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【解説】日銀、大規模緩和策を維持~政策の点検・検証は?

2023年4月28日 16:53
【解説】日銀、大規模緩和策を維持~政策の点検・検証は?

日本銀行の植田新総裁の記者会見について、経済部の宮島解説委員とお伝えします。

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--植田総裁の初めての金融政策決定会合と記者会見でしたが、どういった内容だったでしょうか。

■宮島解説委員
まず印象として、黒田さんの10年の後、植田新総裁はどういった会見をするのか大変注目されました。まずは、今の政策を粘り強く続けると。そして、全体として慎重な印象を受けました。

会見では、それぞれの記者の質問に丁寧に答えていて、非常にわかりやすかったです。丁寧に記者と、いろんな所とコミュニケーションを取るという植田さんの姿勢が現れた会見だったと思います。

会見のポイントを解説します。

まず、大規模な金融緩和策を維持する、粘り強く維持するということでした。これはおおかたの予想通りでした。

市場の一部には、長期金利の変動幅の拡大、長短金利操作の修正の予想もありましたが、今はそうした経済状況ではないと判断されました。たとえ副作用の軽減が目的だとしても、今、金融引き締め方向の政策の変更に向かうと受けとめられることは避けたのだと思います。

特に今回、就任の最初の記者会見・決定会合なので、いわゆる「タカ派」=景気よりも物価の安定を重視して金融引き締め的な政策を支持する派とレッテルを貼られることは避けたとみられます。

それから声明文で金融政策の先行きの見通しについて、コロナの影響などの文言を取りました。ただ先に関して、「必要があれば躊躇なく追加的な緩和策を取る」としており、全体としては粘り強く今の政策を続けるということです。

植田さんは、金融の引き締めが遅れるリスクよりも今は物価目標を達成しないリスクの方が大きいと話し、今は待つリスクは大きくない、と言いました。

投資家は、近く利上げがあるかどうかを非常に注目していましたが、印象としては“利上げは少し遠いかなぁ”という印象です。仮に、金融システム問題が深刻になったら、すぐにでも追加的な措置をとる可能性もあるなということです。

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--物価の見通しについては、いかがでしょうか?

■宮島解説委員
物価の見通しに関しては、今回、今年度・来年度を少し上向きに修正しました。少しだけ上向きにして、そして新しく出た2025年度の物価の見通しは、1.6%でした。2%に近い数字なのではないかと見られていましたが、目標の2%を大きく下回る数字です。これは、政策修正との関係でいうと、新総裁や新体制は先行きを慎重に見ていると伝わったと思います。

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--これまでの政策の点検評価をどうするかということが注目され質問が相次いでいましたが、この点についてはいかがでしょうか?

■宮島解説委員
1年から1年半程度かけて、これまでの25年間の政策のレビューをするということを声明文に盛り込みました。記者会見でもここに相当質問が集中していました。

具体的に何をやるかということですが、デフレに日本がなり非常に苦しい状態だったこの期間に様々な金融政策をしたが、これをしっかりと見直すということです。レビューで中間評価することもあると話しています。

今までの日銀の体制でも点検と評価はしていましたが、それはどちらかというと、そのときに政策変更の思惑などが先にあり、その理由のためのような形で点検・評価をしたことが多いと思います。

植田さんは、今回示したレビューが次の政策修正や政策変更につながるものだとみられることは避ける形で説明をしていました。今まで普通じゃない大規模な金融政策をしてきた、これがメリット・デメリット含めてどうだったかということをしっかりと学者の立場でレビューしたいという気持ちが強くあり、このレビューを始めるから近く政策を変更したり、修正したりするということではないということです。

さらに、特に最近行われてきた金融政策は副作用も多かったと言われています。政策の効果と副作用のバランスを間違えないようにしたいと、レビューでも効果と副作用がどうだったかということをしっかりと見ていくのだと思います。

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--少し視点を変え、記者とのやりとりは黒田さんのときと何か違いはありましたか?

■宮島解説委員
黒田さんも記者の質問にしっかりと答えていましたが、時に質問によっては、記者が理解してなくてもそこで打ち切りとか、「それはAならAなんです」のように、記者の中にもやもやとした気持ちが残るというような場面も中にはあったと思います。

今日、大学で教える立場でもある植田さんは、丁寧に、難しい質問に対しても角度のある質問に対しても、丁寧に答えていたと思います。

--今後についてですが、金融政策の先行きの見通しについてはどうでしょうか?

■宮島解説委員
私は今回の展望リポートで、すぐには政策を変えないというメッセージの印象を受けました。展望リポートにしっかり状況を書いて政策を動かしていくんだなと。

市場に、政策修正は4月なのか6月なのかというような話がありましたが、日銀の政策決定会合次の6月は展望リポートがありません。そのため、政策修正もなかなかないのかなと。

今日、決定会合の前から円相場は2円くらい円安方向に動きました。株もアメリカの株高の影響もありますが、当面、金融緩和が続くんだなと見られて、大きくあげて今年の最高値をつけました。こうしたことも含めて、全体としては先行きに慎重な印象を受けました。

最近、専門家の何人かが注目しているものがあります。それが、展望リポートの中の物価の見通しのグラフといったものです。

今回、新しく出たこの2025年度の数字のリスク評価について、数字より下になるかもしれないと思う委員が3人。つまり植田さんも会見で言っていましたが、先行きの物価に関してあまり自信がないのだと。

この1・6%の物価見通しであっても、政策委員に下向きのリスク評価があると。

--これは、物価があまり上がらないということなのでしょうか?

■宮島解説委員
この先の不確実性を強く見ているのだと思います。景気の先行きの不安もありますし、3月にアメリカの中堅の金融機関の破綻があったり、ウクライナ情勢とか様々なことが起こっている、それに関しては相当慎重な見方をしているということだと思います。

--これまでの大規模緩和政策の結果副作用も大きな問題となっているかと思いますが、これについてはいかがでしょうか?

■宮島解説委員
これは日銀が国債を非常に多く買っているために金利のカーブが、年限が近いものから上がるはずの金利のカーブがスムーズではない、あるいは市場の経済の状況がすぐに金利等に反映しにくくなっていて市場機能が低下していると、そういう副作用が出ています。

これは、なかなか簡単には解消しないと思いました。

植田さんはご自身が審議委員のときに進めたゼロ金利政策や時間軸効果には、かなり自信をもっているのではないかと思います。ただ、その後のマイナス金利や量的緩和、YCC、副作用と効果がどうだったんだろうと、疑念を持っているのではないかと思います。今回、しっかりとレビューするということになり、データを集めるように指示があったとも聞いています。

植田さんが学者としてしっかりと今までの25年間を見たいんだという気持ちが出ていると思います。これが市場に「政策の修正のスタート」と見られないように、繰り返し会見でも話してました。

    ◇

--次の金融政策決定会合は6月ですが、注目点はありますか?

■宮島解説委員
6月は岸田政権が骨太の方針を出しますし、政治的にもいろいろあると思います。植田さんは今日の市場や記者との対話もそうですが、政権との対話も大事にするということでした。6月やその先に向けてどうなるか注目したいと思います。

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