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北陸新幹線開業10年「観光の変化と課題」

2025年3月10日 19:13
北陸新幹線開業10年「観光の変化と課題」

今月14日で北陸新幹線の開業から10年です。今週、エブリィでは新幹線による暮らしや経済の変化をシリーズで検証し、大阪延伸についても考えます。初回のきょうは「観光の変化と課題」です。

駅員「出発進行」

「北陸新幹線の一番列車かがやき 500号が富山駅を出発します。きょう3月14日。富山の歴史に新たな1ページが刻まれました」

構想から50年。

かつて「裏日本」と呼ばれた北陸に光を当てたい。

県民は、この日を待ち望んでいました。

県内各地では多くの住民が集まり、開業を祝いました。

「しんかんせんおめでとう」

あれから10年。

新幹線は私たちの日常となりました。

暮らしや経済は、どのように変わったのか。

北陸新幹線の光と影。

その影響を検証します。

大きく伸びた観光客数

2015年の北陸新幹線の開業は、富山県への観光客数を押し上げました。

開業1年目の上越妙高と糸魚川駅間の新幹線の乗客数は925万8000人で、在来線時代と比べておよそ3倍に増加しました。

その後、800万人台を維持し、コロナ禍で大幅に落ち込んだものの、現在は回復しつつあります。

乗客数の増加は、県内各地の観光客増加につながりました。

観光庁によると、開業前の2014年の県内の観光客数は1200万人余りでしたが、開業した2015年以降は、1600万人前後で推移しました。

2020年からはコロナ禍で激減したものの、2022年以降は、徐々にコロナ前の水準に戻りつつあります。

観光客に”変化” 増える外国人観光客

県内最大の温泉地黒部市の宇奈月温泉です。

東京からの観光客「北陸新幹線で来ました」「めちゃくちゃ行きやすいというか東京からあまり距離を感じずに。すごく快適でしたね」

東京からの観光客「北陸新幹線で来ました」「めちゃ来やすいです本当に」「すごい近さを感じます、ありがたいです」

ホテル黒部の中島ルミ子女将「新幹線開業前よりも、すごくお客様の数が増えたなというのが、まずは実感です。おかげさまで、ありがたいことです」

宇奈月温泉の旅館やホテルに宿泊した人の数は、北陸新幹線開業前は年々減少していて2014年には23万人台にまで落ち込んでいました。

しかし、開業後は、コロナ禍まで毎年30万人前後で推移しました。

中島ルミ子女将「個人で新幹線で利用なさっていらっしゃる方々が増えたなと思っていて、その後、コロナになったあと、お客様の旅行の仕方も変化したのかなと思っていますね」

ホテル黒部では、大広間を小分けにしたりロールカーテンで仕切ったりして団体客にも個人客にも対応できるよう宴会場をリニューアルしました。

さらに、宇奈月温泉では外国人観光客の宿泊数が大きく増加しました。

開業前の2014年は9400人余りでしたが、開業した年には、2万3000人とおよそ2.5倍に増え、コロナ禍で一時的に落ち込んだものの去年には最も多い水準に回復しています。

中島女将「毎日のように海外からのお客様がいらっしゃるのかなというのがありまして、日本語も英語も含めて、5か国後喋れるスタッフもいてくれたりするので、どんな方がいらっしゃっても、大丈夫じゃないかというように、体制は整えています」

変化への対応に苦心

富山地方鉄道の宇奈月温泉駅近くの土産物店ではこの顕著な変化に驚いています。

中島観光百貨店 中島昭彦さん「本当にインバウンドのお客様増えまして、新幹線がなかったら、日本のインバウンドのお客様の増加に、宇奈月って乗れてなかったんじゃないかなと思うくらい」

ただ、外国人観光客は日本人のように土産物を購入する傾向は低いといいます。

「インバウンドのお客様が増えてはいるんですけど、なかなか、お金を落としていただけないという状況にありまして、お土産屋としてはまだまだ勉強が必要だという状態ですね」

一方で、学生グループやカップルなどの増加は良い傾向だと感じています。

「うれしいのは、若いお客さんが増えたということで、活気が出てくるといいますか、我々も、以前は落ち着いた感じのお土産の種類を揃えていたんですけど、最近は若い人たちにうけるように、いろんなラインナップを考えていまして」

通過型から滞在型の観光地へ

日本政策投資銀行富山事務所の田中悟史所長は、北陸新幹線開業による大きな経済効果はあるものの、富山県は通過型の観光地になっている傾向があると指摘します。

富山県と石川県の観光客数を比較すると2015年以降石川県は毎年2500万人前後で推移しているのに対し、富山県は1600万人前後の推移にとどまっています。

新幹線開業後、富山駅周辺にはホテルや商業施設が次々と整備され、観光客の受け入れ態勢はある程度改善しました。

しかし、金沢市と比べると弱さが否めず、滞在型の観光地にはなりきれていないのが現状です。

東京からの観光客「長野と金沢は北陸新幹線で行ったことはあったんですけど」「長野はスキーに行ったりとか、金沢は兼六園とか、分かりやすい観光名所があって、富山って、あれどれかなみたいな」

中島観光百貨店 中島昭彦さん「全然だめなわけじゃなくて、まだまだ発信できてないんですよね。黒部宇奈月温泉駅、富山駅とかで、たくさんのお客様が降りれるような、降りたくなるような、そういった地域づくりなり、消費づくりをしっかりやっていきたいなと思っています」

中島女将「今どきはスマホでいろんないいところをたくさんご存じな方が多いでしょうから、PRをもっとしていかなければ駄目だなと思っています。せっかく来て下さった方が、宇奈月の温泉に入ってもらわないまま、ぴゅーって帰っちゃう、せっかくなので、温泉に入ってもらったり泊っていただかなきゃいけない、そういう街づくりをこれからしっかり、取り組んでいかないと」

北陸新幹線の効果を最大限に生かすために。11年目の取り組みが始まります。

最終更新日:2025年3月10日 19:13
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