日銀・植田新総裁、就任会見で何を語った? 7つのポイント
日本銀行・植田新総裁就任会見のポイントをまとめました。会見は10日午後7時すぎから行われ、質疑応答も含め1時間以上に及びました。植田新総裁の主な発言です。
■(1)「金融緩和は継続する」
まず、黒田前総裁のもとで約10年間にわたり続けられてきた大規模な金融緩和策について、就任前に国会で述べたとおり、当面、金融緩和を継続する姿勢を改めて示しました。
ただ、政策そのものについて、「点検や検証があってもいい。政策委員会と議論して決めていきたい」と述べました。
■(2)「物価見通し 2%物価 安定的、持続的に達成するにはなお時間」
日銀は物価の番人と言われるとおり、金融政策によって物価を安定させる役割があります。
植田総裁は政府と日銀による2%の物価安定目標について「現状は見直す必要はない」とする考えを示しました。達成時期については「有限の時間内に、物価目標を達成するという強い見通しは言えない」と明言を避けました。
賃金と物価をめぐる現状については、今回の春闘で賃上げがベアで2%を超えるなど、30年ぶりの高水準だったことを背景に、「喜ばしい動きになっている」と評価しつつも、今後も定着するか「見極める必要がある」との見解を示しています。
■(3)金融緩和の副作用「あったと考える」
日銀の大規模な金融緩和策の継続による副作用についての質問も多くありました。
「金利操作、ETF(上場投資信託)の購入について、副作用はあったと考えている」と述べました。
これらの緩和策の導入は適切だったのかという質問に対し、「効果と副作用については十分考慮し、議論された上で導入されたと思う」「経済への効果から、副作用のコストを引き算しておつりが残るかが評価の基準になる」としています。
日銀は長期金利、短期金利をコントロールする政策をとっています。このうち長期金利については「10年物国債を0%程度に誘導する」としていて、金利を低く抑えるため日銀は大量に国債を購入し続けています。
そのため、現在、日銀の保有する10年物国債は、全体の半分を超えています。この異常な状況により、国債市場は機能が低下するなどの副作用が出ています。
■(4)「YCC=イールドカーブコントロール」は継続
上記の副作用を指摘した上で、記者からは、日銀の長期金利と短期金利をコントロールする政策「YCC=イールドカーブコントロール」についての質問が相次ぎました。
植田総裁は「現状の経済、物価、金融情勢を鑑みると継続が適当」と述べ、当面は枠組みを変更しない考えを示しました。
■(5)「マイナス金利」
マイナス金利政策については、「基調的なインフレ率が2%に達していない中では、継続するのが適当」としています。
■(6)植田総裁「解きほぐすようにわかりやすい説明を」
市場で様々な政策修正の観測が出ている中、日銀と市場との対話で心がけることを問われると、植田総裁は、「いろいろ難しいことをいろんな面でやっているのが現在の政策だと思うので、必然的にわかりにくいというところはある。一つ一つ解きほぐすようにわかりやすい説明を心がけていけたら」と話しました。
また、学者と政策担当者の違いについて植田総裁は、「学者は起きていることの一部分に焦点を当てて考えがちだが、政策担当者は、関係する全てのことを考えないといけない」「学者との違いは、出した結論・決断に対して責任をとることだと思う」としています。
■(7)「つらくても明るく粘り強く」
会見で、大事にしている言葉や信念なども聞かれ、植田総裁は「無趣味・無教養で格言を頼りに打開してこなかった」と話しました。
その上で、少し笑顔を交えながら「つらいことがあっても明るく粘り強くやっていこう」と述べました。