東芝メモリ成毛社長“反撃へのシナリオ”4
東芝メモリ代表取締役社長・成毛康雄氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。3つ目のキーワードは、「東芝メモリ、初代社長として」。多額の投資をはじめ、難しい決断を迫られる場面も多いメモリー事業。トップとしての思いを聞く。
■借金はあるが勝算もある
――非常に苦難を乗り越えてスタートした東芝メモリの今後の戦略を聞きたいと思います。キーワードは「東芝メモリ、初代社長として」――東芝時代と変わったところは、どういったところでしょうか。
やはり単独になったということで、いろいろな判断のステップが短くなったので、クイックにできるということが大きな変化だと思います。この後、IPOというのを控えていますので、それまではかなり借金を背負っています。キャッシュフロー上は厳しいんですが、やはり開発したもの、生産したものが世の中に認められているということが、そういうことをはね返して、がんばる原動力になっていると思います。
――これで四日市工場も拡大して、岩手のほうも2020年から量産開始ということですが、生産の拡大ペースはどういった感じなんでしょうか。
今まさにIoT、データセンターの需要がふくらんでおりますので、マーケットは年率40%ぐらいで伸びていて、それに絶対遅れないという投資と開発で進めています。結果的に四日市工場の生産量は、世界の4割近い生産ができるようになってきています。そういうお客様に対するプレゼンスというのも私たちの自信のひとつになっていると思います。
■「ボリュームゾーンで絶対負けない」
――DRAMの時はトップメーカーに躍り出て、拡大すると思って進めていたところ、市場が変化してしまった過去があります。そういう恐怖感というのはありませんか。
もちろん、このメモリーのビジネスというのは判断をひとつ間違えば大変なことになります。それは慎重にやるという意味ではそうやっていますが、当時は、DRAMを縮小する過程で、やはりコモディティーの安いものから、スペシャルなDRAMへという思いがあって、非常に高いDRAMを開発するという方向にシフトしていったわけです。しかし、やはりそういったスペシャルなDRAMは、マーケットも小さいということで、やはりボリュームゾーンで絶対負けてはダメだというのは、我々の反省として根強く残っています。ボリュームゾーンで、コストも性能もお客様が欲しいといっているタイミングに合わせて製品を開発すると。
――いろんなメーカーを取材して、過去を振り返って失敗したなという時というのは、日本はすごく技術力が高いので、技術者・開発者が高い技術のものを求めて、「日本だからここは負けない」となった時に、そこまでを必要とされるボリュームがないというのは、つまずきやすいとこかなと思うのですが。
おっしゃる通りです。非常に先端のお客さんが使われる、“ボリュームの少ない領域で高く売る”というのだけはうまくいっていたんですが、やはりメモリーというのは開発費もかかりますし、投資もかかると。それを回収するだけのボリュームがないマーケットでは、やはり生きていけなかったというのは、非常に大きな反省としてあります。
■IPOできるだけ早く
――毎年、何千億もの投資が必要な産業ですので、できるだけ早いIPO(株式の新規上場)…3年以内とおっしゃってましたが、例えば来年という可能性もありますか。
それは上場のルールだとか、私たちの準備状況、あるいはマーケットの環境とかもありますので、そういうのを勘案して、なるべく早い時期にと考えています。