ベジタリア小池氏「科学で変える農業」4
ベジタリア代表取締役社長・小池聡氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。4つ目のキーワードは「ICTによる農業改革は始まったばかり。まずは異分野の英知を結集させることが大事」。その意味とは?
■現場に届かない研究成果
――まずは分野の英知を結集させることが大事ということですが、改めてこの「異分野の英知」というのは具体的にどういうことですか?
私が実際に農業をやってみて、日々いろんな壁にぶち当たるわけですね。これは、自然との戦いなので、やっぱり机上の理論通りにはいかないということなんです。
そのたびに専門の先生方にいろいろ聞きに行きます。植物の病気の専門の先生、あるいは植物生理の先生、土壌微生物の研究の先生とか、いろんな研究分野の先生がいて、すごくディープな知識と研究成果を持ってらっしゃるんです。
しかし、皆さんはやっぱり研究の目的やモチベーションが学会とか論文とかなんでしょうね。これだけ生産者が困っていても、現場にはなかなか研究成果が使われてないということがわかりました。
私は元々、ベンチャーキャピタリストというのを長いことシリコンバレーとか日本とかでやっていまして、これはある意味で異分野のものを組み合わせて新しい価値を作る、ということがキーなんですね。
そこで、私は人間ミツバチのようにですね、こっちの花の蜜が甘いぞと聞いたら吸いに行き、花粉をくっつけて、またこっちの花にいって受粉させてみたいな。それを今、いろんなお宝の研究成果を引っ張り出して、それを融合させて、実際の今の農業の課題、あるいはこれからもっといいものを収量も上げて高品質なものをなるべく環境に配慮しながら、作っていくというようなことをできるように、異分野をまとめあげるということを今やっております。
――それだけ研究成果があるのに現場に届いていないというのは驚きですね。
どうしてもそういう研究というのはタコつぼ化して、横串が通っていかないというのは、どの世界もあるとは思うんですけどね。
■「農業も最先端」であるという意識
――農業って結構高齢化が進んでいるっていうイメージもあるんですが、そういう意味では、やはりもっと若い方にというところはありますか?
おっしゃる通りですね。今、私どもは、新しい農業の教科書みたいなものを作る意気込みで、集約させてやっているわけですが、こういう新しいやり方を今既存の農家の方々に説明しても、なかなか限度があるんですね。
今平均年齢で66.7歳くらいでしょうか。農業従事者の方々にITだ何だかんだということを言っても、苦手意識のようなものがありますので、どちらかというとこれからは農業自体も最先端の産業だということで、もっと若い人たち、あるいは定年といってもまだまだ働ける人たちですから、そういう方々もどんどんチャレンジをして、活性化していくということが必要だと思っています。
ちょうどこの前、隠岐の島に行ってきたんですね。海士町に行って、私びっくりしました。今は、過疎化でどんどん人口が減っている地方が多いと思うんですけど、漁業・農業含めてですね、あそこはどんどんどんどん人口が増えてるんですね。
――私も実は取材で行ったことがあるんですが、たくさん若い人が都会から来て農業や漁業に携わっていたりして、本当に驚いたんですけれども。本当に遠いところなんですよね。隠岐空港に行って、またそこから船を乗り継いで、ちょっと交通の便が不便なところもあるんですが、それでもたくさんの人が集まってきているんですね。
そうですね。これからの新しい地方創生と言いましても、地方の資産・資源というのは、やっぱり農林水産業になると思いますので、そこで、それを中心にどう活性化させていくかということでは非常に成功事例として、海士町、隠岐の島あたりは、モデルになってくるんじゃないかと思います。