山田洋次監督 92歳、寅さん55周年イベントで日本を憂う 「幸せな方向に向かっているのか」
イベントで客席のファンから、“シリーズが始まった55年前と現在で変わったこと”を聞かれた山田監督は「この国の人たちは元気だった気がするの、50年前は。小さいお店がいっぱいあって、みんなちゃんと商売が成り立っていた。魚屋さんとか八百屋さんとかお肉屋さんとかね。それが今ほとんどなくなってしまったよね。小さい商店がね」と懐かしみました。
さらに、「(今は)寅さんたちのような商売は全く成り立たない。寅さんの商売っていうのは、ちょっとインチキくさいんだよ。要するに観客も、多少わかってんだよね。こいつの口上で楽しませてもらったんだから。少々インチキだろうけど、まあいいや、ちょっと買って帰るかと。そういう緩やかさが50年前はまだあったような気がしてしょうがないね」と映画でおなじみのシーンになぞらえて語りました。
一方、現代の日本については「僕は本当に気に入らないんだけど、コンビニで買い物してもお金払うと『こっち入れてください』って。何か機械に入れて、ボタンを押さなきゃいけない。僕なんて老人だからもう、おろおろしながらね。面倒くさい。お前がちゃんとおつり出してくれればいいじゃないかと思うのね」と不満を吐露。
続けて「そういうね。面倒くさい負担をお客さんたちにさせておいて、しかも味気なくなってくというか、人間関係が。やりとりがなくなってきちゃってね。はい。“どうもありがとう”を含めて“お元気”とか“近頃どうしてますか”みたいな会話はまるでなくなりつつある」とさみしそうにコメントしました。
そして「どんどんこれからもそうなっていくだろう。お店自体がなくなるだろう。あの通信販売なんかになるとね。だから僕たち日本人は本当に幸せな方向に向かっているのかなということをとても今、感じますね」と思いを明かしました。
最後に、観客たちに向けて「すてきな夜でした。僕にとっては本当にその皆さん来てくださって、本当にありがとうございました」と感謝を述べました。