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脱東京?都心回帰?コロナ後のオフィスとは

2020年12月30日 19:58
脱東京?都心回帰?コロナ後のオフィスとは

新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちの働き方は大きく変化した。テレワークが普及し、社員がどこでも仕事ができる環境を整えた結果、都心のオフィスを縮小したり、本社機能を地方に移転させたりする企業が相次いでいる。

「脱都心」「脱東京」の流れは進むのだろうか。また、アフターコロナのオフィスとはどんな形になるのだろうか。

■全員テレワーク、週休4日でオフィス不要に!?

富士通は2020年7月、工場勤務を除く国内の全従業員およそ8万人を原則テレワークにすると発表。転勤も、テレワークと出張で対応可能であれば取りやめ、単身赴任の解消につなげるという。

東芝やパナソニック、NECといった大手メーカーも3月以降、テレワークが恒常化し、「都内のオフィスでは出社率は1割程度(東芝)」、「2020年は元々オリンピック期間中のテレワークを予定していたので、それが早まった。このまま定着するのでは(NEC)」としている。

また、みずほフィナンシャルグループは銀行や信託銀行、証券などの本社勤務の社員およそ1万2000人のうち25%を恒常的にテレワークにするほか、12月からは週休3日や4日の働き方も導入した。

こうした改革に伴い、富士通は今後3年をメドに不要になるオフィススペースを半減する計画で、東芝も全国のオフィス(工場を除く)の延べ床面積を3割程度減らすことを検討中だ。

みずほは今年度中に首都圏に9か所のサテライトオフィスをつくるという。

■勤務地は「島」

2020年9月、人材サービス大手のパソナグループが本社機能を兵庫県の淡路島に移すと発表した。パソナの本社は東京駅の目の前という、いわば東京のど真ん中。ここで働くおよそ4600人のうち1200人程度を、2024年5月をメドに淡路島に移住させる計画だ。

お茶の専門店「ルピシア」は7月に東京・渋谷から製造拠点のある北海道・ニセコ町に本社を移転。森田薬品工業も9月、東京から創業の地である広島県・福山市に本社を移した。

移転について、パソナはコロナをきっかけに、自然災害なども含めたリスクを分散するためとしていて、「自然の豊かな土地で子育てをしたいと考える若い社員が移住を希望している」という。ルピシアや森田薬品も製造現場との近さや家賃コストの削減などのメリットをあげる。

経団連が11月に公表した、東京に本社がある会員企業433社を対象に行った本社移転に関するアンケートによると、「本社機能の全部または一部の移転を検討中」または「検討する可能性がある」と回答した企業は計24社。5年前の前回調査の2倍以上となり、コロナ禍で東京一極集中のリスクへの懸念が高まっているようだ。

■“大実験”を経て

実際、コロナの感染が広がった3月以降、都心への通勤客は激減。4月から9月の首都圏の鉄道各社の決算をみると、いずれも乗客が2~3割ほど減っていて、東急や京王は4割近くも減少した。東京メトロでは通勤や通学の定期の販売がおよそ3割の減少となっている。

また、11月末時点の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィスビルの空室率は4.33%で、緊急事態宣言前の3月の1.50%から急上昇している(三鬼商事調べ)。

「脱都心」「脱東京」の動きは進むのだろうか。

ニッセイ基礎研究所・准主任研究員の佐久間誠氏に聞いた。

「コロナの終息がみえない中、しばらくは都心のオフィスを縮小する動きは続く」。ただ、パソナやルピシアのように主要拠点を地方に移転するのは「特殊な例」だという。地方では人材採用が難しくなったり、主要な消費地から離れてしまったりするデメリットもあり、「東京から地方への流れが加速するということにはならない」。

では、コロナ後をもう少し長期の視点でみるとどうなるのか。

「たとえば2001年にアメリカで起きた同時多発テロの直後は高層ビルを敬遠する動きがあった。2011年の東日本大震災の後には湾岸エリアの需要が激減した。しかし、数年後には元に戻っている。コロナ後も同様で、やはり、仕事、人材、消費者が集積する都心に回帰する」と分析したうえで、「ただ元通りになるのではなく、むしろ、オフィスの役割は高まる」と予測する。

「世界中で全員がテレワークという“大実験”を経験し、テレワークの方がはかどる仕事と、オフィスに集まってワイワイと議論した方が生産性が上がる仕事がはっきりとわかってきた。オフィスは単なる事務作業の場所としてではなく、新しいビジネスを生み出す生産拠点となれるかが求められる」

実際、グーグルやアップルなど「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業では、生産性を高めるため、オフィスをさらに拡充し、卓球台を置いたりカフェを充実させたりして社員をオフィスに集める工夫をしている。

「人が集まるリスク」を分散させながら、新しいビジネスを生み出すため「人が集まる場所」をつくる。矛盾した2つの要素をうまく組み合わせられるのか課題となりそうだ。