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“電子書籍化不可”で18万部突破 著者に聞く制作秘話『世界でいちばん透きとおった物語』 

2023年7月12日 6:15
“電子書籍化不可”で18万部突破 著者に聞く制作秘話『世界でいちばん透きとおった物語』 
杉井光『世界でいちばん透きとおった物語』(新潮文庫nex刊)
“電子書籍化不可”といわれる仕掛けがあるミステリー小説『世界でいちばん透きとおった物語』。SNSでは「最後まで読んで納得」「鳥肌がたった」などと話題になっています。著者の杉井光さんに、制作の裏側や仕掛けへの思いを聞きました。

物語は、大御所ミステリー作家の宮内彰吾が死去するところから始まります。妻帯者ながら多くの女性と交際していた宮内の子どもが主人公。父の死後、宮内の長男から、「親父が『世界でいちばん透きとおった物語』という小説を死ぬ間際に書いていたらしい。何か知らないか」と連絡を受けたことをきっかけに、父の遺稿探しを始めます。

■このトリックは「どう考えても紙でしかできない」

――本作の仕掛けはいつ頃思いついたのですか

基本アイデアは昔からぼんやりあったんですけど、形にしようかなって思ったのは去年の初めぐらいですかね。形にするの大変だなって思っていて、踏ん切りつかなかったんですけど。いつか書くだろうって言っていたら、ずっと書かないだろうと思ったので、“よしやるか”みたいな。始める前は「大変そうだな~」って思ってましたけど、実際始めてみたらわりとそんな大変ではありませんでした。楽ではないですけど、普段使わない筋肉をずーっと使って、変なところが凝ったみたいな(笑)

――“紙の書籍でしか味わえない”仕掛けということで、やはり紙の本には特別な思いもあるのでしょうか

特にないです(笑)。このトリックがどう考えても紙でしかできないので、新潮文庫の編集者様に、「電子(書籍)では出したくないけどいいですか?」って企画を出しました。もし電子で出せるなら出したいですね、その方が売り上げも増えるので(笑)。ただどっちが好きかと言われたら紙の本の方が好きですね。

――執筆はどれくらいかかりましたか?

2か月半くらいですね。みなさんが考えているような苦労はしてないんで、なんかちょっとお得ですね。勝手にみんな想像を膨らませていただいているので(笑)。一番大変なのは、このトリック(仕掛け)だけだとアイデアじゃないんですね。ただの思いつきなんです。それを話としておもしろい形に落とし込むのが一番大変でしたね。

■編集担当が明かす裏話「校閲にとってはやりがいのある本」

また苦労話の途中では杉井さんから「校閲の方が大変だったんじゃないですか?」と冗談交じりに一言。流れそのままにインタビューに同席した、新潮社の担当編集・小川さんも制作の裏話を明かしてくれました。

【担当編集・小川さん】
(担当校閲が)割と完璧主義の校閲者で「途中から楽しくなった」って言ってました(笑)。たぶん校閲の中でも、これはすごく大変な本にあたっちゃったと思うので、すみませんっていう気持ちもあったんですけど。校閲にとってはやりがいのある本だったと思います。

■杉井光にとって「第2のデビュー作」

5月に発売されてから、累計発行部数は18万部を突破している『世界でいちばん透きとおった物語』(出版社発表)。多くの読者に衝撃を与えた本作は、杉井さんにも心境の変化をもたらしたと話します。

――この本は杉井さんにとってどんな本でしょうか

初めてミステリーだって胸を張っていえる本を書いた自覚はあります。それまではミステリー作家が積み上げてきた技術をちょっとお借りして、みたいなかんじだったんですけど。第2のデビュー作みたいな感じですね。

――これから読む方々へメッセージをお願いします

読んでいただけるのが決まった時点で何もいうことはなくなるので、なるべく何も情報を入れずに読んでくださいとしか…言えないですね。

【杉井光プロフィル】
2005年、電撃小説大賞の銀賞を受賞し、翌年、電撃文庫『火目の巫女』でデビュー。その後、『神様のメモ帳』シリーズがコミカライズ、アニメ化し、ライト文芸レーベルや一般文芸誌で活躍。