檀ふみ&キャンベル対談 音楽は心の栄養素
今年9月から開催されている「クラシック・キャラバン2021 クラシック音楽が世界をつなぐ 〜輝く未来に向けて〜」。そのプロジェクトアンバサダーを務める女優の檀ふみさんと早稲田大学特命教授(日本文学者)のロバート・キャンベルさんのスペシャル対談が実現。クラシック・キャラバン2021の魅力や“音楽のチカラ”について語りました。
「クラシック・キャラバン2021」は新型コロナウイルスの影響により多くの演奏機会が失われるなど、困難に直面しているクラシック音楽界の活性化を目的として、日本クラシック音楽事業協会が企画したプロジェクト。
コンサートは全国13か所、全19公演が予定されていて国内外で活躍するソリストやフリーランスをはじめ総勢250名の演奏家が参加。さらに事業者・芸術団体のみならず、多くのアーティストやスタッフ、舞台、広報、印刷、旅行等の関連産業と一致団結して、日本各地に勇気と希望を届けることを目的に行われています。
■アンバサダー 檀ふみ×ロバート・キャンベル対談
——「クラシック・キャラバン2021」の魅力について
檀:「え、こんなガラ・コンサートありですか?」っていうくらい演目がすごいですよね。1つ1つ曲目がなんでこれとこれとこれとこれが組み合わさっているんだろうっていうぐらい豪華ですよね。
キャンベル:僕はこの企画を最初に拝見して感動したのが、トップのミュージシャンアーティストたちが、もちろんいらっしゃるし、この1年半本当に人の前で演奏する機会を奪われてしまった若い人たちが、一緒にチームを組んで演奏する。今若い人たちのターニングポイントになるようなそういう企画になっていることが一つ。もうひとつは、平常時だったらありえないような、いろいろな人々が一緒になって作っていくものが、どういう軌道を作って、これから日本の音楽の世界を変えるか。私たちの耳がどう変わるかと、すごく興味があるし期待したいなと思うんです。
——コロナ禍でコンサートを楽しめなくなった時にどのように過ごしましたか?
檀:家でゆっくり音楽を聴けるわと思っていたんですけれども、休みがあるとだんだん聴かなくなってしまう感じがありましたけど、いかがですか?
キャンベル:コロナは他の災害、地震ですとか水害・火災と違って時間をかけてゆっくりといろいろな私たちの心の糧、楽しみを奪っていったように感じたんですけれども。音楽聴くことを変えてしまうというか、フラットになってしまった感じがとてもしました。
——久しぶりに行ったコンサートで感じたことは?
檀:7、8か月ぶりくらいにコンサート行った時に、その音が体に響いてくる?何ていうかな?その感じに指先まで、足の先まで何か震えて、涙が出てきたんですけども。あ!生の音を聴くってこんなに素晴らしいものなんだっていうことを、つくづく感じました。
キャンベル:私も小さなホールで音楽を聴きましたけれども、何て言うかな、お湯をかけてお椀の中で戻ったわかめのような気持ちになったんですね(笑)
檀:あはははは!フリーズドライがね。戻ってきたんですね!
キャンベル:お湯の中に、おわんの中にちょっとたゆたっている感じ?音によって揺らされているような、赤ちゃんに戻ったような不思議な気持ちになりましたね。だから断たれて、何か月か、1年以上ぶりに行くと当たり前だと思っていたことも、実はこんなに素晴らしいこと、力づけたり、ちょっと悲しい時にもっとその深い悲しみの淵に誘ってくれたり、気持ちを静めてくれたり。生で聴く音楽が実はそうだったんだという事を気づかされたんですね。わかめとして(笑)
■檀ふみ&ロバート・キャンベルが語る 音楽がもたらすチカラとは…
——辛い時、苦しい時、人は音楽を聴きますが、音楽は人を救えると思いますか?
キャンベル:人を救えるかどうか音楽の究極の力っていうのが1日2日では測れないと思うんですけれども、どういう音楽を聴いていたかということを思い出す時に、瞬時に一緒になって全部自分の経験したことが、一瞬で再生される事が人生の中にたくさんある。ひょっとして今、私たちがこれから聴こうとしている音楽が、半年先、2年先、10年先の自分の一番の背骨みたいなものを支えてくれることがあると思うんです。
檀:食べることとか、着ることとか、大事なことであるけれども、むしろそれがなくなってしまったら困るけれども。音楽もやはり人を人としている大事なもの。人を豊かにしている、人を幸せにしてくれる何か人に何かを考えさせてくれるものだと思うので、今このコロナの時期に、誰か本当に大事な人と一緒に聴いたり、大事な人のことを思いながら聴いたりしていると、この一つの音楽が忘れがたい本当に大事な音楽になって、人生を豊かにしてくれると思いますね。
——お二人の思う“音楽のチカラ”とは?
檀:音楽って心に寄り添ってくれるっていうふうに思いますね。記憶に密接に絡みついて、その心にずっと寄り添ってくれる、大切なものだと思います。
キャンベル:音楽が私たちの心に直接運び込んでくれる栄養素、それに代わるものがないように思います。私たちはできなかったことが、できるようになったり、勇気を持って明日に向かおうということが、できるというそういう力を持っているものだと思います。
2人がプロジェクト・アンバサダーを務めるクラシック・キャラバン2021の模様を収めた「クラシック・キャラバン2021 クラシック音楽が世界をつなぐ」は10月24日(日)午後3時〜4時にBS日テレで放送予定です。