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愛月ひかる “その後”は「先生」に――元宝塚男役スターの第2の人生、「美学」を次代のタカラジェンヌに継承へ

2022年2月18日 7:00
愛月ひかる “その後”は「先生」に――元宝塚男役スターの第2の人生、「美学」を次代のタカラジェンヌに継承へ
元星組男役スターの愛月ひかるさん

2021年12月に宝塚歌劇団を退団した元星組男役スターの愛月ひかるさん。正統派二枚目から個性の強い役まで幅広い役を演じた。退団後、テレビ初出演で語った宝塚への愛、第2の人生の“夢”とは――。熱烈な宝塚ファンである日本テレビアナウンサーの安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が迫った。(前・中・後編の後編)

■「大階段」の上から下まで落ちた経験

(安藤アナ):続いてはガラリと雰囲気を変えまして宝塚をキーワードで紐解く『アプレジェンヌ辞典』です。

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本日のキーワードは『大階段』。宝塚のシンボルとも言える舞台装置で、宝塚の舞台に初めて階段が取り付けられたのは1927年9月の日本最初のレビュー『モン・パリ』。現在の大階段は全部で26段あり、1段の幅はなんと23センチ。足の大きさと同じくらいの場所で踊り、歌い、演じ、さらにフィナーレでは出演者全員が大階段を降りてくるが、もちろん足元は見ない。華やかな笑顔の向こうに鍛錬を感じる瞬間である。
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「23センチは聞いて改めてびっくりしました。自分の足の方が確実に大きいので、つま先ははみ出ている状態なんですよね。実は研究科3年の時に一番上から下まで落ちたことがあるんです。気を失ってしまって。もともと高所恐怖症で、大階段の一番上は立つと本当に高くて怖いので、逆に下を見られないっていうのもあるんですね。もう見ちゃうとゾクゾクしちゃって降りられないので、逆に見ない」

「落ちたときは前に躓いて前のめりで落ちてしまって。それが一番危ない。後ろに倒れたらお尻つけるじゃないですか。もうそれからは倒れるなら後ろに倒れようと思って反り気味で降りてます。前に行くのが一番怖いし、人を巻き込みかねない。後ろだったらまだ『ちょっと邪魔だな』と回避してもらえるじゃないですか。前にいる人に突っ込んじゃうのが一番迷惑だし危ないので。その時は誰も巻き込まなかったんですけれども」

(中島アナ):特に私が好きだったシーンは『ロミオとジュリエット』のフィナーレ。

「あれはもうKAORIalive先生の振り付けが最高にかっこよくて。稽古場でまずこのポーズがついた時は、もうこれ『絶対格好よくなるやつだ』って思いました。自分どうこうじゃなくて、男役さんがこれやっていたら絶対格好いいやつだと思いましたね。このポーズは背筋が伸びすぎていても格好良くない。気だるい抜け感が大切だと思いながら、あまり頑張ってない感じで決めるというのを意識してやっていました。やっぱり大階段は宝塚の象徴だなと思いますね」

■退団後の「初観劇」で仲間と

(中島アナ):退団して一番の変化は何だったでしょうか。

「とにかく時間があるということですね。毎日お稽古で休みの日も公演に関連することを調べたり、アクセサリーを探しに行ったりと全部公演に向けて過ごしてきていたので、それがないと単純に時間があるなと思って過ごしていますね」

(安藤アナ):そんな愛月さんに『退団後初○○』のお写真を撮っていただきました。

「大晦日の日です。退団が12月26日だったんですけど、上級生の鳳翔大さん花音舞さんと北翔海莉さんが出られている『リビングルームミュージカル』を伶美うららちゃんと一緒に見に行ってきて。退団後の『初観劇』ですね。素晴らしい歌声からパワーをたくさんいただくんだなと思って、自分もそうやってできていたのかなって思いました」

(安藤アナ):5年後はどんな肩書きで呼ばれたいですか。

「『先生』ですかね。『クラレス』という宝塚受験スクールでプロデューサーとしてこれからお仕事させていただこうと思っているんです。だから先生と呼ばれていたら嬉しいなと思います」

(中島アナ):その主宰の遠野あすかさんからコメントをいただいております。

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「愛ちゃんを見ていると美しさは技術だと改めて感じます。もちろん生まれ持ったものがすでに美しいのですが。これまで愛ちゃんが努力を重ね、苦労してきた、身につけてきた技術の結晶が、あの舞台の美しさなのだと思います。10代の子供たちにとって初めて深く関わる大人になるかもしれませんので、彼女たちの人生に影響を与えてもらえたらと思います。愛月ひかるDNAを持ったタカラジェンヌが生まれて、その美学を受け継いでくれるのをファンの方たちも楽しみに待っていただけたらうれしいです」
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「宝塚を受験する子たちはもちろん『宝塚愛』をすでに持っていると思いますが、さらに私の存在によって、もっともっと宝塚に対する情熱を熱く持った子がひとりでも多く入団してくれたらいいなと」

「下級生に指導するのって上級生として、本当に難しいことで。人によってきつく言われて伸びる子もいれば、いいところを見つけてあげて伸びる子もいる。それは宝塚時代にも学んだことですので、一人一人のいい個性を伸ばしてあげながら、“鼓舞して”明るい方向でいきたいと思います」

(安藤アナ):ファンが気になるのは、今後、表現されるところに出てこられるかどうか。

「ディナーショーのようなファンの方にお会いする場は作れたらなと思うんですが、今のところ役者としてはまだ全然考えてないです。またおいおいお話があれば考えつつ、やっていけたらいいなと思っています」

(中島アナ):大変な状況の中で(宝塚の)皆さん頑張っていらっしゃいます。ファンの皆さんもちょっと我慢の時期。エールを届けていただけますでしょうか。

「生徒、スタッフ、ファンの皆さんがすごく感染対策してくださって、そのおかげで私も本当にありがたいことに千秋楽まで無事に終えることができました。今幕が開くのをすごく心待ちにしている方のために、みんな本当に苦しい状況の中でお稽古に励んでいると思います。頑張ってください」

(安藤アナ):最後に、宝塚で学んだことで一番生きていることは何ですか。

「人への思いやりです。舞台上で役として絡んでいても常に人のことを気遣う心、それが舞台人としてのマナーとして一番大切なことじゃないかなと学びましたし、普段の人への気遣いとか学べたのかなと思うのでこの言葉にしました。振り返って話していても、本当に素晴らしい場所にいたんだなと強く思います。宝塚で学び経験したことを生かしながら、第2の人生も私らしく真っ直ぐに歩んでいけたらいいなと思います」

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『アプレジェンヌ 〜日テレ大劇場へようこそ〜』は日テレNEWS24のシリーズ企画。元タカラジェンヌをお招きし、日本テレビアナウンサーで熱烈な宝塚ファンである、安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。アーカイブはYouTube「日テレNEWS」で期間限定配信中。

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