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衝撃のマイナス成長!GDP予想外れたワケ

2015年1月3日 22:37

 蓋を開けてみれば衝撃の数字だった--消費税率を2015年10月に10%に引き上げるかどうか、その重要な判断材料とされたのが、2014年11月に発表された7月から9月のGDP(=国内総生産)速報値だ。

 民間のシンクタンクなどの予想では実質GDPはおおむね前期比年率換算でプラス2%前後。しかし、発表されたのは、まさかのマイナス1.6%。驚いたのは記者やエコノミストだけではない。NNNは官邸で、安倍首相の経済政策のブレーン・本田内閣官房参与を取材していた。テレビの速報を見つめ、「あー、マイナス1.6…これはすごい数字ですね。あー、いやー驚きました」-誰もが驚いたに違いない。同時に「なぜこんなに予測が外れるのか」と疑問を持った方も多いに違いない。

 そもそもGDPとは、一定期間の間に国内で作り出されたモノやサービスの付加価値の合計だ。内訳は個人消費、企業の設備投資、公共事業、輸出、輸入、住宅など、日本の経済の力が一番わかる数字とされる。2014年の1月から3月は消費増税の駆け込み需要で大幅プラス、4月から6月はその反動減で大幅マイナス。しかし、雇用は統計上、良い数字が出ている。大企業を中心に給料を上げるとも言っている。だから7月から9月はさすがに前期よりプラスになるだろう。これが、日本中のほとんどの専門家の予測だった。

 では、なぜマイナスだったのか。個人消費の予想以上の落ち込み、設備投資の伸び悩みも大きかった。だが、予測できなかった「重要な要素」がある。それは「在庫」だ。例えば、ある企業が自動車の在庫を大量に抱えていたとする。在庫を処分するには、新たに自動車を作るのをやめて在庫を取り崩すことになる。4月から6月まで、日本は在庫を大量に抱えてしまった。駆け込み需要の反動減でモノが売れなかったからだ。その結果、7月から9月まではモノを生産するより在庫をさばくことを優先した。これが大きく影響してGDPがマイナスとなってしまったというわけだ。

 では、なぜ在庫を予測できなかったのか。実は在庫は原材料、部品、製品、流通それぞれの段階を合わせると実に60品目に上るという。これを過去のデータも含めてかなり細かく計算するというのだ。この複雑な計算が大きな差を生んだのではと政府の関係者は話す。

 そして去年12月8日、GDPの改定値が発表された。改定にあたって最も参考にされるのは12月1日に財務省が出していた法人企業統計だ。企業の設備投資がわかる統計で6期連続のプラスという良い内容だった。GDPは「上方修正だ」と、ほとんどが予測していた。しかし、まさかの「下方修正」となった。予想は、また外れてしまった。

 そもそも1次速報の設備投資は企業がどれだけ設備投資をしたかという「需要側」のデータがない。よって、内閣府は設備投資のための機械や建物がどれだけ作られたか「供給側」から「需要側」を予測している。しかし、改定値は「データ」に基づく数値になる。当然ズレが出てくる。まず、大企業の設備投資の状況がわかる法人企業統計はプラスだったのだが、政府が思ったほどのプラスではなかった。さらに、大企業以外の小規模企業の設備投資を示すもう一つの統計、総務省が出している個人企業経済調査が予想より悪かったのだ。大企業も零細企業も設備投資は思ったほど伸びていなかった。これが下方修正になった理由だ。

 あるエコノミストに率直に「敗因」を聞いてみた。まずは1次速報の「敗因」について。「確かに在庫については明確な根拠がなく、大胆な予測ができなかった」。そして改定値の「敗因」については「法人企業統計を安易に信じてしまった」という。ただ、「消費税増税の影響は想像以上に大きい」とも話す。

 2015年の経済はどうなるのか。ポイントは消費税率引き上げの影響から抜け出せるかだが、そのための重要な要素が2つあるという。賃金、もう一つは市場の行方だ。賃金は、言うまでもない。消費税率が上がり、負担が増えた2014年度さえ過去最高益となった大企業がいくつもある。今は物価の上昇に賃金の上昇が追いついていないため、景気が上向いているという実感を得られない人達が数多くいる。しかし、2015年も企業側が賃上げの要求に応えられれば、物価の上昇に賃金の上昇が追いついていく可能性があるという。

 そして、賃金とともに重要になってくるのが市場の動きだ。特に円安と原油安が注目される。このところの円安は物価の上昇につながっている。一方、原油安は、私達の生活にプラスに働く。どちらの効果が優位に働くのか、これが2015年の景気をみるカギとなるとみられる。