯罪をしないというふうになってもらえたらなという、一被害者の気持ちからでもあります。

 最後は、自分が検察職員という立場でもありますので、捜査や裁判は検察庁に委ねなければならないところが大きいですから、検察庁に対して適正な捜査や裁判をしてほしい、一緒に戦ってほしいという思いがありますし、また職員として今、検察庁内で被害が起きていますから、それで私は職場に戻れないわけで、職場に戻るための安全な職場環境を整えてほしいということを訴えたいためにこのように発信をしております。

■被害を公にするまで5年あまり…検察庁から当初「他には言うな」

Q 10月の初公判の後、初めて会見で発信し始じめてから、今感じていることや、心境に変化はある?

A 私は、この被害を公にするまでに5年あまりかかっています。被害を知っているのは、ごくわずかな方にしか打ち明けていませんでしたし、被害申告した後もごくわずかな人にしか打ち明けていません。なぜかというと、自分が被害を受けたことを知られたくないという気持ちから話していなかったですし、また、大事な捜査情報でもあるので捜査に支障があってはいけないからということで、検察庁から「他に言うな」というふうに言われていたのもあったので、打ち明けられずにずっときていることもありました。

 起訴していただいて復帰して、女性副検事が、私が被害者だということを吹聴したり、『虚偽告訴』だというふうに言いふらしたりしているという二次被害があったことを知って、私が知られたくなかった私が性被害を受けた被害者だということまで広く知られてしまって、すごくショックを受けているし、虚偽告訴だということも言われて、すごく傷ついています。

 そういうことを初公判の会見後にお伝えしたことで、本当にたくさんの人たちが面識のない私に対して、「私たちが共に戦う、共にいます、最後まであなたと一緒に戦っていきます」というふうに、たくさんメッセージを寄せてくださって、それがいろいろ混ぜると300件以上になっていまして、皆さんが他人事ではなく自分事のようにこの件を受け止めて、性犯罪をなくさなければならないという思いに駆られてメッセージを投げてくれているということに、すごくありがたいし、励まされています。

Q たくさん同じ悩みを抱えてきた人や同じように苦しんでいる人が、これだけたくさんいるという表れでもある?

A 中には性犯罪被害を受けた当事者の方もいらっしゃいましたし、メッセージを寄せてくれた方の中にはそういう当事者の方もいらっしゃって、声を上げられなくて苦しんできたという方もいれば、声を上げても理解不足な司法関係者によって適切に処罰してもらえず今も苦しんでいるという方もいらっしゃったし、その被害者を支援している弁護士さんや心理士さんや被害者団体の方からも多数メッセージを寄せられていて、「このままでは被害者が傷つけられて終わってしまうということに危機感を抱いている」と。

 ましてや法律を熟知している検事正であった北川被告がこのような不合理な弁解をして無実を主張するような事態がまかり通っては、世の中の性犯罪被害者は泣き寝入りするしかなくなるという危機感を抱いているので、正しく裁判してもらえるように正しい知識を広めていこうというふうに私は思っているが、それに共感してくださる方がたくさんいて、だから皆さんが本当に危機感を持って一緒に戦ってくださっていると思います。

■職権乱用の指摘「全くのデタラメ、非常に卑劣で同じ法曹として許せない気持ち」

Q 直近では、北川被告の弁護人が女性検事の職権乱用の疑いなどを指摘・主張している。それに対して、主張しているということを初めて聞いたときどう思われたか。

A 弁護人が主張しているのは、私が検察官としての職権を乱用して本来であれば入手できないような資料を入手して、それを私個人の被害を立証するのに使おうとしたというような誹謗中傷をしてきたわけですが、事実としては全くの事実無根で、確かに物理的にその資料を私が検事として入手することはできますが、それをしてしまったらまさに職権乱用だと思っていましたので、検察庁の裁判担当の方に対して、私が自分で手に入れることは不適切だから検察庁の方で手に入れてもらって、それを私=被害者に対して証拠として開示してくださいというふうにお願いをして、検察庁の方が入手してくださって、それを私に開示してくれたという流れになりますので、職権乱用という事実は全くのデタラメです。

