アカデミー賞でオスカー狙う キー・ホイ・クァン、20年ぶりに俳優復帰した理由を取材で語る
映画は、アメリカでさえない日々を送るアジア系移民の中年女性が、突然夫に導かれてカンフーの力に目覚め、強大な悪に立ち向かう物語。クァンさんは夫を演じ、あたたかく優しい姿から激しいカンフーアクションまで幅広い演技を披露しています。
■20年ぶりに表舞台に復帰 俳優業を休止した理由
クァンさんの両親は中国人移民で、ベトナム戦争後の混乱から逃れて1979年からロサンゼルスのチャイナタウンで暮らします。そこで、クァンさんは『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年)でハリソン・フォードさんと共演する中国人少年のオーディションが行われ、抜てき。『グーニーズ』などに子役として出演し、一世を風靡(ふうび)します。
その後、俳優業を休止し、助監督や武術指導のアシスタントなどで映画界を支えていましたが、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のオーディションを受け20年ぶりに俳優復帰。ゴッサム・インディペンデント映画賞やニューヨーク映画批評家協会賞など、助演男優賞を軒並み受賞するなど、見事な復活を遂げました。
ゴールデングローブ賞を獲得し、アカデミー賞へのノミネートも発表された今年2月、日本テレビのインタビューに応じました。俳優業を休業した理由について「(80年代当時)ハリウッド映画の脚本・役柄はほぼ、アジア系俳優のためのものではなく、よく僕たち(アジア系俳優)は笑われる存在として描かれました。社会から阻害された人物でした。すごく気落ちしたし、やる気も出なくなりました」と明かしていました。
■多様性のある作品が求められるように 「今なら自分が活躍できる場所がある」
ところが近年ハリウッドに大きな変化が起きました。2016年、アカデミー賞・俳優部門のノミネートが2年連続で全員白人だったことから、『白すぎるオスカー』と批判の声が広がり、この出来事をきっかけにハリウッドでは『パラサイト 半地下の家族』のような人種にとらわれない多様性のある作品が求められるようになりました。
このことを受け、“今なら自分が活躍できる場所がある”と感じ、スクリーンに戻ったというクァンさん。現在の環境について、「アジア系のテーマや物語だって利益を出せるんだってことをハリウッドに見せることができたわけです。アジア系俳優にとってチャンスは今後増えていくと思いますよ」と心境を語りました。