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【解説】“日の丸半導体”復活は? 日本が直面する課題

2024年2月22日 19:35
【解説】“日の丸半導体”復活は? 日本が直面する課題

株価が史上最高値を更新しましたが、その要因の1つが「半導体」株の上昇です。その半導体を製造する大手、台湾のTSMCが24日に熊本工場の開所式を行います。

半導体を巡り巨大企業の進出に沸く地元と、日本政府が直面する課題について、現地で取材してきた経済部の戸田舜介記者が解説します。

■台湾の巨大半導体企業TSMC 国が誘致した背景は?

藤井貴彦キャスター
「家電などに使われて、生活に欠かせない半導体ですが、台湾の巨大半導体企業を誘致した背景には、何があるんでしょうか?」

経済部・経産省担当 戸田舜介記者
「まず、一言で半導体といっても、多くの種類があります。その中でも、テレビなど家電に使われるものは、日本のメーカーでも製造しているんです。ただ、自動運転など、より高度な情報処理に必要な産業に使われる『先端半導体』と呼ばれる半導体を作れる日本のメーカーは、ないんです」


藤井キャスター
「車の自動運転などに使われる半導体メーカーは、日本にはないということなんですね」

経済部 戸田記者
「そこで日本のメーカーでも、こういった半導体を作れるようにするために、国が台湾から誘致したのが、先端半導体の製造で世界大手のTSMCというわけなんです」

■世界シェア約10% 「日の丸半導体」の凋落?

藤井キャスター
「半導体不足に苦しんでいた時期もありますけれど、なぜ、そんなに急いでいるんでしょうか」

経済部 戸田記者
「日本の半導体はもともと『日の丸半導体』などと呼ばれ、80年代には世界シェア50%を誇ったこともありました。しかし90年代以降、世界シェアは徐々に低下し、いまでは10%にしか過ぎません。このまま何もしなければ、将来的にほぼ0%になる可能性もあります」

藤井キャスター
「なぜこんなに凋落(ちょうらく)してしまったのでしょうか?」

経済部 戸田記者
「複数の政府関係者が、『20年来、国が補助金を出してこなかった』ということをあげています。この間、台湾や韓国などは大規模な補助金や減税を行い、国全体で半導体関連企業を後押ししてきたんです」

経済部 戸田記者
「だからこそ、日本政府はいま、TSMC熊本工場に加え、北海道に建設中の日本の大手企業8社が設立した半導体の新会社ラピダスの工場にも、多額の補助金を投じています。ある経産省幹部は『今年はさらなる支援を打ち出していく』と意気込んでいます」

■人材確保へ カギは“賃上げ”

藤井キャスター
「支援は必要だと思いますが、実際にそこで働く人の人材確保はどうするのでしょうか?」

経済部 戸田記者
「たとえば、TSMCの熊本工場の賃金をみてみると、大学新卒の技術者の初任給が28万円と、日本の全国平均より5万円以上高いのです。

ある政府関係者は『日本は賃金が安い。誰がこんな安い給料で日本に残りたいと思うか』と話し、“賃上げ”がカギになると強調しています。『日の丸半導体』復活のために、政府はもちろん、若い技術者が働きたいと思えるような環境を整えることが求められています」