「円安」加速で旅行に明暗 海外旅行者は“金欠” 外国人旅行者は“爆買い” 輸入肉ステーキも打撃
「円安」が加速しています。3日夜には、約1年ぶりに1ドル=150円を突破し、その後、政府・日銀による「為替介入」が行われたとの見方も出ています。この「円安」が、海外旅行や輸入品の価格にも影響を及ぼしています。
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脂(あぶら)がのった大きなステーキも、食べるハードルが上がってしまうかもしれません。
東京・世田谷区のステーキ専門店では、扱う牛肉の7割が輸入肉で、アメリカとオーストラリアから輸入しているといいます。物流コストなどが上がり、去年、値上げをしたといいますが、そこへさらに追い打ちをかけているのが「円安」です。
ステーキハウススリーロイン 中村太豊オーナーシェフ
「これは、アメリカ産のハラミ」
「為替(アメリカドル)も上がってくると、年末に向けて、不安な要素がいっぱい」
今後、クリスマス需要で牛肉の価格が上がるなか、「円安」の影響で、仕入れ価格がさらに上がる可能性があるというのです。
ステーキハウススリーロイン 中村太豊オーナーシェフ
「選択肢としては、値上げをするのか、商品自体のグラムとかを多少減らすとか」
「そんなにすぐには影響は出ないが、年末には必ず(影響が)出ると思う」
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3日午後11時ごろ、円相場は、約11か月ぶりに1ドル150円を突破。日米の金利の違いから、円を売り、ドルを買う人が増えたことで「円安」が加速しました。
その直後の午後11時10分ごろ、1ドル147円台前半まで急激に円が買われ、為替介入が行われたとの見方も出ています。
ところが、4日午前には、再び1ドル149円台に。市場関係者は今回の動きについて、「けん制にはなっているが、効果は限定的だった」と分析しています。
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とまらない「円安」の影響を受けていたのが、海外への旅行です。
4日、成田空港で話を聞いてみると、ハワイから帰ってきたという男性は、現地で物価の高さを実感したといいます。
ハワイから帰国した人
「ブレックファストとかでも、6000円とかいっちゃう」
「水が500円とか1.5倍以上。インフレで物価も高いので…今までで一番(円安を)感じました」
また、オーストリアのウィーンから帰国した人が見せてくれたのは、ウィーンで利用したスーパーのレシートでした。
オーストリアから帰国した人
「(合計で)13.44ユーロ」
「シーザーサラダも4.49ユーロなので、800円ぐらい」
水やサラダなど、5点購入するだけで2000円を超えたといい、「1ユーロ161円ぐらいで、円安が進んでいて金欠です」と話しました。
現在、原油高などの影響もあり、航空券の価格が高騰していて、フランス・パリへの航空券の価格は、コロナ前と比べて3倍以上になっています。
■パリ行き航空券/日本航空
2019年12月 11万1600円
2023年 8月 35万9200円
(※旅行サイトenaより)
1ドル142円台だった8月1日と比べて、さらに「円安」が進んだことから、都内の旅行会社では、先月以降、海外旅行の予約が減っているといいます。
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旅行や食卓にも影響を及ぼしている「円安」ですが、一方で、この「円安」を喜んでいるのが、海外から日本を訪れる人たちです。東京・渋谷には、ぱんぱんになった袋を持った人や、新しく買ってきたのでしょうか、タグがついたスーツケースをそのまま持ち歩いている外国人の姿がありました。
仕事でアメリカから来たという女性たちは、大量の土産を購入したといいます。
アメリカから来日した人
「私は酒とウイスキーと、東京と京都って書いてあるスターバックスのカップを買いました。スーツケースがぱんぱんになったから、もう1つ買わなくちゃいけないの」
アメリカから来日した人
「価格も日本の方が安い。今の為替レートのおかげです。ごめんなさいね!」
さらに、1ドル150円まで上がり、「円安」が加速していることを伝えると……。
アメリカから来日した人
「そうなんだ。じゃあ今日もっと買い物しなくちゃ」
また、「円安」が進んでいるのはドルだけではありません。インドネシアのルピアなど、アジアの通貨でも「円安」が進んでいるのです。
インドネシアから来日した人
「インドネシアのジャカルタから来ました」
「日本円はとても安いです。すべてがお手頃ですね」
12日間滞在予定で、旅行の予算は40万円だといい、「子どもがいるので、赤ちゃんグッズにたくさんお金を使います」と話しました。
とまらない「円安」――。当面、影響が続きそうです。