ファイルーズあい 夢をかなえて声優に「自分を疑わないことが一番大事」
■主人公・桜木カナを演じて、就活の経験が「無駄じゃなかった」
ファイルーズさんが出演するアニメが『株式会社マジルミエ』。マンガアプリ・少年ジャンプ+で連載中の人気作で、就職活動に苦戦していた主人公・桜木カナが魔法少女を派遣するベンチャー企業に入社し、先輩社員と共に奮闘する姿が描かれます。ファイルーズさんは主人公の桜木カナを演じています。
――『株式会社マジルミエ』が放送され、今はどのような気持ちですか?
まさにアニメが始まる時期というのが、就活生が内定もらっていたりそうでなかったり、周りと比較してしまう時期だと思うんです。(作品は)主人公のカナが“就活うまくいかないな”というところから物語がスタートするので、すごく勇気づけられる人が多いと思います。そういう(就活などで悩んでいる)人たちの“明日も頑張ろう”というエールになれるような作品なので、本当に見てほしい気持ちでいっぱいです。
――演じる桜木カナに共感できる部分はありましたか?
私、声優界でも珍しい経歴で、一度就活して社会人として一年間働いてから事務所の養成所に行ったんです。だからこそ、カナの“またお祈りメールもらっちゃった”とか、面接のときに“結局何が言いたいの?”という話をしてしまったりという、失敗も何回も経験してきました。カナの気持ちがわかるからこそ、カナの悩みとかを一緒に共感して演じられるところも、ある種の強みではありました。経験が無駄じゃなかったです。就活していた時は“私、声優になりたいのに就職活動なんてしても意味ないじゃん”とか、“エントリーシートの書き方なんて勉強しても意味ないよ”なんて思っていたんですよ。そうなんですけど、こうしてマジルミエやカナに出会えたことで、何も意味ないことなんてないんだなと改めて感じました。彼女の声として一部に携われたことが誇りになりました。
――共演する声優陣もすごく豪華ですね?
すごくありがたいのが、私がメンバーの中で一番後輩というか新人なんですよ。カナと一緒で、カナも周りの人たちがその業界で何年も働いている先輩ばかりなので、そのリアルな設定と年齢感、芸歴とかがリンクしていて、没入感もあってカナになりきることができました。
■失敗が糧に 夢をかなえるためには「自分を疑わないことが一番大事」
――かわいいキャラから、クールなキャラまで演じられますが、声の幅はどのようにして生み出されたのでしょうか?
小さいころからアニメのキャラクターの声をまねしたりとか、変な声出したりすると、周りの友だちが笑って面白いって言ってくれるのがうれしくて、家に帰ったらアニメを見ながらそのキャラの声を復唱して練習していたのが、もしかしたらきっかけかもしれません。ものまねしていって、いいなと思うところ。“この人のこういうところいいな”って思うところをちょっとずついろんな人から取り入れていって、自分だけのパッチワークみたいにしていって、そしたらもうオリジナルじゃないですか。そうやって私のマインドもできていますし、いいなと思うものは演技だけじゃなくて、日常生活においても全部取り入れるようにしています。最初はものまねがきっかけだったと思います。
――声優になる夢をかなえたファイルーズさんだからこそ伝えられる、夢を追う人たちに向けてアドバイスはありますか?
私はいつも明るい感じのキャラクターだし、私自身も明るい人格だと思っているんですが、インタビューとか表では言っていないけど、本当に言えないような辛いことや悲しいこと、自分がした失敗で自分を恥じたり、なんであの時あんなことしちゃったんだろうという後悔もいっぱいあるんですよ。でも、こうやって笑って生きていけますし、自分を疑わないことが一番大事です。恥をかきたくないから前に出るのをやめようとかって、ある意味自分を守る上では一番楽な方法なんですけど、それをしていたら失敗よりももっともったいないことしていると思います。なら失敗して、次の糧にした方が絶対に将来の自分のために役に立つので、みなさん是非恥かいていっぱい失敗しましょう。私もいっぱいしてきました。頑張ってください!
【ファイルーズあい プロフィル】
東京都出身。7月6日生まれ。これまで『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』の空条徐倫や『チェンソーマン』のパワー、『怪獣8号』の四ノ宮キコルなど、多くの人気作品で主要キャラの声を担当。趣味はファッション、筋トレなど。2020年に第十四回声優アワードで新人女優賞を受賞。
【お話を聞いて一答遼談!(取材後記)】
ファイルーズさんが話していた、失敗しても将来の糧にしようという考えは、無駄だと思っていた就活経験すらも生かし、声優としての夢をかなえたファイルーズさんだからこそ説得力があると思います。夢を追いかける人々が悩みもがくその時間も、将来の武器になるのだと、彼女の言葉から強く感じました。
企画・取材:日本テレビ 伊藤遼