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劇団『ヨーロッパ企画』旗揚げ25周年イヤーに新作映画制作 上田誠らメンバーが旗揚げ・新団員加入を振り返る

2023年6月20日 22:15
劇団『ヨーロッパ企画』旗揚げ25周年イヤーに新作映画制作 上田誠らメンバーが旗揚げ・新団員加入を振り返る
劇団『ヨーロッパ企画』(左から)藤谷理子さん、上田誠さん、諏訪雅さん
アニメ映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の日本語吹き替え版脚本などを手がける上田誠さん(43)が代表の劇団『ヨーロッパ企画』。旗揚げから25周年を迎える2023年、オリジナル長編映画『リバー、流れないでよ』を制作しました。映画の公開を前に、脚本を手がけた上田誠さんと、主役のミコトを演じた藤谷理子さん(27)、ノミヤ役を演じた諏訪雅さん(46)にインタビューを行い、旗揚げ25周年を迎える劇団についてや、藤谷さんが17年ぶりの新団員となった経緯などを伺いました。

映画『リバー、流れないでよ』は、京の奥座敷と呼ばれる貴船の老舗料理旅館『ふじや』を舞台に、繰り返す2分間のタイムループから抜け出せなくなってしまった人々の混乱を描く群像劇です。ヨーロッパ企画としては、2020年6月にオリジナル長編映画の第1弾『ドロステのはてで僕ら』を公開。日本だけでなく、世界27カ国53の映画祭で上映され、各地であわせて23の賞を獲得しました。

――なぜ今回、新作の長編映画を撮ることになったのですか?

上田:ヨーロッパ企画は劇団なんですけど、映画を2020年から作り始めまして、第2弾ということになるんですけど。僕らは京都の劇団なので、せっかくなら京都の風景を使って映画を作りたいという思いで、それで今回は貴船という場所をロケ地に選びまして、そこから話を作っていったというのがきっかけですね。

■旗揚げから25年 「周りの変化に流されないように」

劇団『ヨーロッパ企画』は、諏訪雅さんが、1998年に大学の演劇サークルで知り合った永野宗典さんと上田さんを誘って旗揚げした劇団で、今年25周年を迎えます。

――旗揚げから25年がたち、劇団に変化はありましたか?

諏訪:そんなに内側は変わってないような気がしていて、来る仕事とか環境は変わっていくんですけど、それに引っ張られないように、昔からのヨーロッパ企画をずっと大事にしようとはしている、周りの変化に流されないようにしているっていうのが変化というか。

上田:最初は諏訪と永野宗典という2人の役者で、学園祭で演劇をやろうと。ひとり1万円ずつ出し合って3万円の予算でやって、結局収益は全部で3万6千円になって、6千円使って打ち上げをしたみたいな、そんな始まりだったんですよ。

それから25年たって。今回の映画も“自分らで何かやろうか”って言って、“じゃあ自分たちで出来るのはどこまでやれるんだろう”って、労力出し合って、やり始めてっていう感覚はあまり変わってない。自分たちで仕掛けて動いていくことを大切にしていますし、自分たちでなにか面白いことをやろうって言って始めてっていうのはあまり変わってないかもしれないですね。

■劇団として“誰も歩んでいない道を歩む”

――劇団立ち上げの時には、25年後、その先の未来というのはどういう想像をしていましたか?

諏訪:不思議ですね、最初は“僕の最後の舞台にしたいから上田くん書いて”って感じで誘ったんですけど、全然最後にならなくて。(当時は)就職も決まったし、劇団は立ち上げたけど僕は働こうかなみたいな時期もあったけど、結局留年して内定取り消しになって、結局はこっちかなみたいな。結局これしかなかった感がすごくある。この先ホンマ分からないですけどね。

上田:古いカーナビだったら、道が新しく出来ているときに“あれ?これもう森みたいな中に行ってるな”みたいな時があるじゃないですか。どこ走っているんだろうみたいな。ずっとその感じなんですよ。たぶん諏訪さんなんて、大学7回生とかで、僕も5回生とかで劇団やっている時なんか、本当に道がないところをずっと行ってるみたいな状況で。僕なんか大学辞めたりして、もういよいよ道がない所に行ってる感じがあるんですよ。今も、劇団で映画やるってそんなにない道だと思います。あんまり誰も歩んでいない道を歩むのが面白いからやっているのですごくいいことなんですけど。

