【ニュースその後】導入から半年「ベトナム人家族向け保険」期待の反面、利用ためらう企業も…見えてきた課題とは?山梨
2024年に伝えたトピックスのその後を追うシリーズです。山梨県が6月から始めたべトナム人労働者の家族を対象にした医療傷害保険制度の“その後”。見えてきた課題とは?
6月、駐日ベトナム大使館で会見した長崎知事。
長崎知事
「より多くの人に制度を奨励し、加入を促進したい」
集まったベトナムの主要メディアにアピールしたのは、県が構築した医療傷害保険制度でした。
甲府市でビルのメンテナンスを手掛ける「甲府ビルサービス」に勤めるホ・アイン・ドゥックさん(26)です。会社が制度の利用を決めたため、12月から保険に加入しました。
この制度では県内で働くベトナム人が保険に加入すると、母国で暮らす家族が給付対象となります。
その際、勤め先の企業が保険料の4分の3以上を負担すれば、その半額を県が補助する仕組みです。県内で外国人労働者の3割を占めるベトナム人が安心して暮らせる環境づくりが狙いです。
ドゥックさんが来日して4年。母国で暮らす両親のことは常に気がかりだと言います。
ベトナム出身のホ・アイン・ドゥックさん
「保険がない時は両親が病院に行くと、お金がいっぱいかかった。その時は大変だった。ベトナムにいる両親が健康を守れると、安心して仕事に集中できる」
ドゥックさんが働く業界でも人手不足は深刻で、 若い労働力に外国人は欠かせません。会社側も県の制度に大きな期待を口にしました。
甲府ビルサービス 坂本哲司 会長
「これからもっと外国人と共生したビジネスモデルをつくっていかないと、日本人だけではなかなか難しい部分が出てくる。採用するにあたってもベトナムの家族も(対象に)入るんだよということは、大変なメリットでありアドバンテージだと思う」
一方、この半年で県には30を超える企業・団体から制度への問い合わせがありましたが、利用を決めたのはわずかに1社です。
ベトナム以外の外国人も雇う企業からは「使いにくい」との声が聞かれたほか、ネット上で誤った認識による批判が出たことで、利用をためらう企業もあったといいます。
県 男女共同参画・外国人活躍推進課 阪本正範 課長補佐
「この制度に関係することで会社のイメージダウンがあったり、SNSの騒ぎに巻き込まれたくないという声もいただいた」
県 男女共同参画・外国人活躍推進課 阪本正範 課長補佐
「多様な人材が集うことは、本県が持続的に成長していくための礎になる。今後も外国人材の円滑な受け入れに関する事業を、積極的に展開していくことが必要」
ドゥックさんもこの制度はベトナム人が山梨を選ぶ理由になると話します。
ベトナム出身のホ・アイン・ドゥックさん
「日本の各県にいる友だちに(制度を)教えると、『山梨県が一番いい県』だと思って『今度、勉強が終わったら、山梨県に移動する』と言われた」
県内での労働力確保を力強く後押しできる制度となれるのか、まずは企業側への普及がカギとなりそうです。