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前人未踏の超大技挑戦 フィギュア羽生結弦 カメラマンが"神写真"解説 フリー「天と地と」

2022年1月27日 12:00
前人未踏の超大技挑戦 フィギュア羽生結弦 カメラマンが"神写真"解説 フリー「天と地と」
撮影:矢口亨(報知新聞社)

北京五輪で注目のフィギュアスケート。カメラマンの視点で見所を紹介するシリーズ。第2弾の今回は、男子シングル94年ぶりとなるオリンピック三連覇を目指す羽生結弦選手が、北京で挑むフリープログラム「天と地と」。スケートファンから"神カメラマン"とも呼ばれるスポーツ報知の矢口亨さんに聞きました。

■4回転アクセル初挑戦 一瞬の"笑顔"

こちらは、矢口さんが2021年12月、全日本選手権で撮影した1枚。

羽生結弦選手がフリーで演技冒頭に4回転アクセル(4回転半ジャンプ)に初めて挑戦した直後の写真です。

矢口さんが注目したのは、羽生選手の"表情"。

「嬉しそうだなって思いました。これまで羽生選手の演技中に、安心したような、嬉しそうな笑顔は見たことがありません。羽生選手の人生で挑戦が持つ意味が大きいんだなと改めて感じました」

表彰式で見るような笑顔だったと、矢口さんは振り返りました。

羽生選手にとって4回転アクセルは幼い頃からの夢。これまでに誰も公式戦で成功したことのない、前人未踏の超大技です。羽生選手は2018年に平昌五輪で連覇した後、4回転アクセルへの挑戦を明言しましたが、その壁は想像以上に高かったといいます。他の4回転ジャンプより半回転多いため体への負担も大きく、ケガもありました。その大技に、遂に試合で挑戦出来る段階までこぎつけたのです。全日本での初めての4回転アクセルへの挑戦は、回転は足りなかったものの、着氷しました。

今回、矢口さんはちょうど4回転アクセルを一番近くで撮影出来る場所にいたといいます。

「4回転アクセルと、着氷後の表情を撮りたいと思っていました。それが撮れて良かったです」

"笑顔"に、羽生選手自身の"素"が出ていたと感じた矢口さん。それは、とても珍しいことだったとか。

「羽生選手のすごさは、プログラムに集中して役になりきるところだと思います。僕が撮影した中で、初めて上杉謙信ではなく、"羽生結弦"が滑っている感じがしました」

羽生選手のフリー「天と地と」は、戦国武将・上杉謙信がテーマ。これまでに撮影した中で、羽生選手が"素"の表情を見せたのはこの一瞬だけだったといいます。

こちらは、演技後半、4回転トーループからの3連続ジャンプを成功させた後の表情。

「この時はもう、上杉謙信に戻っていますよね」

矢口さんは、全日本の「天と地と」には、羽生選手の"素"の部分と上杉謙信の2つが同居していたと感じたといいます。

「4回転アクセルはリスクもあるし大きな挑戦でした。そこにかける気持ちとパワーを使うというのはすごく理解出来ます。ただ、それだけで終わらないところに羽生選手のすごさがあると思います。プログラムに対するリスペクトがすごくあります。冒頭の4回転アクセルでパワーを使っても、しっかり最後まで演じきろうという姿勢がここに見えて、改めてすごいと思いました」

一方、流麗な羽生選手の滑りは撮影が難しいといいます。

「羽生選手は決めポーズらしい決めポーズがあまりないんです。流れるような滑りなので難しいんですよね。でもここを撮りたいというポイントがたくさんあります。自分が時間を止められるなら、シーンごとに移動して撮影したいです」

■「天と地と」その魅力

矢口さんは、「天と地と」には競技者としての羽生選手を強く感じるといいます。

「羽生選手は特に、競技の中で輝きますし、根っからの競技者だと思います。それが『天と地と』というプログラムで表現されています。1つ1つの競技者としての表情、羽生選手の今、戦っている時の気持ちや状況、孤高な感じがすごく出ていて好きです」

また、ジャンプとジャンプの間の"つなぎ"の部分にも注目。単なるジャンプへの助走ではなく、プログラムと一体となっているところが見所です。

「音楽に羽生選手の動きがあっているというよりは、羽生選手の動きに音楽がついていっている感じがします」

*報知新聞社・矢口亨カメラマン
2019年からフィギュアスケートを撮影。
その他、野球や五輪競技全般を担当。
写真集「羽生結弦 2019-2020」

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