渋谷「東急百貨店本店」閉店へ 建物も解体に…変わりゆく街 受け継がれていくものも
東京・渋谷の「東急百貨店 本店」はグループの再開発計画に伴い、今月31日をもって閉店します。渋谷のシンボルだった建物も解体され、街は変わっていきますが、今後も受け継がれていくものもあります。
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「東急百貨店 本店」の入り口には、55年間の歴史をまとめた年表が設置されています。そこに記された1つ1つのできごとを記録する女性がいました。
お客さん(55)
「1967年生まれなんです。東急と同じなんです。同い年です、渋谷育ちで。いい思い出があって、本当に寂しいですね」
閉店を惜しむ声が聞かれました。
モデルのツイッギーさんが来日し、ミニスカートがブームとなった1967年、東京・渋谷の街に「東急百貨店 本店」が誕生しました。2020年に閉店した「東横店」は駅直結という立地もあり、多くの買い物客を集めていました。一方、本店はラグジュアリーブランドを展開。外商ラウンジをもうけるなど顧客ひとりひとりを大事にし、渋谷の町でそれぞれ差別化をはかっていました。
しかし、グループの再開発計画に伴い、今月31日をもって本店も閉店。渋谷のシンボルだった建物も、解体されることとなったのです。
最終日まで1週間となった25日、60代の母親と40代の娘が、思い出をたどるように店内を巡っていました。親子3世代で通った“ファン”だといいます。
母親(60代)
「ここで買うのも最後かと思うと、すごく寂しかったけど、娘とデートできたから」
普段の買い物に“デパ地下”を利用しているというお客さんは、従業員と天気について世間話を楽しんでいました。
数十年通う常連客(70代)
「寒いね、風が冷たい」
従業員
「雪がないだけ」
――いつもこうして話す?
数十年通う常連客(70代)
「そうですよ、地元の」
従業員
「それが楽しいんだもんね」
お客さんとの距離感を常に大事にしてきた本店。それを支えてきたのが、本店勤務30年の三枝さんです。
東急百貨店 本店 服飾小物サブマネジャー・三枝久美子さん
「(お客さんから)お手紙もちょうだいしまして、『今後もあなたにお任せしたい』というような言葉をいただき、すごく誇らしい気持ちになりました」
お客さんからの感謝の言葉を支えに、走り続けてきました。それだけに、寂しさを感じるといいます。
東急百貨店 本店 服飾小物サブマネジャー・三枝久美子さん
「地域を含めて家族のような感じがあるので、『ちょっと寂しい』が本当」
全国の百貨店は、この20年あまりで減り続けています。日本百貨店協会によると、ピーク時に311あった店舗数は、2022年11月時点では185店舗と約4割も減少しました。
“時代の流れ”と嘆く一方、今後も受け継がれていくものもあります。入社6年目の後藤あかりさんに話を聞きました。
――入社のきっかけは?
東急百貨店 本店 営業推進・後藤あかりさん
「(百貨店の)きらびやかなイメージに憧れていて、もともと渋谷の街も大好きだったので」
本店の跡地には今後、165メートルの新ランドマークが誕生。“大好きな渋谷の街”は変わっていきます。それでも――
東急百貨店 本店 営業推進・後藤あかりさん
「(本店は)“顔の見えるお客さま”に支えられていたお店だなと。お客さまに“感謝の気持ち”と、これからつながっていく未来を見据えた幕引きを実現していきたいなと思っています」
大事にしてきたおもてなしの心は、渋谷の街にこれからも残っていくはずです。