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平泉成、80歳で映画初主演「この仕事がすごく好き」 俳優キャリア60年で貫いてきたこと

2024年6月8日 7:40
平泉成、80歳で映画初主演「この仕事がすごく好き」 俳優キャリア60年で貫いてきたこと
俳優キャリア60年を迎えた平泉成さんにインタビュー
俳優キャリア60年、そして80歳となった平泉成さんにインタビュー。映画『明日を綴る写真館』で初めて主演に挑戦した平泉さんに、映画のテーマでもある“人生の想い残し”や、これまでの俳優人生、そして今後挑戦したいことを伺いました。

■平泉成「僕は多分、想い残しだらけの人間」

映画『明日を綴る写真館』(現在公開中)は、あるた梨沙さんの同名漫画を原作にした作品で、誰もが抱えている人生の“想い残し”をテーマにした物語です。平泉さんは、さびれた写真館を営む無口なカメラマン・鮫島を演じました。鮫島は、カメラマンと被写体という関係を超え、人々の抱える悩みや問題のために必死に奔走します。

――映画に出演したきっかけを教えてください。

台本を読ませていただいて、このカメラマンのおじさんは僕の発想に非常に近い形で人生をやっている人だなと思って。こだわりが強いというかね。涙もろいところも全部、自分に似ているなと。これならできるかもと思ったんですよね。

――今作のテーマは“想い残し” 平泉さんにとっての想い残しはありますか?

僕は多分、想い残しだらけの人間なんです。失敗ばかりしてきましたので、その失敗がいい勉強になって今日に至っていると思うんですけど。想い残しは、親が自分のことを心配してくれたんですけど、自分が活躍できるようになった時にはもう両親は他界していませんでした。自分がもう頑張っているから大丈夫だよ、という姿を両親に見せてあげられなかったっていうのが想い残しです。映画で主役を1回もやらせてもらえなかったんですけど、その想い残しは今回、この作品で成し遂げられましたのでね。

■俳優キャリア60年 初めての主演は「大事に大事にしてくれる」

平泉さんは、1964年に『大映京都第4期フレッシュフェイス』に選出され、1966年に『酔いどれ博士』で映画デビュー。俳優キャリア60年を迎えた平泉さんは今回、映画『明日を綴る写真館』で初めて主演に挑戦しました。

――初めて主演を務めてみていかがでしたか?

非常に楽しかったです。みんなが僕を真ん中に置いてくれて、大事に大事にしてくれますのでね。こんな経験は初めてでした。非常にうれしかったです。いい気持ちでした、毎日。

――演じる上で、主役とそれ以外では何か違いはありましたか?

芝居をすること自体は同じなんですけどね。同じようにやりたいなと思って、いつもやっているけど、主役が目の前か横にいつもいらっしゃるところで仕事をさせてもらってきたんですよね。それが今度は自分が先頭に立って演技するというポジションが全然違いまして。だけど、今回はみんながやってくれるんです。僕が率先して芝居をしなくても。そんな状況の中心でやらせてもらえて、みんなが力を貸してくれるから、ある意味では“楽だったな~、仕事がやりやすいな~”と思えました。

数々の映画やドラマなどに出演、さらにナレーターなど幅広く活躍してきた平泉さん。失敗や挫折なども経験し、それを乗り越えてきた平泉さんにとって“演じること”、そして“貫いてきたこと”を伺いました。

――平泉さんにとっての演技・芝居とは?

“日常”なんですよね、芝居をする。夢のないことを言っちゃえばお金を稼ぐ。夢やロマンはちょっと横に置いて、“これで学費を稼ぐぞ”と“これで家のローンを払うぞ”っていう。そのためには、こんな仕事もしようこんな仕事もしよう。もう1本やろうと思いながらやってきて、いつの間にか夢やロマンはどこか遠くに忘れちゃってきていましたね。俳優としてはさみしいんですけど、そんな感じで俳優の仕事をやってきたんでしょうか。

――60年の俳優キャリアの中で貫いてきたことはなんですか?

土足でガンガンと、よそ様の家のリビングに上がり込むような芝居はしたくないなと。よそ様のお宅に行くのにピンポンして、(玄関の戸を)ガラガラっとして。「こんにちは」と「お邪魔します」って言って、靴を脱いでそろえて、「どうぞ」って言われたら部屋に上げてもらう。そういう芝居をしたいなと。それだけはどんな仕事をやるときも心がけてきたつもりだったんですよね。下品になり過ぎないように、ということはいつも注意していました。

■俳優としてのこれから「生涯の仕事としてやっていきたい」

――俳優として挑戦し続けられるモチベーションは何でしょうか?

この仕事がすごく好きだったということと、悔しさですかね。悔しいなと思って、それを乗り越えたいと思って。とにかく時間はかかっても、コツコツやっていけばいつの日かこんな(主役を演じる)日が来るかも分からないと。それまで、とりあえずやっている以上は頑張ってやろうと。そんな感じでやってきました。

――今後、さらに挑戦していきたいことはありますか?

役者ですからね、主役じゃなきゃいけないってことじゃないんです。だから、主役もですけど、脇役も大切なところでやってみろってお話をいただけたら、色んなものにチャレンジしていきたいなと。人生100年時代ですからね。倒れるまでは、この仕事を生涯の仕事としてやっていきたいなと思っています。