「汚染産業」に見直し 着ない服も“再生”
日本が、世界が、取り組むSDGs。春といえば新生活が始まり、新しい服が欲しくなる、そんな人もいると思います。そこで日本テレビの「news every.」では、皆ができることとして、この「ファッション」を考えます。実は“世界第二位の汚染産業”ともいわれるファッション業界ですが、いま驚きの素材を活用するなど、生産の仕方を見直す動きが広がっています。
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東京・渋谷、若い女性にも人気の「H&M」。鈴江キャスターが見せてもらったのは、洋服などを再利用するために回収するボックス。
H&Mジャパン広報・田中都さん「弊社ではブランドや状態を問わず、なんでも受け付けております」
スウェーデン生まれのH&M。環境問題に積極的に取り組んできました。来週発売の新商品を見せてもらうと、Tシャツは染めているのではなくプリントのものも。
貴重な資源である水を大量に使うファッション業界。布を染めるのに使った水が流れ出ると、環境破壊にもなるため、染めるのではなく、特別な技術で柄をプリントしているのです。
さらに、素材にもこだわりが。グリーンタグというのをつけ、地球にやさしい素材を使った商品を展開。78%が木材などが由来の天然素材のワンピースも。残りは農薬などを使わずに栽培されたオーガニックリネン。H&Mは、2030年までにすべての商品をこうした地球にやさしい素材で作ることを目指しています。
そして、先月、オンラインで販売された商品には驚きの素材が。
H&Mジャパン広報・田中都さん「実はサボテンからできているビーガン(植物性)レザーになります」
鈴江キャスター「え?サボテンで作られたんですか?触っても全然、分からないです」
サボテンを使うことにしたワケ。少ない水でも栽培することができ、環境への負荷が小さいからだといいます。収穫した葉は細かく砕かれ天日干しに。サボテンは、大量の水や化学薬品を使って作られる動物性の革製品に代わる素材として、注目されています。
H&Mジャパン広報・田中都さん「お客様がかわいいと思った商品とか着心地がいいと思った商品が、当たり前にサステナブルな(地球にやさしい)素材でできているというのが私たちの目指す理想」
洋服の作り方を見直す動きが広がるファッション業界。
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買うのではなく作り直す取り組みも始まっています。瀬戸内海に面した、岡山県倉敷市で行われているのは――。
ITONAMI共同代表・島田舜介さん「“服とヨリを戻そう”とタンスに眠ってしまったり、そういった服をお客様からお預かりして、僕たちでインディゴに染めて送り返す」
汚れたり、色が気に入らなくなったり、いつしか着なくなってしまった服を染めることで、生まれ変わらせるサービス。国産ジーンズ発祥の地、児島。世界的にも知られているその技術を生かしています。
全国から届く依頼。例えば、30代の女性は社会人になる時に、父親がくれたギフト券で作ったオーダーシャツを染めてほしいと依頼。その後、染め上がったシャツを着て、父親に会いに行ったといいます。
鈴江キャスターも。
鈴江キャスター「これ実はすごくお気に入りのワンピースだったんですけど、飲み物をこぼしてしまって色味が変わってしまって、着なくなってしまったものだったんです」
2年ほど前からクローゼットに眠っていた思い出のワンピース。
鈴江キャスター「結婚を決めて、初めての両家の顔合わせのときに着たワンピースだったので、すごく思い出も思い入れもある」
ですが、もともと白かったはずの部分に、柄の色が移り、ピンク色ににじんでしまっています。工房に届けられた鈴江キャスターのワンピース。地元で作られた染料が入った容器の中へ。よく絞って空気に触れさせることで、だんだん酸化し色が変わっていきます。同じ作業を3回ほど繰り返し、水洗いしておよそ1日天日で乾かせば完成です。
後日、鈴江キャスターの元に届いたワンピース。
鈴江キャスター「わーきれい!!全く違う洋服に生まれ変わってます。特徴的だった柄の部分も濃い色として残っている。すてきなデザインだと思いました」
瀬戸内海をバックに撮影された染める前と後の服の写真も届きます。
鈴江キャスター「新しい洋服って感じがするんですけど、懐かしい思い出も詰まっていて、新しい出会いをまたもらった気がします」
もう一度着ることができる喜び。
ITONAMI共同代表・山脇耀平さん「もう一度服との思い出を思い出してもらうことで、またその服自身に愛着を取り戻せたらすてきだなと。服との人生を楽しむ、楽しみきることが、よりよい形なんじゃないか」