税調大詰め…「賃上げ促進税制」議論 中小企業の本音と街の声
政府は、赤字の中小企業への税制優遇として、減税の権利を最大5年間繰り越せる方針を固めました。
◇◇◇
12日、街の人に「賃上げ」について聞いてみました。
IT企業(20代)
「5%くらい上がったと思います」
会社員(30代)
「少し上がったってかたちですね。そんなになにか(賃上げの)実感があったわけではない」
金融業(30代)
「全く変わっていないですね。物価はすごい上がったなって実感はしています」
そんな中、今年から賃上げしたのは、東京・目黒区にある精密機械部品の製造会社「富士精器株式会社」。金属を加工し、船舶や医療機器などの部品を作っている従業員18人の会社です。原材料やエネルギー価格の高騰で苦しい経営が続く中、賃上げを行っていると言います。
富士精器 藤野雅之社長
「(賃上げは)4%ぐらいなんですけど、どう魅力ある会社をつくっていくかっていうところが、経営者としては重要なところだと思っていまして」
◇◇◇
12日、政府与党は賃上げを促す「賃上げ促進税制」について議論しました。
企業が3%の賃上げにとどまる場合は、税がかからない控除の率を引き下げるなど厳格化。一方で、7%以上の大幅な賃上げをした大企業には、法人税を減らし優遇をする方針で、女性活躍や子育て支援に積極的な企業の場合には優遇をさらに上乗せ。税の控除を最大35%に引き上げます。
自民党 宮沢洋一税調会長
「大きな賃上げをした企業に余計メリットがいくような、そういう制度に仕組んだと思っております」
ただ、赤字の企業はそもそも法人税を納めていないため、減税という恩恵は受けられないことから、中小企業については将来の黒字を見込んで減税の権利を最大5年間繰り越せるようにします。
これについて、中小企業の経営者は――
富士精器 藤野雅之社長
「(控除は)もっとあった方がいいんですけど、ないよりはあった方が助かります」
ただ、繰り越しについては、藤野社長は「赤字企業だったら、賃上げしたら潰れてしまう。賃上げへの本気度が感じられない」と話します。
みずほ証券・小林俊介チーフエコノミストによると、「政策の方針は的を射ている」と評価しつつも、「減税で得られる一時的メリットを目当てに賃上げを加速させる企業がどれほど現れるか不確実が高い」と指摘しています。
また、小林チーフエコノミストは「所得税についても、賃上げが実質増税につながってしまう累進課税や転職によって年金や退職金が実質的に減ってしまう今の制度も併せて解決する必要がある」としています。
新たな税制改正で、大企業だけでなく、働き手の7割を占める中小企業でも賃上げが広がっていくのか正念場となります。