高島屋・村田社長に聞く「百貨店の今後」
百貨店は、新型コロナウイルスの影響で最も深刻な打撃を受けた業界の1つ。長期休業のダメージに加え、新しい生活様式では「非接触」「非対面」の流れの中、百貨店の強みである「対面での丁寧な接客」もままならなくなっています。
こうした中、百貨店業界では、デジタルを活用した新たな接客方法の模索が続いています。いまだコロナの収束がみえない中、百貨店の今後について、日本百貨店協会会長を務める高島屋の村田善郎社長が日本テレビの単独インタビューに応じました。
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コロナ禍の中、少しずつ客足が戻ってきている大手百貨店・高島屋。しかし、今年4月に緊急事態宣言が出された時には、1か月半という前代未聞の長期休業を経験しました。
高島屋・村田善郎社長「今年の上期、3月からが我々の上半期になるんですけれども、上半期に入ってすぐに、緊急事態宣言が発出されたという中で、我々としてもどこまで営業すべきか、自粛すべきかというところで、相当、経営レベルでも真剣な議論をいたしました。やはり、百貨店としては店舗が開いていないと、営業そのものが、ほとんどが店舗営業によるものなので、厳しかったです」
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5月下旬の営業再開後も、外出自粛により、すぐには客足は戻らず、全国の百貨店の今年1月から10月までの売上高は去年の7割程度にとどまるなど、苦境が続いています。
高島屋・村田善郎社長「やはり我々は、店舗を開けて初めてお客様とも接することができますので、そういった意味では、どこまでこの状況が続くのかと、大変な心配はありました。もちろん、経済と人命というのは、はかることはできませんけれども、感染予防対策をしっかり取りながら、徐々に経済を拡大させていくという中では、小売りとして、できる限りの営業機会を捉えていくということが重要だと。それをやっていけば大丈夫というふうに、我々としては考えておりました」
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コロナ禍の新しい生活様式では、「非接触」「非対面」が求められ、百貨店の強みである「対面での丁寧な接客」が生かしづらくなっています。小売業界では、インターネット通販が大きく伸びていますが、百貨店は年配客が多いこともあり、これまでネット通販の割合は低めでした。
高島屋・村田善郎社長「この半年間は、いわゆるEC売り上げ全般見ますと、去年と比べて168%の伸びになっております。今年1年間の見通しも、145%、1.5倍ぐらいの伸びを示しているという状況になっております。今までに、これほど伸びたことは、私の記憶ではないと思います」
とはいえ、やはり百貨店では、対面での接客を望む客も少なくありません。
高島屋・村田善郎社長「そうですね。我々はもちろん大手のモール型のネットに移行というわけではなくて、あくまでもやっぱり店頭があっての、それを補完する“百貨店EC”というものを目指しておりますので」
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デジタル化が遅れているといわれていた百貨店業界でも、コロナ以降、デジタルを活用した接客が見られるようになりました。高島屋で先日スタートした「リモート接客」も、百貨店ならではのデジタル活用の1つ。テレビ電話で対話をしながら、店頭と変わらない接客を受けられるというものです。
高島屋・村田善郎社長「あくまでも店頭があって、それをいかにこのコロナの中で、お客様との距離を保ちつつ、しかし質の高い接客販売ができるかということで、デジタルを組み合わせていくと、そういう考え方で進めておりますので、新しい接客方式といえると思います」
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負の面が大きいコロナ禍ですが、今後に生かせる部分があるとしたら、それは何でしょうか。
高島屋・村田善郎社長「やっぱり百貨店でなければ提供できないものは何かということを考える、非常に良い機会になったと思います。百貨店とは非常に労働集約産業で非常に手間がかかるものでした。でも我々としてはやっぱり、とことん百貨店を追求していきたいと思っておりますし、百貨店でなければ提供できない価値というものを、今後、提供し続けることが我々の将来に向けた1つの解決策だというふうに思っております」