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国立印刷局「工芸官」の職人技……新紙幣に込められた150年受け継ぐ“超絶技巧”とは『every.16時特集』

2024年11月9日 18:24
国立印刷局「工芸官」の職人技……新紙幣に込められた150年受け継ぐ“超絶技巧”とは『every.16時特集』

20年ぶりに発行された新紙幣。この製作を担った国立印刷局所属の「工芸官」は、紙幣のデザインや彫刻など、専門的な技術をもった職人たちです。手作業にこだわる理由、そして次の世代に継承する取り組みとは…。今回、特別に取材を許されました。

■20年ぶり新紙幣発行「お札誕生祭」

東京工場会場内。10月、都内にある国立印刷局の工場で行われていたのは、「お札誕生祭」と名付けられたイベント。子どもたちは、新しい紙幣の仕組みに興味津々です。

少年
「これ、時計が何時か、一瞬見えるんだよ。10時10分」

また、お札の原料である「紙」を作る体験も。

子どもと参加した母親
「3Dホログラムとか、新しくなった技術を(子どもと)一緒に見たりしました」

子どもと参加した母親
「子どもに(紙幣を)よく知ってもらいたいなって」

20年ぶりの発行となった、新しい紙幣。

■紙幣の偽造防止のために…

この新紙幣、国立印刷局の「工芸官」と呼ばれる職人たちが、手作業でデザインや製作を行っています。一体どんな人たちなのか?

今回、私たちは特別に、工芸官への取材を許されました。しかし…

印刷局の職員
「顔と名前はNGでお願いします」

紙幣の偽造につながらないよう、身元が特定される取材はNG。工芸官は、紙幣以外にも、切手やパスポートなど、さまざまな製品を作っています。

■さまざまな技術を受け継ぐ工芸官

その中でも紙幣は、大本の設計図にあたる「原図」のデザイン。紙幣に描かれる肖像や建物などの「彫刻」。中心部などにある「すかし」の製作。そして紙幣全体に施された、細かい「幾何学模様」のデザイン。

それぞれを専門的な技術をもった工芸官たちが担当しています。

今回取材した工芸官は、肖像などの彫刻の部分の製作を担当しました。話を聞いたのは、16年目の男性工芸官。

■新紙幣担当「手彫り」を極める工芸官

工芸官
「我々は線でなく、点でこのように…」

記者
「点で描くんですか?」

工芸官
「点を打っていくことで、ものの形を表現していきます」

肖像の細かな「陰影」を正確に表現するために、「点」で描きます。複数枚の写真を参考に、その人物が一番活躍していた年齢をイメージして描くといいます。

次は、コンテ画の肖像を金属板に彫る作業。特注のルーペをのぞき込みながら、特殊な彫刻刀で慎重に線を彫っていきます。

カメラマン
「これ以上(カメラが)寄れないな…」

記者
「すごい細かい金属片が削られていっているのが確かにわかる」

1ミリの幅に10本以上引けるという、細い細い線。

紙幣の彫刻を担当 工芸官
「太い輪郭の線は、何十回も同じところに(彫刻刀を)通すことできれいに整えて」

繊細な作業のため、紙幣などの彫刻には、数か月単位の時間がかかるといいます。

■受け継がれる“手作業”の理由

こうした技術は、明治時代から約150年もの間、受け継がれてきました。

デジタルなどの技術が進歩する中、なぜ手作業にこだわるのか?そこにはこんな理由が…

紙幣の彫刻を担当 工芸官
「(工芸官)それぞれの個性が絵柄に表れてきます。そしてその個性というのは、もう一回作ろうとか、複製しようとか、本人でさえ難しいものがあります。そこに偽造防止技術としての役割があると思います」

工芸官の持つ高度な手彫りの技術が、紙幣の偽造防止にも大きな役割を果たしていたのです。

工芸官
「レジで自分の携わったものたちを使う時がすごくうれしかった。(手に入れた時は)来た!と。喜びがすごかったですね」

■紙幣に込められた“超絶技巧”

こうした工芸官の技術を、次の世代に継承する取り組みも。2年前から始まったのは、全国の美術系の大学で工芸官たちが彫刻技術を教える「特別講義」です。

工芸官
「最初は(板と)平行くらいですーっと(線を)引いてあげる。削りかすが見えるか見えないかくらい」

普段、版画の彫刻に取り組む学生たちも、紙幣に込められた“超絶技巧”を実感。

参加した学生
「(お札の)あの小さな平面の世界に、技術がこれでもかというくらい詰まっているなと」

■若手工芸官の「一番特別なもの」

さらに工芸官たちの中にも、“次の紙幣”を担当するかもしれない若手が育ってきています。話を聞いたのは、入局5年目の女性工芸官。先輩の指導を受けながら、日々腕を磨いています。

工芸官
「上手なんですよ、ホントに」

若手工芸官
「いつも褒めてもらって…褒められて、伸びています」

工芸官が携わる製品の中でも、紙幣は「一番特別なもの」だと感じているといいます。

若手工芸官
「先輩方がいるうちに、私も同じように(将来)お札に携わっていく身として、技術を身につけないとなと思っています」

工芸官
「より良いもの、国民の皆様により良いものを使っていただけるように、日々努力してほしいなと」

およそ20年後にあるかもしれない、“次の紙幣”の発行。

記者
「次、20年後(かもしれない)ですけど、やりたいという思いは…?」

若手工芸官
「もちろん、やりたいと思っています」

次の紙幣に向けて。工芸官たちの技術は受け継がれ、進化していきます。

(11月7日『news every.』16時特集より)

最終更新日:2024年11月16日 19:57
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