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「木刀持って再来店された」 “カスハラ”の厳しい実態、調査で明らかに コンビニは名札の表記変更も…

2024年6月5日 22:29
「木刀持って再来店された」 “カスハラ”の厳しい実態、調査で明らかに コンビニは名札の表記変更も…

カスタマーハラスメント、いわゆる“カスハラ”への対策で、ローソンが4日から導入したのが、店員の名札のイニシャル表記です。5日、飲食業などが加盟する労働組合は、“カスハラ”の調査報告を発表し、厳しい実態が明らかになりました。

5日、東京・品川区のローソン・ゲートシティ大崎アトリウム店を訪ねました。一見、いつもと変わらない様子でしたが、店員さんの名札には、「クルーTK」という文字が入っていました。

コンビニ大手「LAWSON」が4日から導入したのは、“イニシャル”の名札です。

人事本部人事管理部・シニアマネジャー 千田文寿 さん
「従業員が名札、実名を不特定多数にさらす、ということについての不安感・負担感が大きい」

これまで「LAWSON」では、名札に名字を表記するルールでしたが、実名をSNSでさらされるなど、“カスハラ”被害への不安をうったえる声が増加。そこで今回、役職とイニシャル、または任意のアルファベット表記の名札も認めるルールに変更したといいます。

同じくコンビニ大手の「FamilyMart」は、5月下旬から「仮名」の表記を認めていて、「かとう」さんが「さとう」さんと名乗ることも可能になりました。

取り組みが増えている、“カスハラ”対策。

5日、労働組合「UAゼンセン」も“カスハラ”の実態調査を報告しました。

UAゼンセン 佐藤宏太流通部門執行委員
「“お客様は神様です”という考え方のもと、顧客対応をしております、というのが実態としてありますので、“カスハラ”被害にあっている現場従業員が非常に多くて、精神的にも肉体的にも、非常に疲弊しているのではないかと」

飲食・ホテルなどサービス業が加盟する労働組合「UAゼンセン」が調査を行ったところ、全体の約半数が「直近2年以内で被害にあったことがある」と回答しました。

また、生々しい体験談も紹介されました。

【カスハラ実態調査より】
「セルフレジで、会計が終わっていないのに帰ろうとしたので、声をかけたら、クレジットカードを投げつけられた。『何様のつもりだ』と、暴言を吐かれた」

【カスハラ実態調査より】
「『女のくせに』と暴言を吐かれ…後日、木刀を持って再来店され、非常に恐怖を覚えた」

調査では、被害を受けた人の3割以上が「謝り続けた」と回答。そして、全体の約半数が「企業で特に対策はなされていない」と答えています。

実際に、街で出会った“カスハラ被害者”も…

“カスハラ”被害を受けた会社経営(20代)(5日)
「『死ねよ』とか言われますし。『ブス』とか。容姿が気に食わなくて、怒られる。普通に、全然あります。反論せずに、とにかく謝罪。マニュアルも基本的にないカフェなんで、とにかく反論せずに、とにかく謝罪」

多く聞かれたのは、「飲食店」での被害です。

“カスハラ”被害を受けた起業家(30代)
「飲食で働いていたとき、料理を出したら、その見た目だけを見て、『美しくないから作り直せ』って言われて…」

店長に相談したといいますが…。

“カスハラ”被害を受けた起業家(30代)
「『あなたは店長に聞くとかじゃなくて、まず作り直せ』と。『作り直すことに意味があるんだ』と言われ、それが本部クレームまでいきました」

──お店の対応は?

“カスハラ”被害を受けた 起業家(30代)
「作り直しました。同じものが出ました。めっちゃ、むかつきましたね」

“お客様は神様”ではない時代──。

「昔は、神様…。(いまは、)合わないんだったら来なくていいですよ、と思う。別のところに行ってくださいって」

カフェで働く人からは、やはり「名札を変えたい」という声が上がりました。

“カスハラ”被害を受けた大学生(19)
「名字がのっていると、それだけで今は特定されたりするし、SNS上での非難につながったりすると思うので。たびたび店長さんには、そういうことを伝えている」

対策が急がれる、深刻な“カスハラ被害”。「閉店」まで追い込まれた店もあります。

中華そば いち 瀧江伸一社長(東京・中野区 5日)
「従業員のことも、守らなくちゃいけない。命を守らなくちゃいけないのが、最優先だったんで。じゃあ、もういっそのこと、ここ閉めちゃおうって」

茨城県にあったラーメン店では、去年、ラーメンに100本以上のつまようじを入れられたり、コショウ一瓶分をまるごとラーメンに入れられるなど、被害が相次ぎました。その後も…。

中華そば いち 瀧江伸一社長
「鬼の電話が入るようになった。『こんな店つぶれちまえ』とか、『もう殺すぞ』とか。いろいろなことを言ってきた。(従業員が)いない時間帯に、建物に火をつけられたりとかしたら、周りにも迷惑がかかる。自分たちの身を自分たちで守るのと、お客様のことを考えなくちゃいけない」

苦渋の決断で、閉店。

新たに別の店舗を立ち上げ、今は、ほとんど被害はないと言いますが…

中華そば いち 瀧江伸一社長
「(別の客から)もっとスープを多くしろとか。うちの分量って決まってるので、『それを変えることはできません』って(言ったら)…ありえないような口コミを書くんですよね」

“カスハラ”被害は、完全にはなくならないのか? 実態を調査した労働組合は、従業員が安心・安全に働けるよう、新しい法整備などを求めています。