宮﨑駿監督が求める「見覚えのある風景」 スタジオジブリの背景美術に込められたこだわりを取材
企画展の企画・監修を務めた宮崎吾朗さんは「キャラクターに命を吹き込むのがアニメーション(作画)であるなら、そのキャラクターが生きる世界を生み出すのが背景美術です」とし「宮﨑駿監督は常々“アニメーション映画の品格は背景美術で決まる”と発言しています。美しく、豊かな画面は背景美術の力がなければ生まれません」とコメントしています。
■手描きにこだわって制作された120点を展示
背景美術は、シーンごとに様々な技法が使い分けられています。例えば、青サギが飛び立つシーンでは、臨場感を出すため、宮﨑駿監督の指示で長い絵が使われています。さらに、立体感が必要な場面では、輪郭線のコピーされた透明なセルに背景画のタッチで着彩する技法・ハーモニー処理が施されているといいます。
■宮﨑駿監督の作品の魅力 “見覚えのある風景”
宮﨑駿監督はなぜ見覚えのある風景にこだわるのか?武重さんは「宮﨑監督の作品っていろいろ突拍子のない世界が広がっていきますけど、それってどこかに見たことがあるものをいろんな形で集めて世界を作ってらして、見るお客さんの記憶の中で見覚えのあるという印象をもつことで、より映画の中に入っていって楽しんでもらえるんじゃないか。(武重さんが新人の頃に担当した)『となりのトトロ』で宮﨑監督から言われていたのは、名前のわかる植物を描いてくださいという注文。普段見るものをちりばめてそれを見た子供たちが普段の生活で、“この花見た”というので楽しんでもらえればいいなと」と語りました。
『君たちはどう生きるか展』展 第三部 背景美術 編は、2025年11月まで開催予定。5月に一部の展示背景美術の入れ替えも予定しているとしています。
三鷹の森ジブリ美術館は、日時指定の予約制だということです。