中村隼人 横浜流星から“チャーミングで魅力的” 舞台『巌流島』で佐々木小次郎演じる
歴史に名を残す2人の剣豪による『巌流島の戦い』を、新設定・新解釈で書き下ろした作品です。演出に堤幸彦さんを迎え、俳優・横浜流星さん(26)演じる宮本武蔵と、隼人さん演じる小次郎の熱い友情を描いたアクション時代劇となっています。
歌舞伎界にとどまらず、俳優として活動の幅を広げる隼人さんに、役にかける思いや共演する横浜流星さんとのエピソードを伺ったのですが…。インタビュー中、まさかのできごともありました。
――絶賛公演中ですが、コンディションなどはいかがでしょうか。
「佐々木小次郎をやっているにあたって、刀が長いんですよ。他の人が使っているものよりも『備前長船長光』って実際にあった刀なんですけど、結構長いので、普通の刀より倍ぐらい重たくて。やっぱ腕だったり、背中だったり結構疲労がきやすい感じですね」
――今回演じるのは歴史的にも有名な佐々木小次郎。隼人さんにとって、佐々木小次郎とは。
「僕なりのイメージはすごく育ちがいい品のある武士なんだけど、内心に秘めた熱い思いは人一倍あって、“いつか武蔵と戦いたい、いつか武蔵を倒したい”っていう熱い思い、その一心で生きてきた実直な人物だと思うので、そういったところを出せるようにどんどん深く深く小次郎を掘り下げていければなと思っています」
横浜流星さんとは今回初共演。2人で話し合いながら役作りしていく場面もあったそうです。
「主演の横浜流星くん演じる武蔵と小次郎の対比を出すっていうのを、稽古初日から意識はしていて。武蔵と小次郎がお互いを思い合っていて、どこか重なる部分があるからこそ“友”になるわけですけど、重なりすぎるとキャラクターが似ちゃうので…武蔵が(気持ちが)沈んでいる時は小次郎が沈まないようにしなきゃ、逆に武蔵が上がっている時の小次郎は沈むようにしようとか、流星くんとのバランスというものは、一緒に話し合ったことが楽しかったし、苦労した部分ですね」
――演出は堤幸彦さんですが、なにか印象的な言葉はありますか?
「堤さんが、“自分の作品であまり泣くことがないんだけど…これはみんなの熱量と武蔵・小次郎のいわゆる武芸者としての友情に泣けた”っておっしゃって。それが僕らはすごくうれしかった。作った人に評価してもらえるっていうのはやっぱり役者冥利(みょうり)に尽きるなと思って。その言葉を信じて突っ走りたいです」
■初共演の横浜流星が明かす 中村隼人の印象
今回、横浜流星さんに隼人さんに関する事前アンケートにお答えいただきました!隼人さんに回答を伝えると想定外のことが…!
【横浜さんへの質問(1):隼人さんの第一印象、稽古を経て変化した印象は?】
<回答>ポスター撮影で初めてお会いしたのですが、その時は小次郎に扮(ふん)していて、凛とされていて熱いものを感じていたので、稽古が楽しみでした。今も小次郎として見ているのでその印象は変わらないですが、チャーミングな部分もあって魅力的な方です。
――とのことですが、チャーミングで思い当たる節はありますか?
「チャーミングで思い当たる節か…。稽古場最終日くらいに、抜いていないのに親知らずが腫れたんですよ(笑)。もう口がね、(実際に見せながら)このくらいしか開かなくなって大変だったんですよ。セリフはしゃべれるんだけど、ご飯食べる時がダメで。ちっちゃいおにぎりをサランラップで巻いて、いちいち作って…俺の歯が痛いっていうのを知らない流星くんから見たら、“ん?”ってなりますよね。多分それかな(笑)」
――確かになりますね。それは親知らずが、いわゆる成長して…?
「うん、成長してなんか……こんな話いる?! 歯医者行ったんですけど、皆さん気をつけてください。親知らず、抜いてなくても要注意です(笑)」
【横浜さんへの質問(2):『巌流島の戦い』では宮本武蔵が佐々木小次郎に勝ったと言われていますが、逆に横浜さんが隼人さんにこれは勝てないって思うことは何ですか?】
<回答>立ち姿や発声、所作など。(横浜さんが)舞台は6年ぶりですが、学びが多く刺激をたくさんもらっています。
――ということは、なにか横浜さんにアドバイスをされたり…?
「立ち回りの形など提案しましたね。本当に流星くんは感覚が鋭い人なので、“こういう感じで出してみたら?”って言った次の日の稽古ではガラッと変わっているんですよ。“切った形、今こうなってるけどちょっと角度をこうあげた方がいいよ”とか。あの、最後に僕が死ぬところ………あ…言っちゃった…(笑)」
――まぁまぁまぁ(笑)…気を取り直して、地方公演が控えていますが、楽しみなことは?
「やっぱりご飯ですかね、おいしいご当地グルメを食べられたらいいなと。それに博多座以外は全部初めての劇場なので、(見え方など)どういう感じなのかなっていうのは楽しみですね。今回、最後に客席に降り…あ、これも言っちゃだめ……? ま、いいか!(笑) 客席に降りるんですよ!(笑) 客席が広ければ広いほど出来ることって追加されると思うので、そういうあたりが楽しみだなって思っていますね」
◇◇◇
まさかのネタバレをしてしまった隼人さん。まさに“チャーミング”ともいえる一面が垣間見られたインタビューでした。1月の『新春浅草歌舞伎』での公演後、『巌流島』の稽古に行くという日々を送っていた隼人さんですが、新しい世界に飛び込んでいけることがすごく楽しくて、自然と役を切り替えられていたと言います。30歳を迎える今年、一つの区切りとして歌舞伎界・演劇界をさらに盛り上げられるよう試行錯誤したい!と意気込む隼人さんに、今後も注目です。
【市來玲奈の歌舞伎・花笑み】
「花笑み」は、花が咲く、蕾(つぼみ)がほころぶこと。また、花が咲いたような笑顔やほほえみを表す言葉です。歌舞伎の華やかな魅力にとりつかれた市來玲奈アナウンサーが、役者のインタビューや舞台裏の取材で迫るWEBオリジナル企画です。