歌舞伎俳優・中村鶴松「コロナ禍での不安」
歌舞伎俳優の中村鶴松さん(26)が取材に応じ、昨年8月の公演再開から1年たった心境を語ってくれました。
8月3日から東京・歌舞伎座で開演する『八月花形歌舞伎』。その第二部「真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)に出演する鶴松さんは今作で初役の「新吉」を勤めます。歌舞伎座では、公演再開時から感染予防対策として出演者・観客を各部総入れ替えし、客席数50%を維持しながら公演が行われています。
コロナ禍での公演という1年を振り返った鶴松さんは「本当に悩むこともあった。歌舞伎がどうなってしまうのか、下手したら無くなってしまうかなという思いもあった。なにか出来ることもないですし、ただただ待つしかないストレスが非常にかかりましたね」と不安だった心境を明かしました。
5歳から舞台に立ち“舞台に立たないと大事なものを失う”と語る鶴松さん。「役者として、舞台に出ていないと成長できない人間なので、舞台に出られなくなると役者としても成長できない。毎日毎日舞台に出ることによってステップアップ出来ていたものが、ピタッと止まってしまったという恐怖でしたね」と心境を明かしてくれました。
この1年、印象に残っている舞台について聞くと「コクーン歌舞伎の“夏祭浪花鑑”は、やっぱりお客様の熱気もすごかったですし、役者もそうですけどお客さんも一緒に芝居を作りあげてくれている感じ、これが本来の歌舞伎の姿だなと思いました」と語りました。
また“地方公演で見た光景が忘れられない”と語る鶴松さん。「松本公演も行ったんですけど、席がほぼ8割、9割OKだったので人がいっぱいいるというか、あの景色を見られてすごく幸せでした。千穐楽の時なんて、お客様がペンライトを持ってきていて、応援してくれてて、普通の歌舞伎じゃあり得ないことですけども、なんかこう待ち望んでくれていた。ここが僕たちの生きる場所なんだなというのを改めて再確認できたと思いましたね」と笑顔で答えていました。