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円安・物価高が影響 “年間で1000万円変わる”…養殖魚のエサの原材料「魚粉」高騰

2022年10月25日 21:13
円安・物価高が影響 “年間で1000万円変わる”…養殖魚のエサの原材料「魚粉」高騰

円安や物価高の影響が、さまざまなところに広がっています。養殖場で使う魚のエサの原材料も高騰していて、生産者が頭を悩ませています。

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鹿児島県指宿市にある「旅館食堂 くり屋」を取材しました。ジュワジュワとあふれ出す脂。皿からあふれ出るほど超特大のカマ焼きに、サービス精神あふれる分厚い身。噛めば噛むほど、うま味があふれ出してくる刺し身も。この「カンパチ」を目当てに訪れる観光客も少なくないということです。

人気のワケは、すぐ近くにある養殖場から直接、仕入れているからです。

――めちゃくちゃ大きいですね

くり屋 篠原健太郎店長
「近くの養殖場から直接仕入れているので、鮮度抜群ですね」

いけすにはカンパチ以外にも、冬に最盛期を迎える「ブリ」が脂を蓄えています。「東京など全国から注文が入る」というカンパチとブリ。しかし――

山栄水産 山野秀人代表取締役
「人工飼料。8月・9月から一気に上がりました。年間にすると、1000万円から変わってきますね」

水産庁によると、養殖場のコストのうち、エサ代が6~7割を占めるということです。山栄水産では、ブリを太らせるためにエサを大量に使いますが、その仕入価格が大幅に上がっているというのです。

大きな原因となっているのが、エサの中で最も大きな割合を占めるという「魚粉」の高騰です。

山栄水産 山野秀人代表取締役
「(エサの)主な原料が“魚粉”です」

ペルー産のカタクチイワシを原料とした輸入物が中心ですが、財務省の貿易統計によると、今年に入ってその輸入価格が3割ほど上昇しました。

水産庁は「中国など世界的に需要が高まっている上、円安の影響もあり、魚粉の輸入価格が高騰しているのではないか」と分析しています。

特にブリは“出世魚”として、正月のおせち料理の需要が急増するだけに、山栄水産の山野代表取締役は「魚にその分(エサの高騰分)転嫁できればいいですが、難しいところですね」と話しました。

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魚粉高騰の影響は、“海なし県”埼玉県の悲願にも…。

新鮮さの証拠だという「しま模様」がはっきりとしているサバ。このサバが育っているのは、埼玉県神川町の温泉施設「おふろcafe白寿の湯」の隣にある養殖場です。

共に水を循環させるという共通点から、駐車場だった場所を利用して、昨年、温泉サバの養殖を開始しました。サバが大量死したこともありましたが、諦めずに再挑戦し、来年のゴールデンウイークごろに商品化するメドを立てています。

ところが、一難去って、また一難。

おふろcafe白寿の湯 鎌田奈津実副支配人
「エサ代の高騰は私たちにも起きておりまして、(仕入れ値が)上がってきていますね」

こちらの養殖場でも魚粉を使ったエサを使用しているため、仕入れ値の高騰に頭を悩ませているのです。

温泉客に釣りを楽しんでもらい、新鮮なまま食べてもらうことを目標にしてきましたが、鎌田副支配人は「コストが上がっていくのは大変ですし、(当初、予定していた価格より)値上げしなければいけないということになると思いますね」

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魚の養殖に欠かせない「魚粉」の価格高騰は今後、食卓への影響が広がることも懸念されます。