×

『進撃の巨人』『劇場版 呪術廻戦 0』脚本家・瀬古浩司に聞く アニメ脚本は家造りに例えると“設計図”

2022年10月19日 22:35
『進撃の巨人』『劇場版 呪術廻戦 0』脚本家・瀬古浩司に聞く アニメ脚本は家造りに例えると“設計図”
人気アニメ作品の脚本を手がける瀬古浩司さん
アニメ『進撃の巨人』や2021年公開の『劇場版 呪術廻戦 0』など、人気アニメの脚本を担当する脚本家の瀬古浩司さんを取材。“アニメ脚本”の裏側や瀬古さんが脚本をする上で大切にしている思いについて話を聞きました。

瀬古さんは、アニメーション制作会社・ガイナックスに入社し、その後フリーで活躍。これまでアニメ『残響のテロル』『呪術廻戦』『BANANA FISH』など数多くのアニメ作品や佐藤健さん主演映画『亜人』で脚本を担当してきました。

――“脚本”とはどのようなことをする仕事ですか?

僕がやるのはマンガの原作の作品が多いんですけど、マンガって紙に書かれているじゃないですか。それを最終的にアニメの映像にしないといけないので、第1段階でマンガの絵と文章で描かれているものを、まず文章だけに全部するんです。その後で絵コンテっていう作業がアニメは絶対入るので、その絵コンテを描くための基になるものというものが脚本です。

――“アニメ脚本”の具体的な仕事は?

テレビシリーズの場合は、まずシリーズ構成をつくるんです。例えば、1クールのアニメだったら全部で12話あるんですが、その12話で「原作漫画のここからここまでやります」となった場合、(原作の)ここからここまでを12話のアニメ話数に分ける。そして「1話はここからここまで、2話はここからここまでやります」っていうように12本分作るのがシリーズ構成っていうものです。そして脚本は、大体30分のテレビ放送枠だったら本編って20分くらいになので、それを開始0秒から20分までのすべての流れを文章で書くというのが脚本ですね。

――アニメーションのほかにも映画、ドラマなど脚本が必要なものがありますが、脚本の作り方に違いはありますか?

アニメの場合は絵コンテを一回書かないといけないので、脚本ですごく細かいところまでト書き(人物の表情や行動、場所の状態などカットの内容を補足した文)で描写するっていうことをやらないといけない。ただ実写の場合だとあんまり細かくト書きを描き過ぎると実際生身の俳優さんが動いてやるので、ト書きをくわしく書かないっていう違いはあるかなとは思います。

――脚本を書かれる前に行うことは何ですか?

マンガはもちろん読みます。また原作者の方との打ち合わせも事前にやります。だいたいシリーズ構成を作った段階で一回原作者の先生に見せて話し合うっていう感じです。

――その段階で、修正、変更の提案や要望などが入ったりしますか?

先生によって全然違いますけど、ほとんど何にも言われない先生も「もう全部お任せするよ」という方もいるし、「ここは原作ではこういうふうになっていたけど、アニメにするときはちょっとそれ変えてほしい」とかさまざまですね。

――瀬古さん側から相談をしたりすることもありますか?

ありますね。紙に描かれているマンガに比べてアニメって実際に絵が動くんで、全然情報量とかも変わってくるんです。アニメ用に翻訳するっていうか。ただ細かいところとかはもう相談せずに書いて見せて「どうですか?」という感じでやります。すごく大きく変更する場合は、事前に原作者の先生に編集さんを通して「ちょっとここをこういうふうにしたいんですけれども」というのは相談をします。

――脚本を書かれる時はパソコンですか?

そうですね。パソコンです。自宅で書いた脚本を送って、それをもとにシナリオ会議っていう打ち合わせをみんなで集まってするっていう感じですね。あとは、スピーカーでいつも音楽聴きながらやっているので。聴くっていうよりかは流してるっていう感じですね。

■脚本家に至るまでの道のり きっかけは留学先の“レンタルビデオ店”

――アニメ-ションの脚本の仕事をしようと思われたきっかけは?