 また、個人情報が弁護人に見える状態であったことが秘密漏洩の罪にあたるのではないかということを北川被告の弁護人が言っていますが、それは検察庁が弁護人にその資料を使って私が作った書類を見せるときに、個人情報を秘匿しなければいけないところはマスキングしなければいけないのですが、検察庁がそれをマスキングしなくてもいいと判断したのか、マスキングをすべきところをしなかったミスなのかは分からないですが、検察庁がマスキングをすべきところをマスキングせずに見せてしまったという結果であるのであれば、検察の不手際に過ぎなくて、私が個人情報を漏洩したのでは全くないので。

 そういう意味では、本当に事実無根の誹謗中傷をして情報操作、私が検事としても個人としても信頼できない人間なんだよということを印象付けて、個人攻撃するような手口だと思いましたので、まず北川被告と弁護人に対しては、非常に卑劣で同じ法曹として許せない気持ちになりましたし、どこまで被害者である私を傷つけて、追い込んで、犯罪者であるという疑いをかけてきたわけですから、何の調査もせずに、本当に許せないなと思いました。

■検察庁の対応に「正直言って非常に憤り」「職員を守ろうという気がないのか」

A 検察庁に対しては、そういう事実関係を速やかに広報してもらったら、私にかけられた疑いというのはすぐ晴れるはずなのに、それすらも広報してくれない検察庁に対しても正直言って非常に憤りを感じました。

 弁護人が職権乱用のことをマスコミの方に言ったのが、金曜日(12月13日)だったと思うのですが、その日の時点でその一報が私どものところに入って、全く事実が違うから検察庁に説明をしてほしいとすぐに言ったのですが、検察庁はその時点で説明をせず、私どもが自分で火消しをしなければいけない、違いますよと言わなければいけない状態になった。

 翌週の月曜日(12月16日)に正式に検察庁に対して、事実関係を速やかに弁護人とマスコミの方々に説明をしてくださいと、私にかけられた疑いを晴らしてくださいと言ったのですが、検察庁としては訴訟外の出来事なので積極的にこちらからいちいちコメントをすることではない、検察庁側から積極的にすることではないとおっしゃって、説明を積極的にはしてくださらなかった。

 しかし、訴訟外の出来事ではなくて裁判の証拠について、言ったら因縁をつけられていることですし、その裁判の被害者であり検察庁の職員が犯罪者の疑いをかけられているのに、なぜそれはそうじゃないと説明をしてくれないのか、そういう検察庁の対応に、非常に不信感とショックをずっと抱いてきているわけで、今回はそれのまた一つですが、本当に検察庁って被害者であり職員を守ろうという気がないのかということにすごく残念な気持ちです。

 「現時点では職権乱用は把握していない」(検察庁の報道機関に対する回答)という留保も、「現時点で」と付けられると調べていったら私が犯罪しているように聞こえるかもしれないワードなので、そこも本当にひどいなと思って、本当に残念です。ちゃんと説明してほしいです、これからも。

■『組織のため』と繰り返す被告…女性検事「自己保身の一言に尽きる」

Q 北川被告は、逮捕当時は「同意があったと思った」と供述したが、無罪主張の方針に転換した。その度にあげられる理由が、「組織」という言葉で、被告側のこうした態度、姿勢については、どのように感じているか。

A 自己保身の一言に尽きると思います。被害直後は、彼は懇親会以降のことは何も覚えていないというふうに話していて、何も覚えていないけれども、私が、私をレイプしたでしょというふうに追及したら謝罪をして「申し訳なかった。警察に突き出してほしい」ということまで述べていたわけです。

 当初は、私がその以前から誰にも知られたくないから警察に届け出たりすることができないということを彼に伝えていたので、北川被告にしてみたら「警察に突き出してください」と言ったとしても私が突き出せないことを知っているから、パフォーマンスとして警察に突き出してくださいと言ったのか、ちょっと分からないですが、いまとなってはその時には同意があったと思っていたとかいう弁解すらしていなかったわけです。

 本当に同意があったと思っていたのであれば、たぶんその一番最初の段階で、私が追及した段階で、「いや同意があると思っていたんだよ。だって君こういうふうなことを言っていたじゃないか。だからこれは犯罪じゃないよ」とたぶん言うと思う。でも直後には何も言わずに「警察に届けてください」と言ったわけです。

