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【解説】下請法違反で日産に勧告 中小企業“賃上げ“の契機となるか?

2024年3月7日 21:23
【解説】下請法違反で日産に勧告 中小企業“賃上げ“の契機となるか?

企業の賃上げの動きにも関わってくる大企業の不祥事で新たな動きがありました。日産自動車が、下請け企業に支払う代金を不当に減らしていた問題で、公正取引委員会は日産に再発防止などを勧告しました。不当な減額は総額で30億円以上にのぼり、同様の違反の事案としては過去最大の金額になるといいます。違法な取引が行われていた背景や、その問題点について、経済部・経産省担当の戸田舜介記者が解説します。

■日産の“違法な取引” 慣行になっていた可能性も

藤井貴彦キャスター
「日産で発覚したこの問題ですが、なぜこうした違法な取引が行われていたんでしょうか」

経済部 経産省担当 戸田舜介記者
「公正取引委員会の勧告の中では、この取引が日産の中で2021年から2年以上行われていたことが明らかになりました。つまり、この2年以上の間、違法な取引であることを現場も気づけず、慣行になっていた可能性もあります。

ある日産関係者は『今回の取引は、下請け業者との間でも合意の上でのものだったため、指摘を受けるまで、社内で問題だと認識できていた人もほとんどいなかっただろう』と話しています。

公正取引委員会の中からも『日産は、あれだけ大きな企業の割に脇が甘すぎる』『われわれから指摘される前に対応してほしかった』など、日産の法令順守への姿勢の甘さを指摘する声もあがっています」

■“ピラミッド構造”根強い自動車業界

藤井キャスター
「こうした問題が日産という大企業、そして自動車メーカーで起きた背景は何でしょう?」

戸田記者
「自動車業界は、メーカーと下請け業者の間のピラミッド構造が特に根強く、下請けがメーカーにモノを言いづらいという環境にあります。メーカーもこれを強く認識し、より丁寧で慎重な対応をする必要があります。

こうしたことから、自動車政策に取り組む経産省の幹部も『あってはならない話で、日産は言い訳のしようもない』と、今回の問題を批判しています。日産には今後、グローバル企業として、詳しい検証と説明が求められていきます。

中小企業を代表する日本商工会議所の小林会頭も、次のように発言しています」

日本商工会議所 小林健会頭
「後から値下げを要求する行為自体は、きわめて遺憾なことである。これを機に、やはりトップが前に出て真剣に考えなきゃいけない」

■“下請けいじめ”か 経団連も適正な取引呼びかけるも…

藤井キャスター
「日産関係者は『下請け業者との間でも合意の上でのものだった』と話していたということですが、これは大企業による“下請けいじめ”にもあたる可能性があり、問題視されてきましたよね」

戸田記者
「公正取引委員会はもちろん、経団連も、長引くデフレから脱却し賃上げ機運を高めるため、大企業に対し、下請け業者との取引を適正な価格で行うよう呼び掛けていました。

そうした中にもかかわらず、2年以上、違法な手段で取引価格が減額されていた。このことが、今回の大きな問題といえます」

■下請け業者との「適正な取引」の重要性

藤井キャスター
「適正な取引というものは当たり前のことだと思いますが、もし適正な取引が行われないと、どんな問題があるのでしょうか」

戸田記者
「日本では労働者の約7割が中小企業で働いていて、中小企業が賃上げできなければ、日本の景気は良くなりません。ある経産省幹部は『今回の事案が下請けとの取引関係を見直すきっかけになる』と強調しています。

つまり今回の問題は、下請け業者との『適正な取引』の重要性を、大企業が認識する絶好の機会だというんです。そのため公正取引委員会からも『今回の件を契機に、日産など自動車業界のみならず、あらゆる業界で気を引き締め、適正な取引を行ってほしい。それをもとに賃上げにつなげてほしい』との前向きな声もあがっています」