もともと僕、実写の映画がすごく好きで実写の専門学校へ行っていたんです。専門学校に3年行ったんですけど向いてないなっていうのがあって、そこから就職するまでの間に海外に留学していたんです。オーストラリアの田舎町みたいなところに住んでいたんですけど、そこのレンタルビデオ店行ったら邦画ってほとんど置いてないんです。けどアニメのコーナー行ったらものすごい数が置いてあるんですよ、『ドラゴンボール』とか『ポケモン』とか。「こんな世界の片田舎まで日本のアニメって届いているんだな」っていうふうに思って、日本へ帰ってきたときにどこか就職しないといけないので、じゃあアニメ(業界)へ行こうと思ってアニメの会社に入りました。最初は監督とかも目指していたんですけど、僕絵も描けないし、アニメの演出ってホントすごく難しいことやらないといけないんですね。これちょっと僕には無理だなと思って、じゃあ脚本をやろうっていうすごい行き当たりばったりの感じで脚本をやることになりました。

――文章を書くことは好きでしたか?

小学生の頃、作文とかすごく嫌いだったので、あんまり自分が文章を書くみたいな仕事に進もうとは思ってなかったですけど、何か物語を考えるのとかそういうのは好きだったんで、自然とその脚本の方に目が向いたっていう感じです。

――これまで担当された作品の中で印象的な作品はありますか?

印象に残っているのは『BANANA FISH』(2018年)です。原作がもう完結していて、すごく伝説的な作品で、本当は4クールぐらいないと入らないんです、全部。ただいろんな都合があって「半分ぐらいの話数でやってくれ」って言われて、そうするともう4割ぐらいは原作もカットしないと絶対入らないんです。でもものすごくいっぱいファンもいるし、どこを落として、どういう骨組みにするかっていうのは、監督と毎週会ってシナリオ会議して1行ずつ見ていって「このセリフはちょっと削ろう」とか、それを1年ぐらい毎週やっていて。個人的にすごく好きなシーンとかって「落としたくないな」と思いつつ、でもやっぱり作品のことを考えると落とさざるを得ないっていうところは結構あったりして、あれは本当に今でも印象に残っています。

■アニメ制作を家作りに例えると脚本は“設計図”

――瀬古さんが脚本を担当される上で大切にしていることはなんですか?

どの作品にも共通するんですけど、原作があって、これをアニメにする上で“もっともこの原作の魅力を引き出すにはどうしたらいいか”“この原作を最も面白くアニメにした時に一番面白くなる形は何か”というのは大前提、そこから出発ですね。シリーズ構成でも1話をどこからどこまでにするかっていうのがある程度は決まってくるんですけど、もうちょっと先まで行くかとか、もうちょっと手前で切るかとかによっても全然変わってくるので、あとはまだ原作が完結してないもので、12話でどこまでやるかとか、そういう総合的に判断するというか、一番見た人が満足を得られるにはどうしたらいいかというのはどの作品でも共通して考えます。

――やりがいを感じる瞬間はどのような瞬間ですか?

世に出てお客さんが楽しんでくれた時が一番ですね。本当に実感として得られるので。あともう一つは、原作者の先生が喜んでくれるっていうのも僕はうれしいです。(原作者に)「紙に書かれていた原作がアニメーションになって脚本の力でこういう面白さがこの作品にはあったんだっていうのを再発見しました」みたいなことを言われた時はすごくうれしかったです。

――瀬古さんにとって“脚本”の仕事とは?

アニメを作るのが家を造るっていうことに例えると(脚本は)“設計図”を描く。もともと一番のおおもとになるのが脚本なので、それでその家がどういう家になるのかっていうのがある程度わかっちゃう。すごく責任重大ではありますけど、やっぱり僕はそれがすごく面白いし、やりがいがある仕事だと思います。

――脚本家を夢見る方にメッセージをお願いします。

僕はすごく楽しい仕事だなと思っていて、僕自身性に合っているっていうか、朝起きてから20分後ぐらいには仕事を始めるんですけど。満員電車とか乗らなくていいし…とか言ったら怒られちゃいますけど(笑)本当に楽しい仕事なので興味がある人はぜひトライしてほしい、トライするだけの価値がある仕事だと思います。