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松屋・秋田社長、コロナ後の百貨店像を語る

2021年1月9日 0:34
松屋・秋田社長、コロナ後の百貨店像を語る

百貨店・松屋の秋田正紀社長は、日本テレビのインタビューに応じ、コロナ後の新しい百貨店像や経済復活のカギについて語った。

■1対1で「きずな」深める

百貨店は、コロナ禍により最も大きな打撃を受けた業界のひとつ。松屋の秋田社長は、「百貨店業界全体が抱えていた課題がいっぺんに露出した。コロナを越えた時点では、新しい形で臨まなければならないと痛感している」と話す。

年配客や外国人観光客がメイン客層だった百貨店は、デジタル化が極端に遅れていることが課題のひとつで、「デジタルの活用が大きなイノベーションの核になる」との考えを示した。

新しい生活様式で非接触・非対面が求められる中、松屋では接客時間を15分以内とするなどの感染対策を採っている。

限られた接客時間を補うため、商品にQRコードをつけてスマホで商品説明を視聴してもらうなど、デジタルの活用に取り組んでいる。

ただ一方で、「直接の対面での販売、おもてなしの重要性は変わらない」。昨春の緊急事態宣言が解除になり、営業を再開した際には、客から「店に来られて良かった」という声が多く寄せられたという。「やはり百貨店の良さというのは1対1のお客様とのコミュニケーション。そこはデジタルだけでは対応できない。年配のお客様の中には、買い物に行きたいけれど、家族に止められて行けないなどストレスになっているケースもある。

たとえば電話で単に買い物の注文を伺うだけではなく、会話を通じてきずなを深められるよう、外商の要員を強化するなどして対応したい」と話す。

■新しい働き方も

こうした面でも小売業の従業員は、リモートワークなど新しい働き方への対応が難しい面があるが、秋田社長は「制度としては兼業や副業も認めている。まだ数は少ないが、それこそ今ならデジタルを活用して新しいビジネスを始めるとか、そういうところで新しい能力を発見してもらって、それを本業の方にフィードバックできれば良いなと」。

従業員の待遇面では、「定期昇給は生活給なのでできるだけ対応したい」としながらも、「賞与については業績と連動するところでもあり、厳しい対応を取らざるを得ないだろう」と苦渋をにじませた。

■カギは「インバウンド」

アフターコロナの日本経済の成長のカギについて秋田社長は、「インバウンド」だという。「個人消費はGDPの半分以上を占めると言われているので、即効性があるのはインバウンドの復活だろう。数よりも長期滞留が重要で、それに対応できるコンテンツの充実、宿泊施設の拡充が必要」との考えを示した。

外国人観光客が日本に長く滞在することで、観光業、飲食、小売りなど幅広い業界が恩恵を受け、大都市だけでなく、地方の経済にも効果が波及するとして、「(コロナ収束まで)しばらくは難しいと思うが、逆に今はインバウンドが復活したときにきちんと対応できるよう、我々が準備する期間ととらえている」とコロナ後を見据えていた。