 それから1年後に、私が許せない気持ちを募らせて上級庁に訴えると言ったら、そこで初めて同意があったと思っていたという主張を、そこで初めてしたのですが、同意があったと思っていたという根拠についてはほとんど何も合理的な根拠は述べていなかった。その後、北川被告は辞職をして、そこから好き放題いろんなことをして、検察庁にも影響力を及ぼし続けて、私はそれが許せなくて被害申告に至ったのですが、彼は辞めるときに「検察組織を守るために口外するな」というふうに私を脅迫しました。それ自体も検察組織を守るためではなくて、自己保身のために口止めをしたということは今なら思いますが、当時は検察組織を守るためにというのは、私自身も私にとって大事な検察組織を守らなければいけないと思って被害申告できませんでした。

■「実刑判決が見えてきて否認に転じたのでは」「検察組織を守る気なんて1ミリもない」

A 仮に、北川被告が本当に検察組織を守るために、これを公にしたらいけないと思っていたのであれば、自分が捜査の対象になったことが分かった去年の段階、逮捕されたりした段階で公になって、検察組織に迷惑がかかったのだから、そこでちゃんと認めればいいと思うのですが、結局逮捕されたときに認めもしなかった、同意があったと思っていたというふうに主張をしていました。しかし、何の根拠も言わなかった。彼は何も覚えていないからと言って、だから同意があったと思っていたと言っているだけで、根拠は示せなかった。その後段々、証拠関係が分かっていくにつれ、こういう主張をしてもどうせ通らないのだとおそらく思ったのだろうと思うのですが、罪を認める姿勢に転じた。

 ただ、彼は誤算があって、認めれば私が多少は許す気持ちになって彼の言う損害賠償の申し入れを受けて、賠償金を払えたら執行猶予判決があり得る可能性があると期待したのではないでしょうか。また初公判で認めれば保釈してもらえると、裁判所が保釈許可をしてくれるのではないかと目論んでいたのだと思います。ですが、私は損害賠償は刑事裁判が終わるまでは受け取らないと表明していましたし、そこで執行猶予判決の芽は絶たれた。初公判後に保釈請求したけれども、良識ある裁判所が保釈を却下した。そうすると外に出ることもできないし、実刑判決が見えてきて、そこで彼は本当に少しでも自分が助かる道として再度否認に転じるという手を使ったのではないかと思います。

 また、彼の親しい女性副検事が、私の事件に関して捜査妨害をしたりしていた疑いがあることや名誉毀損しているような疑いがあることについて、私が告訴・告発しているので、彼女の処罰をさせないために北川被告が自分が無罪だという主張をすることで、その副検事をかばいたいという気持ちもあったというふうに思いますから、北川被告の言う「検察組織を守るため」というのは本当にそんなわけないだろうということで、検察組織を守るのだったら、罪を認めて、これ以上組織の批判を受けないようにすべきだと思うし、誹謗中傷を被害者がされているわけですから、そういうことをしないように女性副検事に言うべきだと思うし、どこが検察組織を守っているのだというふうに思いますし、否認に転じたら検察組織の捜査を批判するということになりますから、検察組織を守る気なんて1ミリもないのだと思います。

Q (北川被告は)言っている内容と行動が合わないと思われるということ?

A そうですね。検察組織のことを本当に考えているのだったら、まずこんな事件を起こさないと思います、そもそも。自分は800人の職員を抱える検察のトップで、最も検察官として法律を守って、人を傷つけない行動を示さなければならない人であったはずです。その人が泥酔した部下に対してレイプしているわけで、検察組織を守る気があるのだったら、そもそもそういう犯罪を行わないはずだから、彼に検察組織を守るというような言葉を発する資格はないと思っています。

■「検事の振る舞いや捜査、全て被告から初めて学んだ」「真面目で誠実な上司」のはずが…

Q 北川被告は事件前、女性検事から見てどのような人物であり、どのような上司、検事だった?

