【解説】日銀、政策金利“据え置き” 急速な円高で恩恵は?
日本銀行は20日まで行った金融政策を決める会合で、政策金利を現在の0.25%程度に据え置くことを決めました。前回7月の会合で今年2度目の利上げに踏み切りましたが、今回は利上げが経済・物価に与える影響を引き続き見極める姿勢を示した形です。経済部・日銀担当キャップの渡邊翔記者が、為替に関する3つのギモンについて解説します。
●最近の円高、背景は?
●円安による物価高、一段落?
●為替は今後どうなる
鈴江奈々キャスター
「まずは今の円相場を確認します。20日午後5時38分現在、1ドル=143円58銭台で推移しています。7月には1ドル=160円だったので、20円ほど円高になり、歴史的円安も収まってきた感じがします。まずは1つ目のギモンです。この最近の円高傾向、背景には何があるのでしょうか」
経済部・日銀担当キャップ 渡邊翔記者
「直近の植田総裁の会見の前後だけで言うと、実は少しだけ円安に進んだのですが、全体で見ると、ここ7月から20円ほど円高に進んでいます。これは簡単に言うと、日本が金利を上げていく中で、アメリカが逆に金利を下げたからです。日銀は前回7月の会合で金利を上げました。アメリカでは、中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が日本時間の19日未明に、実に4年半ぶりに金利を0.5%引き下げました。日本とアメリカの金利の数値が近くなると、円高になりやすいんです」
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鈴江キャスター
「続いて2つ目のギモンです。円安で輸入品の値段が上がり、物価高が続いていましたが、円高が進んだことで落ち着いてくるのでしょうか」
渡邊記者
「為替の動きを見て、素早く対応するお店も出てきています。ある大手スーパーでは、19日から『円高還元セール』を始めました。円高セールは今月2回目で、輸入牛肉などの生鮮食品、それから輸入加工食品などを値下げしています」
お客さん (西友・吉祥寺店、19日)
「私キウイが好きなので、(ニュージーランド産が)かなり安かったのでまとめて買いました。今、野菜とか高いので、生鮮食品とかありがたい」
渡邊記者
「ただ、こういうお店はまだ一部なんです。たとえば川崎市内にあるアメリカ産牛肉を使う牛タン店は、9月から苦渋の決断で、今年2度目の値上げに踏み切りました」
杉作 杉山務代表
「(円安で収支が)マイナスの状況でも営業をしていた時があるので、それを取り戻すためには、多少なりとも(値上げした)現状の定価でやらなきゃなと」
渡邊記者
「こうした声は、実は都内の複数のスーパーでも聞かれました。これは『円安で仕入れ値が上がった分を、十分に値上げに今まで乗せられていないので、値下げという感じでは今はない』という声ですね」
渡邊記者
「食品の価格動向を調査する帝国データバンクの担当者によると、為替の影響が価格に反映されるには、通常、半年ほどのタイムラグがあるということで、『来月以降、円安理由の値上げがより表面化する可能性がある』と話していました。『円高の恩恵』の前に『残っている円安の影響』がまず先に来るということですね」
鈴江キャスター
「ずいぶん時間のズレがあるということで、それだけ歴史的円安の影響は大きいということですね」
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鈴江キャスター
「そして3つ目のギモンは、今後の為替です。この円安によって海外旅行のハードルも高いのですが、今後の為替はどうなりそうでしょうか」
渡邊記者
「これ実は、まだ何とも読めないんです。というのも、今後を左右するのは自民党総裁選とアメリカの大統領選の行方です。この2つの選挙で誰が勝つのかによって政権の経済政策が変わり、為替にも影響してきますので、この日米の『政治の季節』が終わらないと、先行きはなかなか読めないということかと思います」