商品価値の無い「磯焼けウニ」を高級食材へ育てる 豊かな海を取り戻す企業の挑戦 大分
大分県内の沿岸部では今、海藻が生い茂る「海の森」とも言える場所が減っています。
豊かな漁場を育み、多様な生態系の象徴でもあるこの「海の森」を守ろうと、国東市の企業では新たなビジネスに挑戦しています。
海中に広がる岩場。海藻が全く生えておらず、岩肌がむき出しになっています。「海の森」とも言える藻場が消滅する“磯焼け”です。いま、各地で問題となっています。
原因のひとつがウニの大量発生。地球温暖化などによる環境の変化が原因で、海藻はウニによって食べつくされてしまうといいます。
「海の森」の再生のために必要なのがウニの数を減らすことです。
ただ、磯焼けした海に生息するウニは身入りが悪く、商品価値が無いため、獲ったとしても「売り物」にはなりません。
こうした課題を解決し、豊かな海を取り戻す。そんな挑戦する会社が国東市にありました。
◆大分うにファーム栗林正秀社長
「こういった形で水槽にウニが住んでいる。大体うちに入ってきてから2か月から3か月、ここで飼育をして美味しい身を詰めて出荷をしている」
大分うにファームが取り組んでいるのは商品価値の無いウニを高級食材に変えることです。
こちらでは身入りが悪いムラサキウニを県の内外から買い取って施設の水槽で育てています。
◆大分うにファーム栗林正秀社長
「これがウニを美味しくするエサ。海藻が主成分で作られたウニの大好きなエサ」
獲ったばかりのウニと比べるとその差は一目瞭然。
2~3か月ほどで出荷できるようになるといいます。
その1サイクルで出荷できる量はおよそ2.4トン。
今では東京や福岡の高級寿司店などで提供されるようにもなりました。
しかし、ここまでくるには多くの失敗があったと栗林社長は振り返ります。
◆大分うにファーム栗林正秀社長
「(創業した)2017年からきょうまでいろんなトライアンドエラーをしていき、失敗例、成功例を短時間で共有できた。こういったことが我々の今の成功につながってきているんだと思っている」
高級食材へと生まれ変わったウニのブランド名は「豊後の磯守」。栗林社長の古里・大分の海への思いが込められています。
◆大分うにファーム栗林正秀社長
「私達はウニをもちろん販売する会社ではあるが、ウニだけを販売する会社ではなくて、名前の通り、豊後の磯守、磯を守るウニを食べてもらう人たちも自身がこの海を守る。海を守る活動につながる。1人1人が貢献できるような商品として送り出している」
「磯焼け」という環境問題を解決しながら、ビジネスチャンスにもつなげる大分うにファーム。豊かな海を未来へと残すため、今後も進化を続けていきます。