“つくる・つかう責任”ファッション考える
地球にいいこと、未来のためにできることを視聴者のみなさんと一緒に考える「Good For the Planet」ウイーク。
news every.で取り組んできたSDGs企画。国連が掲げる17の目標のうち2日は、「つくる責任・つかう責任」についてです。大量生産されるファッションのあり方を見つめ直す、ある女性の取り組みを取材しました。
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鈴江キャスター「すごい洋服の山ですね」
eriさん「そうですよね」
鈴江キャスター「これは全部古着になるんですか?」
eriさん「はい。みなさん結構驚かれるんですよね」
鈴江キャスター「いやビックリしました!すごい量だなって、こんなに古着ってあるんだ」
鈴江キャスターも驚く、古着の山。案内してくれたのは、古着屋『DEPT』を経営する、eriさんです。「DEPT」は、80年代の古着ブームをけん引したいわば“伝説の古着屋”。eriさんは、父親が立ち上げた店を、新しいカタチで復活させました。
洋服以外にも例えば、余った古着のシャツにオイルを染みこませてつくった「エコラップ」。そして古いシーツからつくった布ティッシュを販売するなど、ファッションを通して、環境に良い暮らしを広げることに取り組んでいます。
■年間約48万トンの「服」が廃棄に
eriさんは、洋服が大量生産、大量廃棄されている現状には問題があると考えています。現在、日本の家庭から廃棄される洋服の量は、年間およそ48万トン。毎日、大型トラックおよそ130台分が捨てられている計算に…。
eriさん「(洋服の)大多数が廃棄されて、燃やされたり埋め立てられたり」
鈴江キャスター「(つくる時環境に)負荷をかけた上にまたさらに(処分で)負荷をかける。悪循環ですよね」
eriさん「“服は長く着るもの”と私は思っているけど、今は少し使い捨てのような感じで服がつくられていて、やはり、今存在するお洋服をどう活用していくかっていうことをきちんとみんなで社会全体で考えていかなきゃいけないなと」
■環境のための3つの取り組み
環境のためにeriさんが行っている3つの主な取り組みを教えてもらいました。
鈴江キャスター「うわーっいっぱい洋服が並んでいますね華やかですね」
●取り組み(1)売り方を変える
まず1つ目は、古着の売り方を変えること。
eriさん「工程を省いてなるべくコストを下げて安価な状態でお出ししてます」
一部の商品は、修繕などをせず、ほぼクリーニングだけで販売。コストをかけず、その分安くすることで、またつかってもらうのが目的です。
●取り組み(2)古着を生まれ変わらせる
さらに、古着をリメイクして新しい商品に生まれ変わらせる取り組みも。
鈴江キャスター「シャツを何に変えているんですか?」
eriさん「元々のシャツをここをカットしてこの状態にします」
Yシャツの肩の部分を切って、オフショルダーのブラウスにリメイク。全く違う服に生まれ変わりました。
鈴江キャスター「すごい!急にファッション性、デザイン性高いものに生まれ変わりますね」
他にも、個性的な柄が組み合わさった、このトップス。実はこれ、ビンテージのスカーフをつなぎ合わせてつくった1点もの。
●取り組み(3)古着を素材に戻す
さらにeriさんが考えたのは、「古着を素材に戻す」ことです。
eriさん「今、ウールのニットを集めて、もう一回、ウールの製品をつくろうというプロジェクトも進んでいる」
■ヒツジの毛を再利用「リサイクルウール」
ヒツジの毛を刈り、つくられる天然ウールではなく、古着から取り出した「リサイクルウール」。そこで目を付けたのが、「羊毛再生」を、およそ60年前から行う愛知県一宮市。
その作業はまず、集められた古着のセーターなどの仕分けから始まります。ひとつひとつタグを見て、ウールだけをピックアップ。繊維を取り出しやすくするため、ボタンなどの付属品を手作業で取り除くと、生地だけにしたセーターを、それぞれ色別に仕分けします。仕分けられたセーターは、バラバラに裁断され、専用の機械でほぐしてワタ状に。そして、そこに化学繊維を少し混ぜて、糸に紡いでいきます。
こうして糸になったリサイクルウール。これを生地に織る機械は、40年ほど前からつかっているものです。様子あえてスピードの遅い機械で織ることで、繊細なウールが切れないようにしています。ゆっくり織ると生地は空気を含み、ふっくらしたものになるといいます。
■水質汚染を防げて環境にやさしい“ウール”
今、このリサイクルが“ある点”から「環境にやさしい」、と注目されています。それは、色ごとに糸をリサイクルするため、洋服をつくる際に、染め直す必要がなく、水質汚染を防げること。
大鹿株式会社・彦坂雄大さん「(糸に)染めをしなくていいので、工程をひとつしないことによって、当然コストの部分でも下げることができるし、水をつかわない分、そういった環境(水質汚染)にも配慮ができる」
eriさんは自身のショップ『DEPT』でも古着からこうした「リサイクルウール」をつくり、環境にやさしい洋服をつくろうと考えています。
鈴江キャスター「古着を扱う、ファッションに関わる立場からそこでできること、実感していることは?」
eriさん「“足るを知る”という言葉がすごく好きで、とにかくものとのつきあい方を改めるということかなと思っていて、お洋服だったら長く着てあげる。“あ、かわいいな”“すてきだな”“着たいな”と思うものをちゃんと自分で選択をして、長くつきあってあげることで、より経済面でも生き方として、豊かになっていくと思う」