市川染五郎 祖父・白鸚と父・幸四郎と歌舞伎舞台へ「存分にかっこつけてやりたい」
9月2日より二世・中村吉右衛門さんの三回忌追善公演として上演されている歌舞伎座新開場十周年『秀山祭九月大歌舞伎』にて、祖父・松本白鸚さんと『二條城の清正』に、父・松本幸四郎さんと『一本刀土俵入』に出演しています。
■祖父と父 改めて感じる2人のスゴさ
――2020年に染五郎さんを取材した時、「新しいことに挑戦していく役者になりたい」と明かしていましたが、心境や環境に変化はありましたか?
「高い頻度で歌舞伎舞台に出させていただくようになりました。地方公演に初めて1か月間、行かせていただいて。それまでは1年に2~3か月くらいが平均だったんですけど、1年に半年以上も歌舞伎舞台に出させていただけるようになったというのが一番変わったことです。父や祖父の姿を見て、“早く自分も毎月出られるようになりたい”って憧れていた部分もありました。舞台をやりながら常に先のことを考えなきゃいけないっていう大変さもあって。それを父や祖父は何十年ずっと止まらずにやってきているんだなっていうのを実感して、すごいなと思ったりもしました。
■父・幸四郎さんからのアドバイスは“セリフの速さ”
今月、昼の部では『二條城の清正』で豊臣秀頼を、夜の部では『一本刀土俵入』で堀下根吉を演じる染五郎さん。それぞれの役どころについて伺うと…
◆『二條城の清正』豊臣秀頼
「約7年前にも秀頼をさせていただいたことがあって。当時10歳でやった役を18歳でまたやるっていうのはなかなか珍しいことだと思います。実際の秀頼の年齢を考えれば、今の年齢の方が近くて…等身大でやらせていただくということを大切に、前回とは違うように見せられればいいなと」
◆『一本刀土俵入』堀下根吉
「ちょっとおいしい場面があるので、役になっている時はもう本当に自分をかっこいいと思い込んで、存分にかっこつけてやりたいなと思っています」
――祖父・松本白鸚さん、父・松本幸四郎さんからアドバイスを受けていますか。
「父に何回かセリフをメインに稽古してもらっていて、大きなアドバイスというよりは、“ここはもうちょっと速く言った方がいい”とか、細かいところを見てくれている感じ。『二條城の清正』豊臣秀頼は前回の台本もあるので、祖父にも稽古してもらってメモすることがたくさんあるので、それを見ながら自分なりに思い出してやっているところが大きい感じですね」
■「父はとにかく歌舞伎が好きな人」
――歌舞伎俳優としての幸四郎さんと、お父様としての幸四郎さん、違いはありますか?
「違いはないです。父自身も“何か変えているということはない”って言っていたことがありますし。とにかく歌舞伎が好きな人なので、その好きな気持ちを舞台にもぶつけていると思います。もちろん先輩ですし、教えを乞う立場ですけど、家にいてお芝居の話をしていても、自分が経験してきたことを対等にというか、ラフな感じで色々教えてくれる感じですね」
――ドラマや映画、モデルなど幅広いジャンルで仕事していますが、そういった仕事は本業である歌舞伎のお芝居にいい影響っていうのは与えていますか?
「それはあんまり意識してないというか。意識してないところで影響しているのか分かんないんですけど。その作品のことだけを考えて、現場に入るようにしています。“歌舞伎役者だから歌舞伎のために違うことやります”っていうのは、それぞれの現場で関わってくださっている方にも失礼だと思うんです。その時々、別の世界で必要としてくださっているのであれば、その現場のことだけを考えて、その作品に対してだけ全力でやるっていうことだけを考えています」
――その中でも印象に残っている仕事はありますか?
「やっぱり大河ドラマに出させていただいたのは大きかったです。祖父や叔母(松たか子さん)も、三谷幸喜さんの作品には昔からよく出させていただいていて、そこからのご縁ではあるんですけど。自分が初めて共演させていただいたのは、三谷さんが演出をされた歌舞伎『三谷かぶき』で、色々なことを勉強、吸収させていただきました。三谷さんとのご縁っていうのはすごくうれしいです。また何か出させていただけたらなと思っています」
――今後、歌舞伎以外のお仕事で挑戦したいことは?
「歌舞伎以外では…去年、大河ドラマと映画に出させていただいたんですけど、どちらも時代劇だったので、現代劇の映像作品! そろそろ出られたらいいなと思っています」
■市川染五郎ってどんな人? <一問一答チャレンジ!>
落ち着いた様子でありながら、熱く歌舞伎への思いを語ってくれた染五郎さんですが、年齢はまだ18歳の若手歌舞伎俳優。今回、その素顔に迫るべく、本連載企画初の試みで、チャレンジ企画に挑戦してもらいました。「好きな食べ物は?」「自分を動物に例えると?」など、10の質問に、60秒で答えるタイムトライアルゲームです。果たして成功したのでしょうか?染五郎さんの素顔が見られるチャレンジ企画の様子は動画で公開しています。
■市來アナの取材後記「父・幸四郎さんを彷彿(ほうふつ)とさせるよう」
少し恥ずかしそうな表情を見せながらも、一生懸命60秒チャレンジに挑戦してくれた染五郎さん。チャームポイントに困る様子や、自分を動物に例える様子は愛嬌たっぷり!その姿はどこかお父さん・幸四郎さんを彷彿(ほうふつ)とさせるようでした。そんな父や祖父のように舞台に立てる月が増えたことがうれしいと目を輝かせていたのが印象的です。歌舞伎愛に溢れた父の姿を追いながら、次世代として引っ張っていく染五郎さんに注目です。
【市來玲奈の歌舞伎・花笑み】
「花笑み」は、花が咲く、蕾(つぼみ)がほころぶこと。また、花が咲いたような笑顔や微笑みを表す言葉です。歌舞伎の華やかな魅力にとりつかれた市來玲奈アナウンサーが、役者のインタビューや舞台裏の取材で迫るWEBオリジナル企画です。