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【解説】追加利上げどうなる? 日米の政治の影響は

2024年10月31日 17:14
【解説】追加利上げどうなる? 日米の政治の影響は
日本銀行は金融政策決定会合で、政策金利を現在の0.25%で据え置くことを決定。

今後の日本の政治情勢や、来週に控えた米大統領選は、次の利上げにどう影響してくるのか。経済部・宮島香澄解説委員が、植田総裁の会見を読み解く。

■植田総裁会見のポイント

──金融政策決定会合は、たった今植田総裁の記者会見が終わりました。どんな内容でしたか?

宮島:政治の先行きが不透明な中で今回、政策変更をするという予測はほとんどなかったんです。そんな中、次の金利引き上げにむけてどんなことをいうのか、利上げにとても前向きに見えると株価が落ちるかもしれない、当分なにもしないと見えると円安が進むかもしれない、そんな中でまあ落ち着いた会見だったと思います。

会見のポイントです。

金融政策は現状維持です。今回は展望リポートで日銀の見通しが示されましたが、消費者物価は来年度1・9パーセントプラス。これは前回より引き下げられましたが、エネルギー価格が下がる分です。それ以外、成長率や物価の見通しはあまり大きくかわらないという見通しでした。

そして今、政権がどうなるか不透明なので、記者から政治に関わる質問が何回も出たんですが「政治にはコメントしない」ということです。

今回の会見で注目されていたのは、「時間的余裕」という言葉を今回も使うかでしたが、使いませんでした。市場がこの単語に過敏になっていて利上げの判断のキーのように見られていましたが、使わず、この単語は8月に、アメリカの経済がリスクが高まっていたときに見極めが必要だった時に使ったということです。今後はこの単語は使わないと話しました。

そのかわりに今回は、「海外経済の動向を注意」という言い方をしました。引き続き見極めが必要だということです。日銀は日本の政治の影響があるからとは、なかなか言えないんですが、海外の動向の影響に少し寄せた説明の仕方です。日本の経済は日銀の見立てにそって進んでいて、賃金については伸びが続けばよい動き、と。このままいくと、状況が整えば利上げができるという方向の話でした。

■総裁会見をうけた円相場は

──総裁会見をうけて、円相場はどうでしょう?

宮島:たった今が、152円44銭ですね。総裁の会見が始まったときが152円88銭から90銭ぐらいでしたので、少し円高に向かっています。

おそらく、「時間的余裕」という言葉に注目をしていた人たちが、前回より利上げに対する慎重さが薄れた印象を持ったと思います。すごく慎重に見えてしまうと、ここのところ続いてきた円安傾向にさらに一気に行きかねなかったので、はずして別の表現にしたと。少し円高になったので、落ち着いて受け止められたかなと思います。

■今後の金融政策のカギは?

──今回の日銀の決定会合は選挙のすぐ後とあって、政権や政治は金融政策にも影響しますよね?

宮島:はい、日銀は政治が影響しますとは言いませんけれども、独立してるとはいってもやはり政府と一緒にやっていく立場です。

ここから影響するポイントです。日本中が今注目している、どんな政権ができるのか。もし石破さんがこのまま総理を続ける場合、石破さんは金融の正常化には理解はありながらも、野党の姿勢も無視できません。国民民主党は、利上げには慎重な発言をしています。

また、近く、かなり大きな規模の経済対策が考えられています。政権の力は弱くなると、歳出を増やす圧力も増えがちですが、日銀の金融政策が全然違う方向を向いてしまってはいけません。さらにこれまで通り、円安が進むかどうか、物価や株価はカギになります。

これを別の形で見ますと、こちら左側が、利上げに慎重になる要素。政権にとって、景気や株価が落ち込むのは避けたい。石破さんは地方を大事にすると言っていて、中小企業の業績を心配する声は耳に入っていると思います。また金利を上げますと、変動型の住宅ローンの金利が変わる。一般の住宅ローンを借りている人にも影響が出ます。今の状況は慎重に見る立場がとられやすく、しばらく前に比べると金利を上げる予測は後ろ倒しになったかなと見られます。

ただ、こちらの右側の要素、もしも円安がさらに進み、輸入物価など物価があがってくると、一般の人でも「この円安、何とかしろ」となります。その場合は、為替をターゲットにはしない日銀であっても、金利をちょっと早く上げてという空気がでるかもしれない。でもきょうは円高が進みましたから、今はこちらが大きいです。

■アメリカ大統領選の影響は?

──来週はアメリカ大統領選を控えていますけれども、金融政策を考える上ではアメリカも重要ですよね?

宮島:はい、誰が大統領になるか、これはもう世界中のあらゆることに影響します。金融政策では、トランプ氏が大統領になった場合には、インフレに繋がるような政策が多くアメリカの金利が上がる方向でドル高円安になるが可能性が高いです。

ただ、要注意なのはトランプ氏は、ドルが強いことがアメリカの経済に良くないと発言しています。あるとき突然、ドル安に向かうような国際間の合意など、ひっくり返すような可能性もないわけではないです。ハリス氏の場合は、今の投資家がトランプ氏と思って行動していれば、逆向きの円高になるかもしれません。

■追加の利上げはいつ?

宮島:この先、日銀はできれば早いうちに中立金利に持っていきたい。でも今の政治状況を見ますと、金利を上げる、正常化するタイミングは後ろにずれたかなと思います。普通は年内に組まれる来年度予算案も年内におさまらない可能性すらある。そんな中、12月の決定会合で金利を上げるというのはなかなか難しいという見方が広がっています。状況が整ったときに1月かな、と。

日本もアメリカも、政治の状況が微妙なところで動いている時期ですので、次の決定会合までにもいろいろ見極めたいと思います。

最終更新日:2024年11月1日 1:55
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