特集「多様化する自動販売機」 それぞれの設置者が商品にこめた客への思い
皆さんは自動販売機といえば何を思い浮かべますか?
定番の飲み物はもちろん冷凍された食材や商品など、
最近はさまざまなものが販売されています。
県内の最新の自動販売機事情を取材してきました。
リポート:太田英梨花アナウンサー
「JR四ツ小屋の目の前にコインロッカーのようなものが設置されています。」
「中に入っているのは野菜で、100円から購入できます。」
先月から設置されている野菜の自動販売機。新鮮な野菜を毎日出荷していて、
24時間いつでも購入することができます。
取材したときはリーフレタスをメインに販売していました。
「結構入ってますね。これで100円ですか!葉も結構しっかりしていて大きいです。」
「いただきます。シャキシャキで新鮮、おいしい!」
「歯ごたえがよくて苦みもあまりないですね。」
自動販売機を管理しているのは近くに住む農家の三浦洋さん
季節ごとにさまざまな野菜を育てていて、スーパーや直売所などにも出荷しています。
設置から約1か月。物珍しさもあり売れ行きは好調で、
その日のうちに完売することが多いと言います。
「たまたまここ歩いている人に、『買っておいしかったよ』とか、
『形いいね』とか、色々っほめられることがあって、それは嬉しかったですね。」
JR田沢湖駅前仙北市のJR田沢湖駅前に設置されている自動販売機では、
なかなか手に入らない「お肉」を販売しています。
「こちらの飲食店前で売られているのはなんと、クマ肉です。」
おととし10月に設置されたクマ肉の自動販売機。仙北市内で狩猟したクマの肉を扱っています。
管理しているのは同じ敷地内でそば店を営む佐藤大志さんです。
幼い頃からクマ肉を食べて育った佐藤さん。店の客の反応が販売のきっかけでした。
新型コロナの影響で佐藤さんのそば店は一時売り上げが10分の1にまで落ち込みました。
なかなか客足が戻らない中、店以外でも収益を確保しようと自動販売機でクマ肉を売り始めました。
部位は、ももやロースなどがランダムで入っていて、250グラムを2200円で購入できます。
太田アナ
「結構しっかり入ってます。赤身の部分がメインですけれども脂身もしっかり入ってますね。」
佐藤店長
「脂もちゃんと入るように猟師さんがちゃんとやってくれているみたいです。」
佐藤さんおすすめの食べ方は、定番のクマ鍋と
下処理いらずで手軽に味わえるしゃぶしゃぶです。
しゃぶしゃぶは肉を薄くスライスするのがポイントです。
ユニークなものを売る自動販売機が増える一方、
存続の危機を何度も乗り越えながら守られてきた味もあります。
太田アナ
「セリオンリスタでおなじみの、うどんそばの自動販売機ですがあれ…買えない…」
佐原さん
「あ、太田さん。これ使えね。あっちで使って。」
案内してくれたのは自動販売機を管理している佐原澄夫さんです。
佐原さん
「これ具合悪くてね、向こうの部品全部とっかえて、これもう今動いてないの」
2016年に秋田市のセリオンリスタに移設されたうどんとそばの自動販売機。
かつてはセリオン近くの屋外に置かれていたものです。
半世紀以上に渡り愛されてきましたが、穴が開いたりさび付いたりと劣化が進み
去年3月、その役目を終えました。
いまは別の自動販売機を使って販売されています。
見た目は変わりましたがもちろん味はそのままです。
中の機械部分は、ほぼ、動かなくなった自動販売機のもの。
最近は修理の頻度が増えてきているといいます。
このタイプの自動販売機の製造は終了しているため、
修理ができなくなればその歴史に幕を下ろすことになります。
長年うどんとそばの味を守り続けてきた佐原さんは、
全国から訪れるファンのためにもできる限り販売を続けたいと話します。
佐原澄夫さん
「何十年も通ってるお客さんもいるしね、ここに置けば場所柄県外のお客さんも結構いるんだもの。」
『俺の顔見れば「あ、おじさん元気か?」なんていう声かけてくれるし、何年前に来た(人で)、「あ、まだ頑張ってたか」って言う人もいるし』
「まず機械が元気なうちは俺も頑張るし、機械か俺かどっちが先にだめになればどっちもだめだ。」
半世紀以上にわたって愛され続ける味は次の世代にも親しまれています。
食生活を支える野菜から、なかなか手に入らない食材、そして世代を超えて人を惹きつける商品まで。誰でも手軽に買える自動販売機はこれからもさらに多様化していきそうです。
県内ではこの他にも昆虫食やお土産品、海の幸などを扱った自動販売機もあります。
普段何気なく通り過ぎている場所にも興味を引く自動販売機があるかもしれません。