佐山展生氏語る“企業再生の本質” 3/4
インテグラル代表取締役パートナー・佐山展生氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。3つ目のキーワードは「次なる支援先は4年連続赤字のアパレル大手、再生のカギは“ニッチな市場”にあった」。“再生できる会社”の特徴とは―。
■しんどい業界は、他社もしんどい
今年2月、大手アパレルのイトキンをインテグラルが約45億円投資し、経営を再建する発表をした。イトキンと言えば「MICHEL KLEIN(ミッシェルクラン)」や「HIROKO KOSHINO(ヒロコ・コシノ)」、そして「ELLE(エル)」など数々のブランドを展開している。
――経営がなかなか難しい状況にあったと思います。イトキンのどこに再生の可能性を感じたのでしょう。
私はイトキンを直接は担当していませんが、プロジェクトチームのいろんな話を聞くと、通常、業績が良くなくなった会社ってのは、原因がいくつかあるわけです。そのほとんどが、やるべきことや、当たり前のことをやってないということは結構多いですね。
例えば、ファッションの「ヨウジヤマモト」さん。こちらもプレパッケージの民事再生で、我々が手をあげさせていただいて、やるべきことをきっちり山本耀司さんとやって、最初の月から黒字にしました。
この業界自体が、しんどい業界ですよ。しかし、しんどいのは他もしんどいんでね。マラソンで言うと、坂道にきている状態なんで、他もふうふう言ってるわけですよ。チャンスなんで、ググッとアクセル踏んでいくと。
■再生のカギは“従業員のやる気”
――佐山さんの中では、今後どのように再建していくかというと、なんとなく道筋というのは見えている?
我々の特徴は、とにかく常駐で人を送るというのが他のファンドと違う大きな点なんですね。スカイマークも私以外に3名常駐していますし、イトキンも2名が常駐しています。彼らが日夜、そのイトキンの皆さんといろんな話をしながら、問題点を毎日毎日、解決していっていますので、遅かれ早かれ、皆さんが驚かれるような会社になると私は信じています。
その基本はですね、従業員の皆さんにやる気があることなんです。例えば、キャスターさんの今のお仕事、100ある力を100出してやられていると思います。そういう風な状態に従業員の皆さんがなったら、その会社は必ず再生するんです。
ですから我々の仕事は、決して業界の知識を使って、どうのこうのするのではなくて、投資先の従業員の皆さんのやる気、従業員の皆さんの働きやすい会社にするのが、仕事なんですよ。業界関係ないですね。それさえできれば、ほとんどできたようなもんなんですね。
■“いい人”が多い会社は強い
――佐山さんの中で、この企業は再生できるんじゃないかとかポイントはありますか。
まずひとつはですね、その現場に行った時に“いい人”が多いのは、必要条件かもしれません。自分のことばかりしか考えていない集まりっていうのは、何かあると、パッと散っちゃいます。そうではなく、会社のことを思って、一生懸命やっている“いい人たちの集団”っていうのは、方向性さえ間違わなかったら強いパワーなんです。
私が確信したのは、民事再生の申し立てをして、各支店まわったときにこれはいけると確信しました。これは昔、私が帝人の現場にいたときと近い。もの作りと近いんです。もの作りとか飛行機をきっちり飛ばすというのは、いい加減なことではできない。きっちりしないといけない。そういう人たちの集団だったからだと思います。
――人を見抜く力というのが再建のカギ?
基本は、第一印象なんです。第一印象が“いい人”が集まっているところがポイントです。