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【解説】アメリカ大統領選挙 選挙より裁判?トランプ氏めぐり“異例”ずくめ

2024年2月2日 17:06
【解説】アメリカ大統領選挙 選挙より裁判?トランプ氏めぐり“異例”ずくめ

いよいよ始まったアメリカ大統領選挙の候補者選び。共和党ではトランプ氏が根強い人気を見せつける。ただトランプ氏を巡っては裁判を抱える他、立候補資格なしと判断する州も。異例ずくめの選挙戦はどこに向かうのか。ワシントン支局・増田理紗記者が解説する。

■4年に1度! アメリカ大統領選挙はどう進む?

大統領選挙は大きく2つの段階に分けられる。前半戦は、民主党・共和党それぞれの「候補者選び」。1月15日のアイオワ州から始まり、およそ半年間、各州で党員集会や予備選が行われ候補者選びが進む。3月5日には、多くの州が一斉に予備選挙や党員集会を開く「スーパーチューズデー」があり、通常、ここが候補者選びのヤマ場となり、顔ぶれは絞られていく。その後7月、8月に民主党・共和党がそれぞれ党大会を開き、大統領選の候補者を決定する。

ここからが後半戦。民主党・共和党、両党の候補者が11月5日の本選挙に向け、討論会や遊説などで支持を訴えていく。

■初戦、第2戦 トランプ氏が見せつけた「盤石な強さ」

共和党の候補者選びの初戦・アイオワ州と第2戦・ニューハンプシャー州を現地で取材した。そこで見せつけられたのはトランプ前大統領の盤石な強さだった。初戦のアイオワ州は、猛烈な寒波に襲われ投票率の低下など選挙戦への影響が懸念された。

投票日の前日には気温が氷点下27度まで下がり、まつ毛が凍るほどだった。ただ、トランプ氏の集会を取材すると寒さをものともせずトランプ氏の支持者らが開場前から屋外で長い列を作っていた。

マイクを向けると「みんなが彼を尊敬している」など、口々にトランプ氏への熱い思いを語っていた。

■初戦 アイオワ州党員集会

アイオワ州でトランプ氏は、得票率51%で圧勝。この結果を受け、2番手につけていたフロリダ州のデサンティス知事らが選挙戦から撤退した。

■第二戦 ニューハンプシャー州予備選挙

その結果、第2戦のニューハンプシャー州は、トランプ氏と元国連大使のヘイリー氏との一騎打ちの構図となった。

ニューハンプシャー州は無党派が多いため、ヘイリー氏はなんとかここで踏みとどまろうと事前から力を注いでいた。しかし、トランプ氏が得票率54.4%と再び強さを見せつける結果となった。

序盤から圧倒的な強さを見せ優位に立ったトランプ氏。ヘイリー氏はトランプ氏に不満を抱く共和党の穏健派の票を取り込みたいが、厳しい戦いを迫られている。

■民主党候補 現職に対抗馬なし

一方、与党・民主党は現職のバイデン大統領が再選を目指し立候補を表明している。「史上最高齢」で健康などを不安視する声もあるが、有力な対抗馬はおらず、事実上、バイデン氏で決まりという状況だ。

■11月本選挙 “高齢者対決”か

11月の本選挙ではトランプ氏(77)とバイデン氏(81)が再び対決する可能性が高まっている。4年前と同じ“高齢者対決”には不満の声もあり、閉塞感すら漂っている。

■トランプ氏逮捕!? “異例”の大統領選挙

ただ今回の選挙戦はトランプ氏をめぐり“異例”の展開となっている。トランプ氏は現在4つの事件で起訴され、91の罪に問われているのだ。

1つ目が、2016年の大統領選挙直前に過去の不倫関係を主張するポルノ女優に口止め料を支払ったとされる事件。
2つ目が、大統領を退任する際、違法に機密文書持ち出し、自宅に保管していたとされる事件。
3つ目が、2020年の大統領選挙の結果を不正に覆そうとし、議会の手続きを妨害したとされる事件。
そして同じく2020年の大統領選挙の際、ジョージア州の選挙結果を覆そうとした事件でそれぞれ起訴されている。

トランプ氏はこれまで、「バイデン政権の政治的迫害だ」などと自身が“被害者”だと強調することで、支持層の共感を集め高い支持率を維持してきた。
こうした主張が受け入れられる背景には、このうち2つの事件は起訴した検察官がそれぞれ民主党員だったことなどがあると専門家は指摘する。

■選挙戦と裁判が並行する異例

これらの事件をめぐる裁判は、選挙戦と並行して行われる予定だ。トランプ氏は盤石な支持層に支えられているものの、ニューハンプシャー州の予備選挙では、無党派層の6割がヘイリー氏を支持した。11月の本選挙でトランプ氏が勝つためには無党派層の支持が必要だが、トランプ氏が裁判で有罪になった場合には、さらに取り込みが難しくなると指摘され、波乱も予想される。

■「有罪」でも立候補できる!?

ここで浮かぶのが、仮にトランプ氏が「有罪」になった場合、大統領選挙に立候補できるのか、という問いだ。アメリカメディアでは、仮に有罪判決を受けても立候補は可能とする見方が大勢だ。

実は大統領の要件について、合衆国憲法には①アメリカ生まれのアメリカ人、②35歳以上、③アメリカに14年以上住んでいること、としか定められていない。アメリカメディアによると、過去には刑務所に収監されたまま立候補した人もいたという。

よって仮に有罪になったとしても立候補できるとみられるが、今、トランプ氏をめぐり新たな問題が浮上している。そもそもトランプ氏に「立候補資格がない」と判断した州が出始めているのだ。

■“反乱”に関与!? トランプ氏に「立候補資格なし」の判断

2021年にトランプ氏の支持者らが大統領選挙の敗北を認めず、連邦議会議事堂に乱入した事件が起きた。この事件にトランプ氏が関与したと判断したコロラド州の最高裁は、コロラド州での予備選挙へのトランプ氏の参加を認めない判決を下した。またメーン州でも州務長官が同様の判断を示した。

アメリカの憲法には、国家への「反乱」などに関わった場合、その者が公職に就くことを禁じる規定がある。コロラド州もメーン州も連邦議会への乱入と占拠は“反乱”だと認定し、この“反乱”に関与したのだから立候補する資格はないと判断したのだ。

元々この規定は19世紀の南北戦争後に定められたもので、アメリカメディアによると敗れた南軍側の人間が選挙を通じて再び権力を握るのを防ぐ目的だったという。

■トランプ氏の“立候補資格” めぐり判断分かれる

トランプ氏の立候補資格をめぐっては、「立候補を認めない」とする州がある一方で、ミネソタ州などでは「立候補を認める」判断をしていて、各地の司法の判断が割れている。

「予備選参加を認めない」としたコロラド州の判決についてはトランプ氏が上訴していて、2月8日に連邦最高裁判所で口頭弁論が開かれる予定だ。大統領選への立候補資格が認められるのかー連邦最高裁の判断が、今後の選挙戦に大きな影響を与えることになる。

■続く選挙戦 ヘイリー氏は正念場

こうした中でも共和党の候補者選びの戦いは続く。注目は2月24日にはヘイリー氏の地元、サウスカロライナ州で行われる予備選だ。ヘイリー氏にとっては知事を務めたお膝元。ここで結果を出せなければ、撤退圧力が強まる可能性がありまさに正念場となるだろう。

(ワシントン支局・増田理紗)