堀越勸玄 9歳で相続する“市川新之助”の名跡 最年少の大役でもプレッシャーはない
■新之助として 9歳で『毛抜』の粂寺弾正の大役に挑戦
11月7日から歌舞伎座で始まる『十一月吉例顔見世大歌舞伎』にて、“市川新之助”として初舞台に立つ勸玄さん。歌舞伎十八番から、『外郎売』の“外郎売実は曽我五郎”と、『助六由縁江戸桜』の“福山かつぎ”を勤めます。しかし、2年半延びたことによって12月からの公演では『毛抜』の演目が加わり、“粂寺弾正”も勤めることになりました。これにはある理由が……
海老蔵:2021年のお正月に演舞場で『毛抜』を私がしていたので、彼(勸玄)もそれを見ていて、自分もやりたいっていう気持ちになったんだろうなと。数年前に勸玄は『外郎売』の“貴甘坊”として役をやっている。しかし、この年齢で『毛抜』の“粂寺弾正”をやった人は歴史上ないことですから、皆さん「えっ?」と思うんですけれど。
――海老蔵さんの『毛抜』を見て、勸玄さんはやってみたいなって思ったんですか?
勸玄:はい。“粂寺弾正”のすごく面白くて、裏でかっこいいところがあって、そういうものが大きく見えたので、やりたいなって。
海老蔵:“五つの見得”とかが良かったんでしょう?
――『五つの見得』ってなんですか?
勸玄:『毛抜』の話の中に『粂寺弾正』っていう人が『五つの見得』をするんですけど、決まりで、いろんな形で…その『五つの見得』で、僕が一番好きなのは最後の見得とか
――それも今回挑戦されるんですか?
海老蔵:もちろん。私のやってる通りにやります。間で一回引っ込みますけど。ちょっと演出を工夫はしてます。
■初舞台で2つの最年少記録を更新 「うれしいです」
――12月に勤める『毛抜』だけでなく、11月の公演の『外郎売』(の曽我五郎役)も成田屋としては“最年少で挑戦”ということで…
勸玄:(『毛抜』と)2つ最年少?
海老蔵:最年少記録更新です。おめでとうございます。
勸玄:ありがとうございます。
――今、改めてそれを理解した中でどんなお気持ちですか?
勸玄:ええ? 知らなかったです。でも『毛抜』は最年少でうれしいなと思っていたんですけど。『貴甘坊』はお父さんも(初お目見えの時に)やられていて、早口と…。『貴甘坊』という役は、早口と立ち回りしかやらないんですけど『曽我五郎』というものは全てやって、敵討ちをしようと『外郎売』に変装して敵討ちに来ているんですけれど、それを最年少でやれるのはうれしいです。
■9歳の歌舞伎俳優 「プレッシャーはない」
インタビュー現場では緊張していない様子で、見得を実演をしてくれた勸玄さん。最年少で挑戦するという演目をどのように感じているのでしょうか。初舞台を踏む意気込みを伺いました。
――9歳という最年少で挑戦するっていうことにプレッシャーはないですか?
勸玄:プレッシャーっていう言葉はどういうこと?
海老蔵:プレッシャーっていうのは大変だなとか、何かこう気持ち的に負けちゃうかもしれないな~みたいな。
勸玄:ないです。
――“外郎売実は曽我五郎”の役は、今のお稽古時点で何パーセントぐらいまで仕上がっていると思いますか?
勸玄:う~ん、でも結構…79パーセントくらい
海老蔵:79パーセント?
勸玄:うん
――残りの21パーセントはどんなところですか?
勸玄:最近は言えてきたんですけど、台詞の『時致(ときんね)』を『ときむね』って言っちゃうんですけど、そことか。あとはちょっと立ち回りの振りとかがちょっと甘いなと。形の決まりとかが……
海老蔵:台詞に歌舞伎なまりがあるんですよ。だから自分の役名は“曽我五郎時致(そがのごろうときむね)”なんですけど、歌舞伎なまりで『そがのごろう “ときんね”』になるんですね。そういう歌舞伎のなまりは“粂寺弾正”もあるし“福山かつぎ”もあるし、“外郎売”もあるんですね。そういう歌舞伎玄人的なところが、今次の段階になっているようです。