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東芝メモリ成毛社長“反撃へのシナリオ”1

2018年11月20日 16:53
東芝メモリ成毛社長“反撃へのシナリオ”1

様々なジャンルのフロントランナーからビジネスのヒントを聞く「飛躍のアルゴリズム」。今回のゲストは、東芝メモリ代表取締役社長の成毛康雄氏。水面下ですさまじいほどの攻防が繰り広げられていたという東芝メモリ分社化時の交渉劇。その中心で戦い抜いた成毛氏とはどんな人物なのか。あの日の決断と未来へのシナリオに迫る。(聞き手:安藤佐和子 日本テレビ報道局・解説委員)


■そもそもメモリー事業とは何か?


――東芝の“稼ぎ頭”だったメモリー事業が、外に飛び出したのが東芝メモリですが(※1)、一言でいっても、様々な人の思惑があって分社化した後にどこにいくのか、その中心にいたのが成毛さんなので(※2)、私たちも取材していて、一体どんなタフな人なのかというのはいつも思っていました。今回は、どういう思いで乗り越えたのかというところをうかがえたらと思っています。その前に、肝心のメモリー事業とは何なのか、簡単に確認させてください。今や我々の多くが持っているスマートフォンですが、メールやウェブの閲覧、撮影などの機能があります。こうした映像や文字などの情報を端末の中に記憶したりさらに情報を消去したり上書きしたりできるのが、半導体メモリーということでいいですか。

はい、その通りです。メモリーチップが入っているパッケージといわれるものがありまして、このパッケージが先ほどのスマートフォンなど色々なところに実装されているということです。これがフラッシュメモリーです。今、フラッシュメモリーのチップの中でデータを蓄えるセルが48階建てや64階建てとか、だんだん高層化しています。それで、なるべく容量が大きく安いメモリーを提供するという方向に技術は進んでいます。

さらにこのパッケージは、厚さが1.2ミリほどで、そういうチップがさらに8枚とか16枚とか、薄く削られて中に入っていて、ウエハー状で高層建築をつくっていて、さらに、そのチップを重ねて入れるということで非常に大きな容量のメモリーが使えるようになりました。

メモリーには、電源を切ってもデータが残るメリットと、ハードディスクに比べてモーターを回さなくてもいいというメリットがあります。IoTやAIなどそういう大量のデータを蓄えたり、あるいはスマホで持ち歩いたりという場面では、このNANDフラッシュがどんどん使われています。また、これからは自動運転で道路の画像を処理するときは、そのデータをこのチップに入れておきます。

さらにAIでロボットが色々な判断をするときに、ベースとなるデータがNANDフラッシュの中に入る。いっぱい学習しないと、賢いロボットにならないというのがディープラーニングだからです。医療も遺伝子の大量のデータを計算して、遺伝子の分析をするというところにもNANDフラッシュが使われています。


――我々も毎日のようにAIとか、IoTというのを報道していますが、すごい速度で社会が変わっていく中で、その全てに必要な技術ですよね。

そうですね。ハードディスクより1000倍速く動くということで、CPUやGPU(グラフィックのプロセッサー)にデータをやり取りするという意味では、非常に大きな役割を担っていると思います。


(※1)東芝の稼ぎ頭のメモリー事業が、なぜ、東芝から売却されたのか。発端は、2016年12月にアメリカの原発事業で、東芝に巨額の損失が発生することがわかったことから始まる。その東芝本体の財務を救うため、2017年4月、稼ぎ頭であるフラッシュメモリー事業を分社化して売却することを決定。複数の売却先候補と交渉を重ね、最終的に2017年9月、いわゆる日米韓連合への売却を決定し、今年6月売却が完了した。交渉はベールに包まれていたが、複雑な条件がある中での激しい交渉だったと言われている。

(※2)成毛康雄氏プロフィール
1984年東京工業大学大学院で博士課程を修了後、東芝に入社。メモリ事業部のSRAM(エスラム)製品技術部長や四日市工場長を経て、2015年9月に東芝の副社長に就任。そして、2017年からは東芝から分社化した東芝メモリの代表取締役社長に就任している。