「春闘」本格化 続く物価高の中…“賃上げ”進む? 中小企業7割超“予定なし”大企業と大きな差も
食品や電気料金など、生活に関わるものの値段が上昇する中、どれだけ“賃上げ”が進むのか…経営側と労働側が交渉する、いわゆる”春闘”が本格化しました。大企業では“賃上げ機運”が高まる一方、多くの中小企業に融資をしている信用金庫の調査では、7割を超える会社が「賃上げの予定はない」と回答しているということです。
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24日、経団連の十倉会長は経団連労使フォーラムで、本格的に始まる「春闘」にむけ、今年の「賃上げ」の考え方を話しました。
経団連・十倉雅和会長
「今回の物価上昇を契機として、日本社会に染みついたデフレマインドを払拭し、賃金と物価が適切に上昇する『賃金と物価の好循環』が実現できなければ、新しい資本主義も頓挫してしまう」
歴史的な物価上昇をきっかけに、企業は今年だけでなく、来年以降も賃上げを継続する流れを作っていく重要性を訴えました。
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埼玉・白岡市にある「八郎そば」では、いわゆる“ガッツリめし”を提供しています。「お待たせしました! 熱々鉄板焼きです」と店員が運んできたのは、熱々の鉄板に盛られた豚肉と、ざく切りのキャベツ。実は、「八郎そば」は大手ファミレスチェーン「すかいらーくグループ」が、6年ぶりに手がけた新業態の店舗です。
すかいらーくグループは、コロナ禍の外食需要減少や物価高で経営が圧迫される中、去年、不採算店舗約100店の閉店を発表。こうした中でも“稼げる戦略”に打って出ているのです。
そんな中でも――
すかいらーくHD・谷真会長兼社長(今月5日)
「ベースアップをする。社員の生活防衛というか、生活水準は決して落とせないというふうに思いますので、ここはやはり賃上げすべきと」
物価高の中、“社員の生活水準”維持のため、給与の一斉引き上げに踏み切るといいます。
記録的な物価高で、大企業では、衣料品店「ユニクロ」を展開する「ファーストリテイリング」を筆頭に“賃上げ機運”が高まっています。(ファーストリテイリングでは最大40%の賃上げ)
一方、街の人に「賃金」について聞いてみると――
会社員(40代)
「賃上げはないと思います。徐々に物価が上がっているので、実際の給料的には減っているので、この先が心配だな」
会社員(20代)
「化粧品とか家賃とか上がっているので、給料上がってくれたらうれしい」
会社員(30代)
「大企業さんの方が当然、余裕があるでしょうし、『幅広くそういう所(賃上げ)が影響すればいいな』と思います」
また、多くの中小企業に融資をしている城南信用金庫の調査(中小企業738社対象)では、7割を超える会社が「賃上げの予定はない」と回答したといい、大企業と中小企業の大きな差が表れています。
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子ども服など衣料品を製造する「小倉メリヤス栃木工場」。従業員35人のいわゆる“中小企業”です。
――生地代って何割くらい上がっている?
小倉メリヤス製造所・小堀智久工場長
「15%・20%くらい上がっていると思います」
衣服を作るために必要な生地だけでなく、様々な種類の糸や、ぼたん、出荷するための段ボールなども軒並み高騰。さらには、生地を裁断する機械や、ミシンなどを動かすのにかかる電気料金も、2割ほど上がったといいます。
小倉メリヤス製造所・小堀智久工場長
「そこ(ミシン)が動かないと。お金が稼げるところでありますので、常に動いてもらわなきゃいけない機械なので」
この物価高の影響で、賃上げしたくても厳しい状況だということです。
小倉メリヤス製造所・小倉大典社長
「(賃上げは)したいですね。うちは下請け企業になるので、1社だけの自助努力は結構、限界があります。下請けも元請けもというか、全体で“せーの”で(賃金を)上げていかないと、なかなか難しいと思います」
経済界は、中小企業や下請け企業、非正規社員の賃上げも進むよう取り組んでいますが、物価高を乗り切るためには、今年の春闘が正念場となります。