ナゼ――最先端「半導体」で出遅れる日本 世界シェアは50%から10%に…政府関係者の悔い “巻き返し”へ日本政府も本腰
スマホやパソコンなどに不可欠な最先端半導体の分野で、日本の出遅れが目立っています。過去の世界シェアは高かったものの政府の十分な支援がなく、台湾などに追い越されました。そこで今、政府は工場誘致や新会社設立など新たな支援に乗り出しました。
有働由美子キャスター
「半導体製品は、1台のスマホの中に50個程度入っています。顔認証や音声認識、タッチでスワイプするといった(機能の1つ1つを動かすのに、半導体が欠かせません」
落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「(パソコンやデジタルカメラなどがある僕の周りも)半導体だらけです」
有働キャスター
「半導体がない生活は、どのくらい困りますか?」
落合さん
「20世紀後半はほぼ半導体の時代なので、半導体がないとなると戦前かなと思いました。ただ戦前のインフラも半導体で置き換えてしまったので、19世紀くらいになるのではないでしょうか」
「例えば水道の制御システムも今は半導体を使っているので、井戸がないと水が出てこないという時代かもしれません」
有働キャスター
「そのくらい困るということですよね。生きていくのに欠かせない半導体、日本としてもそれだけ期待がかかるということですよね」
小野高弘・日本テレビ解説委員
「というのも、日本は半導体分野で出遅れているからです。注目したいのは半導体の回路線幅です。小さければ小さいほど処理が高速になり、重宝されます。今、世界が競って研究開発している幅は2ナノメートル。髪の毛の太さの 5万分の1です」
「今、実用化されて先端を行くのが、スマホやパソコンに使われる9ナノ以下。台湾や韓国、アメリカなどで作っています。医療装置などに使われるのは10~32ナノで、台湾やアメリカ、中国、ヨーロッパで製造しています」
有働キャスター
「日本が出てこないですね」
小野委員
「日本は家電や自動車などに使われる40~90ナノの半導体で初めて出てきます」
有働キャスター
「先端ということでは出遅れています」
小野委員
「政府関係者は悔やんでいます。かつて日本産の半導体は世界の50%のシェアがありましたが、過去20年間、政府が十分な補助金を出してこなかった結果、今やシェアは10%になりました」
「その間、台湾などは大規模な補助金などで政府全体で半導体企業を後押しし、台湾は今や世界全体の70%を生産しています」
有働キャスター
「政府が本気になってお金を出さないといけない分野であるということですね」
小野委員
「そこで台湾のTSMCの工場を熊本に誘致しました。政府が1.2 兆円余りを補助しています。同時に、日本でも最先端を行く半導体を独自に開発製造して巻き返そうとしています。日本の大手企業8社が設立した新会社『ラピダス』に、政府が3000億円支援しています」
「半導体に詳しい東京大学大学院の黒田忠広教授は『日本の半導体技術が他国に追い越された間も、技術者たちは研究を続けてきた。現在も100人余りがアメリカで学び、その頭脳と政府の支援がある今、ラピダスにも大いに期待できる』と言います」
「その上で黒田教授は『支援を継続することが大切。そして台湾など海外との連携をしっかりすることも必要だ』と指摘しています」
有働キャスター
「日本における半導体の未来をどう見ますか?」
落合さん
「ここから何十年かかけてみんなで頑張るしかありません。投資は一度やめると追いつけません。半導体産業は投資なので、日本は一度撤退しているため取り返すのは簡単ではありませんが、工場を建てるのは今やってるのでいいでしょう」
「せっかく(工場が)熊本に来たのでTSMCともっと仲良くして、半導体そのものだけではなくて、コンピューターのそれ以上の上部工程は日本の産業はスカスカなので、そこを取り戻さないといけません」
「OSもGPU(グラフィックス演算処理装置)CPU(中央演算処理装置)も、他の国のものを使っています。スカスカなところをやっていくのはかなり有用で重要だと思います」
有働キャスター
「過去の失敗を教訓に日本は再び先端技術で稼ぐ力を得ることができるのか。オールジャパンで日本の技術が世界で再び輝くことを期待したいです」
(2月27日『news zero』より)