フューチャー会長兼社長兼グループＣＥＯの金丸恭文氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。２つ目のキーワードは「『え？　オレかよ！？』“門外漢”の農業の規制改革で座長を任命され…。しかし、「問題解決」の鉄則は同じ。」金丸流“問題解決”の手法とは？

　金丸氏は２０００年以降、政府の規制改革などに関わる会議に次々と起用されている。特に、第２次安倍政権発足以降、安倍首相のブレーンとして絶えず重要会議で民間議員を務めている。ＩＴベンチャーを得意とする金丸氏だが、２０１３年、政府の規制改革会議で畑違いの農業分野の座長に任命され、責任ある結論をまとめなくてはいけない立場に立たされた。


■電話がかかってきて「のけぞりました」

――農業分野の、しかも座長を任命されて最初はどう受けとめられましたか？

　第２次安倍内閣で規制改革がスタートしたときに、当初は農業ワーキングというチームはなかったんですね。半年ぐらいたってから、農業ワーキングが立ち上がることになりました。

　誰かがリーダーをやることになるので、当然、私の専門外ですから、私ではないだろうと思っておりました。農業分野というのは岩盤規制の最たるものですから、座長をやる人は「相当大変だな」と、外野的に見ていました。そういう意味で、私に電話がかかってきたときにはのけぞりましたね。


■“現場”を感じて改革

――まず、どういう手法で改革に取り組まれましたか？

　まずインプットのクオリティーを上げなきゃいけないので、私たちの会社の社員の中に農家のご家族の方がいらっしゃるんじゃないかということで全社メールを打ちまして、私たちの会社の中で“農家の出身者チーム”というのを作ってもらいました。

　彼らから、お父さんの仕事っぷりを聞くとか、そういう彼らを通じてフェイスブック上で若い農業者の方々とネットワーキングを作りながら情報収集をしていくということをやりました。そして、その現場のイメージを持ち、かつ自分もできるだけ現場に行く。例えば、長野県のレタスの農家に行ってみて現場を見ている話を聞いてみたりしながら、「どこに問題があるんだろう」ということを分析していきました。


――実際に会われることを大事にされていると思うんですけれども、議員の方にも色々と会われたということですよね。

　そうですね。農業を専門とする自民党の先生方がいらっしゃいますので、先生方のご意見もお伺いしたほうがいいということで、できる限りお会いしました。お互いアプローチは違っても、農業者の方のために行うというゴールは同じではないかなと思いまして、できる限り異なる意見を持っていらっしゃる先生方にも会いに行きました。


■問題はシンプルに要素分解していく

――ご自分のＩＴやベンチャーなどの得意分野と全然違うところで、しかも農業というのは選挙の時に票も絡むので、かなり難しい分野だと思うんですけれども、金丸さんにとっては問題解決の鉄則というのは、ほかのことと同じということだったんでしょうか？

　そうですね。私は割と一見、複雑に見える問題をシンプルに要素分解していくのが自分で得意ではないかなと思っておりまして。農業分野には、割と右肩下がりのグラフばかりが多いんですけれども、それをひもといて「どこに問題があるのか」ということをうまく整理して、政府の新しい意見として取りまとめをしていきました。


――直感型ではなく、ロジックを組み立てるということでなんでしょうか？

　直感型と言っても、私は情緒型の直感型ではなくて、一見、直感型に見えるんですけども、中身を分解すると割と王道的なロジックで出来上がっていて、直感の結果をアウトプットする時間をできる限り短くする。

　そして、３秒ぐらいの間に何か結論を出しても、それはひらめいてギャンブルのような結論を出したのではなくて、少なくともシンプルだけど、きっちりとしたロジックがあるということを心がけています。


■“最悪のケース”想定で訓練

――アウトプットを短くする訓練というのがあると聞きましたが、どういったものなんですか？

　これは、まず想像力がないといけないと思うんですけれども、私は最悪のケースを想像して、最悪のケースを起こしうる要因を分析して、その最悪のケースを生み出すであろう要素を消していくことをやるんですね。それをできる限り早くやる。一見みなさんからは、何か直感で決めたように見えるんですけども、私なりには一応ロジックがあることをすごく心がけています。


――最初にポジティブなことを想像する方も多いと思うんですけれども。

　最悪のケースから消していくと、もっとポジティブになれるというか。ポジティブだけだと、最悪のケースも心の中のどこかにあるので、ポジティブ度が減ると思うんですよ。マイナスを消してしまえば、全部プラスの方ですから。