×

ジェネラティブNFTが広げるクリエイターの新しい可能性【SENSORS】

2023年4月21日 17:00
ジェネラティブNFTが広げるクリエイターの新しい可能性【SENSORS】

ブロックチェーンに記録された代替不可能なデジタルデータ「NFT」。近年、アートやゲームなど、様々な分野への活用が進んでいる。

その中で、近年、特に注目されているのが「ジェネラティブNFT」だ。ジェネラティブNFTは、プログラムなどにより自動生成されたNFTである。例えばイラストの場合、一枚毎に人の手で描かれるのではなく、顔、服装、背景などパーツ毎に描かれたアイテムがプログラムで組み合わされ、全て絵柄の異なる作品が多数生み出される。

ガチャガチャのようにどんな作品が手に入るかわからないワクワク感や、絵柄違いの作品を自動で大量に作れる機能性を持つジェネラティブNFTは、ファンとクリエイターの新たな関係を紡ぎ始めている。その可能性について、ジェネラティブNFTの最前線で活躍する4人が語り合った。

■「絵を描いて生きるのは難しい」 やむなく選択したサラリーマン生活

ジェネラティブNFTの発展は、クリエイターの生き方にも変化をもたらしている。

これまで、クリエイターとして生きていくことは難しいと言われてきた。インターネットやSNSの発達でクリエイターの発信機会は増え、個人がイラストなどの作品を発表し、それが拡散され、話題を呼ぶことは珍しくない。しかし、それによって「お金が稼げる人」は一部。イラストが拡散してバズり、フォロワーが増えてもすぐにお金は生まれない。

ジェネラティブNFTコレクション「クリプトニンジャ・パートナーズ・ジョブズ(CryptoNinja Partners Jobs=以下CNPJ)を創設したうじゅうなさんも、昨年まで「底辺営業マンだった」と過去を振り返る。

「幼少期から絵を描くのが好きで、クリエイターとして生きてみたい気持ちはありました。でも絵を描いて生きるのは難しいと諦めていて、住宅営業という絵とは全く関係のない職業に就いていました。というのも、例えばクラウドソーシングなどで安価な仕事を積み重ねてからでないと、クリエイターとして食べていけないと感じていたからです」

日本発のジェネラティブNFTコレクション「ネオトーキョーパンクス(NEO TOKYO PUNKS)」の創設者のNIKO24さんも共感を示す。

「私も同じで、小さなころから絵を描くことが好きで、趣味でイラストを描いてSNSに投稿していましたが、反応はもらえてもそれが何かにつながるというわけではありませんでした」

2022年リリース時には売上世界一を記録したジェネラティブNFTコレクション「新星ギャルバース」を運営する草野絵美さんは、ミュージシャンとしての自身の体験を重ねる。

「これまではファンコミュニティがあっても、お金はなかなか集まりませんでした。それに、ストリーミングサービスになってからは、楽曲がどれだけ聴かれても1再生で0.1円の金額しか入ってこない。クリエイターがインターネットで活躍できるようになった一方で、相当バズらない限りお金は入ってこない世界観から、少数の熱量の高いファンによってクリエイターが支えられる時代がきたのかなという印象です」

■個人でもいきなり世界で挑戦できる

そんな世界に風穴を開けたのが、NFTだ。デジタルデータの唯一性が証明されたことで、アナログで描かれた1点ものの作品のように、希少性が価値になる。また、マーケットプレイスで取り引きできるため、すぐにお金に還元される。

うじゅうなさんはNFTとの出会いによってクリエイターとして生きる手段を見い出した。

「CNPJのトレードボリュームは日本円換算で4.7億円ほどの規模になりました(2023年4月現在)。CNPJがなかったら、私は本当に生きていけなかったと思います。サラリーマン生活をしていたころは貯金389円で、1日3食白米しか食べないような日もありました。今はNFTのおかげで生活できています」

NIKO24さんは、2021年9月頃からNFTクリエイターとしての活動を開始。サラリーマンとして働くかたわら、「世界に通用するジェネラティブコレクションを日本から出したい」と、地道にNFTを発行してきた。その後、2022年3月に発表したネオトーキョーパンクスが人気を博し、起業した。

「トーキョー・オタク・モード(Tokyo Otaku Mode)」の共同創業者兼COOとしてクリエイターをプロデュースしてきたpajiさんはNFTの価値をこう評価する。

「NFTアートはデジタルな商品なので、世界中から一気にお金を呼び込み、クリエイターに価値を還元できます。新技術によって、うじゅうなさんがクリエイターとして生活できるようになったり、NIKO24さんが専業になったり、すごいですよね。生き方の選択肢が増えた」

草野さんは、デジタルだからこそ世界で挑戦するチャンスにもなると話す。

「国境を越えるという部分だと、以前は特にコンテンポラリーアートの世界では、ニューヨークかロンドンに住んでいないとギャラリーに所属できませんでした。今は、デジタルのコンテンポラリーギャラリーが増えていて、デジタルだからどこからでも展示ができます。今まで以上に世界で作品を展示をするチャンスが、デジタルクリエイターにはあると思います」

これにはpajiさんも同意する。

「たしかに、日本はポップカルチャーなど、クリエーションがすごく強い国じゃないですか。それがグローバルに広がるところは魅力があると思います。ネオトーキョーパンクスも海外からの人気が高いですよね」

NIKO24さんは海外とのつながりを実感しているという。

「昨年ニューヨークで行われたNFTイベントに参加した知人から、エレベーターに一緒に乗り合わせた人に日本人かと聞かれて、ネオトーキョーパンクスを見せられたという話を聞きました。そういうことって今までだと起き得なかったことです。また、先日開催した現実世界でのイベントには国外からも参加者が来てくれました。世界に影響する、影響しやすくなったことを本当に感じます」

(4月20日放送『Z STUDIO SENSORS』より再構成)