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「先にあったものの中に、後から行ったものが溶け込んでいかなきゃいけない」 宮崎吾朗監督が語るジブリパークへの想いとは

2023年11月2日 20:00
「先にあったものの中に、後から行ったものが溶け込んでいかなきゃいけない」 宮崎吾朗監督が語るジブリパークへの想いとは

去年の11月1日、愛知県長久手市にジブリパークが開園した。それから丸1年が経過した今年の11月1日には4つ目のエリアとなる「もののけの里」がオープン。「もののけの里」オープン当日の盛り上がりを伝えていたテレビ中継の前を偶然通りかかったのは、ジブリパークのデザインを監修した宮崎吾朗監督だった。カメラを向けられ、新エリアの出来映えを聞かれた吾朗監督は「とってもよくできたと思います」と穏やかな笑顔で答えると、五平餅を食べに行くといって新エリア内に消えていった。 実はこの数時間前、吾朗監督にインタビューを行っていたのだが、そこで語られたのはジブリパークへの想いだった。

「施設が主人公じゃない、それがすごく気持ちいい」宮崎吾朗監督が語る新エリアの魅力

新エリアのオープンに先立って行われた開園記念式典のスピーチで、「もののけの里」が一番気に入っていると語った吾朗監督。映画『もののけ姫』に登場する里山の風景をイメージしたエリアというだけに、どこか懐かしい郷愁を覚える雰囲気が漂っているが、ここには吾朗監督のどのような想いが込められているのだろうか。

宮崎吾朗監督:
「元々ある風景にどうやったらなじむかっていうのが最大のテーマでした。ここにはサトラボっていう里山施設があって、10年以上かけてコツコツと畑をやり田んぼをやりっていうふうに育ててきた場所です。その周りには森や林もある。その隣に作るってなると、先にあったものの中に、後から行ったものが溶け込んでいかなきゃいけないと思うんですよね。逆に言うと、後から作ったんだけど、周りがいてくれるおかげで良く見えるっていうこともあるわけで。そういう意味では、とても上手くいったんじゃないかなと思っています」

元々あった公園施設をそのまま使うのがジブリパークのこだわりではあるが、「もののけの里」は、そのこだわりが最も強く表現された場所なのかもしれない。だからこそ、吾朗監督は一番好きな場所として挙げたのだろうか。

宮崎吾朗監督:
「ただ風景の中にいるっていう感じになれるところがいいんです。いわゆる箱の施設が主人公じゃない感じがするので、それがすごく気持ちがいい。開放感のある場所になっているんじゃないかなと思います」

青々とした田んぼに囲まれる夏、木々が色づく秋、草屋根に降り積もる雪。風景に溶け込んだエリアからこそ、これから季節が移り変わるごとに違う表情を見せてくれそうだ。

来年3月オープンの「魔女の谷」こだわりは映画の世界を忠実に作り上げた再現度

「もののけの里」の注目度が高まる一方で、来年3月にオープンする「魔女の谷」にも期待が寄せられている。このエリアには『魔女の宅急便』の「オキノ邸」や「グーチョキパン屋」、『ハウルの動く城』の「ハウルの城」などが登場する予定だ。すでに9割程度完成しているそうなのだが、このエリアを作るにあたり吾朗監督がこだわったのは再現度だという。ベッドからタンスから、その中に入っている洋服から、すべてが驚くほどの再現度になったと自信を見せた。それだけにとどまらず、劇中では描かれていない部分にまでこだわりがあるようだ。

宮崎吾朗監督:
「『魔女の宅急便』の劇中で、キキがご婦人の家の薪釜でパイを焼く手伝いをして「お母さまの仕込みがいいのね」って言われるシーンがあるんですよ。そうすると、たぶん薪を使ったオーブンを使った経験があるんだろうということで、キキの実家(オキノ邸)のオーブンは、キッチンストーブにしたんです。ガスレンジではなくて。そういうのも全部使えるように作ってあるんです」

ジブリ作品ば劇中に美味しそうな食べ物が登場するが、そちらの再現度はいかがなものか。吾朗監督に尋ねると、「魔女の谷をイメージした食事やスイーツを楽しんでもらえる」としながらも、具体的にどんな商品なのかは、笑顔を浮かべて明言は避けた。

吾朗監督の想いが込められたジブリパーク。来年3月の「魔女の谷」オープンに向けて、ますます目が離せなくなりそうだ。

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