山口勝平 『らんま 1/2』はルーツ さまざまな経験を経て「自然体でキャラクターと向き合っている」
山口さんが出演するアニメ『らんま 1/2』。主人公・早乙女乱馬をはじめ個性豊かなキャラクターたちが繰り広げるドタバタ格闘ラブコメディーで、山口さんは、1989年から放送されたテレビアニメに引き続き、早乙女乱馬を演じています。
――オファーが来たときの心境はいかがでしたか?
人生のなんのご褒美だろうという感じで。やっぱりうれしかったですね。自分にとっても名前がある役は乱馬が初めてだったので、人には渡したくないというのはどこかでありました。ほっとしたというよりは、すごくうれしかったなという感じでしたね。
――再び早乙女乱馬を演じる上で、向き合い方が変わった部分、もしくは変わらない部分はありましたか?
乱馬に対しての、キャラクターに対しての思いは変わらないし、常に新鮮であるようにとは思っているんですけれども、自分自身もこれまで乱馬をやってから、今回の乱馬をやるまでの間に、いろいろな経験を積ませてもらっているので、キャラクターに対してのアプローチの仕方は自然と変わってきていると思います。
いわゆる決めゼリフのようなものは、昔だったら「これはいいセリフなんだろう」「これはかっこよく言わなきゃいけない」みたいな“力み”みたいなものがあったかなと。今回は流れの中でさらっと出てくるから「こっちでいいんだろうな」っていう、すごく自然体でキャラクターと向き合っているなと思います。
――『らんま 1/2』という作品、早乙女乱馬という役は山口さんにとってどのような存在ですか?
自分にとって声優・山口勝平のルーツにあたるキャラクターだと思いますし、作品だと思いますから、多分切っても切り離せないところはあったんじゃないかなと思います。
■同じキャラクターを演じ続けて考え方が変化 「キャラクターにとっては自然」
――同じキャラクターを何年も演じ続けるというのは難しいものもあると思うのですが?
例えば、劇場版名探偵コナンで毎回「オレは高校生探偵・工藤新一」ってやっているじゃないですか。あれも毎回とっているんですけど、最初の頃は「同じでなきゃいけない」「できるだけ同じものを再現していかなきゃいけない」と思っていたんですけど、自然とそのうちに「変わっていいんじゃないかな」という考え方に変わってきたのはありますね。自分自身もいろいろな経験していますし、年齢を重ねていくので、その都度その都度自分の思っていることを、キャラクターにフィードバックさせていく方が、キャラクターにとっては自然なんじゃないかという気もしています。
――声優人気の現状をどのようにご覧になっていますか?
僕らの頃は、芝居を一生懸命やっていたら何とかなったっていう時代だったと思うんですけど、今は分野の垣根がなくなって、声優さんたちもドラマ、コンサート、音楽活動、いろいろな分野で活躍できる分、今の若い子たちはいろいろなことができないと出てこられないっていうのを見ていると、逆に大変だなって思いながら見ていますね。
「今の時代だったら自分はデビューできなかっただろうな」じゃないけど。みんな何かしらに一つ秀でているからずっと残ってきていたり、前に出てきたりするんでしょうし、若い方たち見ていると、すごくいいなと思いながら見ています。
【山口勝平さん プロフィル】
福岡県出身。5月23日生まれ。これまでアニメ『名探偵コナン』の工藤新一、怪盗キッドや『犬夜叉』の犬夜叉、『ONE PIECE』のウソップなど、多くの人気作品で主要キャラクターの声を担当。趣味はイラスト、ギター、殺陣。息子の竜之介さんと娘の茜さんも声優として活躍している。
【お話を聞いて一答遼談!(取材後記)】
『らんま 1/2』が完全新作的アニメとして帰ってきて一番うれしかったのは、主演の山口勝平さんだったんだなと、強く感じるインタビューでした。長年愛されるキャラを演じ続けるうえで、変化があってもいいという山口さんの考えは、他の仕事にも共通することだと思います。経験が増えれば、同じ仕事でも当然向き合い方が変わり、パフォーマンスも変わる。再現性以上に、今の自分を自然体で出すからこそ発揮される力もあるのだと、山口さんのインタビューを通して感じました。
企画・取材:日本テレビ 伊藤遼