A 被害を受けるまでは、彼に畏敬の念を持っていましたので、私が検事になって、本当に初めて指導を受けた直属の上司だったので、検事としてどう振る舞うべきかとか、どういう捜査をすべきなのかとか被害者にどう寄り添うのかとか、そういうことを全て彼から初めて学びました。

 彼は非常に頭の切れる方で、彼の上司も北川被告に対して、すごく一目置いていましたし、部下はとにかく尊敬の念を抱いていて、とにかく優秀な方だと思っていました。私もそうですが、みんなそうだったと思います。指導自体はとても厳しくて、強い口調で指導する場面もよくありましたし、いま思えば、それはパワハラのワードだろうなと思うようなことも私自身言われたし、同僚も言われていましたし、とにかく厳しい方ではありました。ただ、指導の内容、言ってる内容自体はおっしゃる通りだと思ったので、その通りだなと思って、自分の力不足を反省しようと思って当時はやっていました。まだ1年目とかだったので。

 人柄としては、仕事を離れるとすごくフランクな愛嬌のある方で、末端の職員に対しても顔文字みたいなものをつけてメールを送ってきたりとか、職務上のメールでも顔文字とかをつけて、上司としてはありえないようなフレンドリーなメールを送ってきたりする人だったので。そういうフレンドリーな性格だからみんなからも慕われていました。あとは倫理面でも厳しくて、例えば職場内でセクハラや男女関係になるなどした件があったとして、それに対してすごく厳しいことを言っていましたし、ありえないと言って、許されないと言っていたので、私はそういう意味でもすごく真面目な誠実な上司だと信じていました。

 まさかまさかこんな人だと思っていなかったので。最高検の検事総長から数えて上位、大阪地検の検事正というのはすごく上位の立場にある人だから、本当に規範を示さなきゃいけない人であったはずなので、事件を受けるまではそういう印象でした。

 私自身も1年目はそうやって直属でお仕えしていたので、交流も多かったですが、それ以降は直属で仕えることもなかったし、職場も離れたりしていたので、段々疎遠になっていって、事件の時なんかはメールでやりとりをすることもあまりなかったし、お酒を飲んだり食事することも、誰か検事と一緒に行くのでも5、6回行ったぐらいで、私にとってみたら、どんどんさらに尊敬する上司がもっと増えていくわけなので、結構疎遠になっていて、恩師であり検察庁の親みたいな存在ではありましたが。それを彼も、そう私が思っていることも知っていましたから、恩師として尊敬されているということを彼自身も分かっていますから、だから男女関係になるはずがないということも彼は分かっていたはずです。

■尊敬していた元検事正と対峙「性犯罪をしない世の中にしたい」

Q そういった人物と対峙することに関して、改めて今どのように感じる?

A 被害を受けた当初は、そんな人から被害を受けてしまって、自分自身もどうしたらいいのか分からなくなって混乱してしまったので、また自分の中では尊敬できる上司像がずっと残っていたので、彼を辞めさせてはいけないのではないか、それは検察にとって損失なのではないかということまで考えてしまった。こんなにひどい被害を受けてるのに。

 だけど、段々時間がたつにつれ、彼の不誠実で、被害者の気持ちを一切、一顧だにしないような被害感情を逆撫でするような言動がずっと続きましたので、これは私が今まで思っていた人格者で尊敬できる検事の北川被告ではもうないのだと、もう全く別の人間なのだというふうに段々思うようになっていって、単なる犯罪者ではなく、法律などをまず守って率先して被害者を助けていかなければならない検事がこのような卑劣な行為をした犯罪者であり、許せないという気持ち。でも自分は処罰できなかったから、当初はすごくそこが悔しいというか、被害申告を早くしなかったことにすごく後悔をするようになっていっていました。

 いま彼と対峙していますが、今はもうきちんと彼を処罰することが、私だけの事件の解決ではなく、性犯罪が法改正されてもなお連日報道されていますし、性犯罪が起きていますとか、同意があったと思っていましたと加害者が言っていますとか、現状が全く変わってないような気持ちでいるので、彼にきちんと処罰を受けさせて、性犯罪なんてことをしたらこうなるよということを皆さんに知ってもらって、性犯罪をしない世の中にしたいという、そこに尽力したいと思います。

 検事として仕事ができないので、今は。具体的に困っていらっしゃる方の力になれないから、こういう発信によって私ができることをしていきたいなと思っていて、被害者としてやってることなので、だから検事で被害を受けた人だから言えることとして発信を続けることが苦しんでいる人の何か力になれたらという気持ちです。話すのはすごくしんどいし、つらいけれど、なんとか続けていけたらと思っています。
(つづく)

※後編では、女性検事が赤裸々に語った「検察庁内での二次被害」と「支えになっている家族の存在」、「性被害に苦しむ被害者への思い」をお伝えします。記事の配信は1月6日(月)午前8時の予定です。

最終更新日:2025年1月4日 10:00