■約17年ぶり新団員 「めちゃめちゃ入団しましたね」

今作の映画で主役を務める藤谷さんは、2021年に約17年ぶりの新団員としてヨーロッパ企画に入団しました。

――藤谷さんが入団した経緯を教えてください。

藤谷:そもそも初舞台が(2014年の)諏訪さんのプロデュース公演でお世話になっていまして、やっぱり若かったというのもあって、気にかけていただいてたというか。事務所に入れていただいていたご縁というのもあって、いろんなタイミングが合ったタイミングで入団したという。

上田:藤谷さん以外のメンバーは、入ったのが初期の頃なので、なんとなくみんな近くて仲いい人らで始めて、じわじわ入っていく感じで。初期にわーっと入って、そこでメンバーがある程度固まってずっときた。17年ぶりの新団員なんで、当たり前なんですけど自然とは入らないんですよ。それに気付いて“あ、自然と入ることではないんだな”と思って、ちゃんと“入ってください”ってお願いして。だから誰よりもちゃんと入ったかもしれないですね。

藤谷:たしかに“入団”みたいなのはしていただいたかなと。

上田:だからめちゃめちゃ入団感はありました。入団感なく入るのが本当はベストなんですけど、めちゃめちゃ入団しましたね。

諏訪: (他のメンバーの時は)入団しましたとかも、たぶん発表とかもしてなかったんじゃないかな。

藤谷:(正式に入団したのは)私だけかもしれない

――17年ぶりに入団してもらいたいと決断した理由は?

上田:もともと藤谷さんに入ってもらいたいというのは大きかったですけど。(ヨーロッパ企画は)どんどん新しい人が入って、年齢層が縦に伸びていってというようなタイプの劇団じゃなくて。自分らの代でこの活動は終わるだろうからってくらいに思っていたんですけど、だんだんスタッフの人とか、それこそ藤谷さんとか、グッと若い世代の人たちもヨーロッパ企画に関わるようになってくれて。

劇団って始めた頃は面白いんですけど、だんだん熱っていうのが、最初の20年と、20年目から40年目みたいなことって、どっちが熱が高いか。後半の方がどうなるかは自信がなかったんですけど、だんだん“これあと20年やれそうだ”って思ったし、それには新しい力が必要だって思ったタイミングがあって、じゃあもうそれは藤谷さんがいてくれたらって思ったし、逆に藤谷さんがいたから意識したというのもありますし、だいぶ大きいですね。(今後の劇団の)全部を背負ってもらおうって思っていますけど。

藤谷:ちょっと荷が重いかもしれないですけど、光栄なことですね。

■次なる目標 「“劇団”がはやっていけばいいな」

――劇団としての今後の目標や、やりたいことを教えてください。

藤谷:今年25周年のいろんな盛り上げごとを旗揚げメンバーの3人がすごく精力的に動いてくださっているんですけど、もう25年後の50周年のときは私がちょっといろいろイベントをやる実行委員長をやろうかなって。それが目標です。

諏訪:そのとき自分は70歳か。

藤谷:私が50歳くらい

諏訪:健康でいたいな(笑)この先はもう、みんなが健康で続けていってじゃないですかね。(目標としては)もっと世界中の人に見てもらえるようなコメディーが作れるといいなと思います。それこそノンバーバル(言語を使わない)なやつとか、そういうのもチャレンジして世界ツアーをやりたいです。

上田:“劇団”っていう単位を使って、どこにでもいけるかもっていう感覚がどんどん強まってきているので、それを限界まで押し広めたい気持ちはあって。劇団で出来ることの可能性を探っていきたいので、世の中的に劇団がはやっていけばいいなと思いますね。最近コロナが長かったので劇団を組もうってならなかったと思うんですけど、だんだんそれも雰囲気変わってきたと思うんで、劇団面白いですよっていうのが広まればいいなと。