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「モルカー」で注目 世界が絶賛する監督

2021年6月11日 18:42
「モルカー」で注目 世界が絶賛する監督

「PUI PUI モルカー」で一躍注目されたコマ撮りアニメーションの監督・見里朝希さん。世界で30以上の賞を受賞した作品は、「グリム童話」を題材にしたものでした。


■ 「モルカー」で一躍注目! 反響は…?

1コマずつ人形を動かして撮影する“コマ撮りアニメ” モルモットを車にした「モルカー」がいる世界を描いた『PUI PUI モルカー』が、SNSを中心に話題になりました。

手がけたのは、注目の新星・見里朝希監督。「モルカー」の反響を聞いてみると…。

見里監督:
「当時かなり驚きました。というのも、もともと『PUI PUI モルカー』って本当に幼児向けのアニメーションとして、朝の番組の一つのコーナーでちょっと放送されるものでした。車がもしモルモットだったらっていうコンセプトで作ったもので、その“モルカー”が主人公のアニメーションとして制作していたのですが、動画配信サイトなどで公開されたことによって、より多くの人や世界に『PUI PUI モルカー』が知れ渡るようになって、作品とは別に飼い主と“モルカー”の絆だとか、飼い主がドライバーなんですけど、ドライバー同士のやりとりとか…色々な漫画とかファンアートとかたくさんの考察をいただいて、自分ではそういった視点を持っていなかったので、そういったところを発見できたっていうのはすごく興味深かったと思います。今後の“モルカー”の可能性を広げる要素につながるんじゃないかと思いました。」


■ 世界が絶賛!“フェルト人形”で表現できること

そんな監督が大学院の修了時に制作したのがコマ撮りアニメーション『マイリトルゴート』。

グリム童話『オオカミと7匹の子ヤギ』をモチーフに、オオカミに食べられてしまった子ヤギたちとお母さんヤギの“その後”を描いた物語です。この作品は日本だけではなくアメリカやフランスなど世界で30以上もの賞を受賞し、高く評価されました。

作品の特徴のひとつが、“羊毛フェルト”を使った人形。その素材にこだわった理由をこう話してくれました。

見里監督:
「(フェルトの良さは)柔らかい素材を生かして人形の細かい顔の表情も表現できること。たとえばつぶすことによって若干怒った顔にすることもできますし、縦につぶすことにより人形が驚いた顔になります」


『マイリトルゴート』では子ヤギたちの“怒った顔”や“驚いた表情”、“ほほえみ”など…フェルトの特性を生かし、感情が豊かに表現されています。さらに、キョロキョロと動くキャラクターの細かい視線の動きにもこんなこだわりが

見里監督:「人形の目も粘土やレジン液などを使って、手作りで制作をしました。目の動きも指で直接触れることによって変えていたりします。そこも、アニメイトする際にはとても大変でした」


■ 「親の過剰な愛情が果たして正義なのか?」アニメに込めたメッセージ

作品が賞を受賞した際、審査員から「複雑な余韻に浸り考えさせられる」「可愛さの中に怖さを融合させた世界観が魅力的」などという意見もありました。

実は、この作品には監督のあるメッセージが込められていました。

見里監督:
「親の過剰な愛情が果たして正義なのかっていう疑問をこの作品を通して見る人に植え付けたかったんです。」

グリム童話『オオカミと7匹の子ヤギ』の原作をもとに「過保護」という問題を提起しています。例えば、作品ではこんなシーンが描かれていました。


お母さんヤギ「オオカミが現れるかもしれないから決してドアを開けてはいけませんよ」
子どもヤギ「はぁーい!!」

お母さんヤギは二度と子どもたちがオオカミに食べられないようカギをかけ、外には出さないようにしています。一人が外へ出ようとすると…

子どもヤギ「お母さんが帰ってくるまでドアを開けちゃメェ〜」

子どもたちは「外は危ない」という親の言いつけを守り、自ら頑丈にカギをかけるようになっています


見里監督:
「過保護って決して悪いことではないじゃないですか。ただそれって子供が自分自身のことに気づいたり学んだりする機会っていうのを親が奪っているんじゃないかなと。自分が言葉にできないようなことをアニメーションを通して見る人に伝えていきたい。映像作品で大事なのって、中身だと思うんですよね。どんなに技術が発展しても変わらない魅力って物語の中身にあるんじゃないかなと。だからこそ見た人が「見てよかった」とか、「ためになった」って思ってもらえるようなメッセージ性とかエンタメ性を常に取り入れていきたいです」